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春の展覧会

  • 2024年5月13日(月)

    『鍋島と金襴手』

  • 戸栗美術館で開催中の「鍋島と金襴手―繰り返しの美―展」を紹介します。
    「鍋島焼」と、金色の装飾が特徴の「金襴手(きんらんで)様式の伊万里焼」に共通するデザインの「繰り返し」に注目した展覧会です。たとえば、鍋島焼の「色絵 更紗文(さらさもん) 皿」は、ひとつの器の中に、同じ文様が繰り返し描かれる連続文様が特徴です。七宝と蕨手(わらびで)を組み合わせた格子の中に菊の花が描かれています。花や幾何学文様などを器全体に描いた「更紗文」は、17世紀後半の鍋島焼の作品に多く見られます。
    また、赤地に描かれた金色の「唐草文」は金襴手様式の伊万里焼の定番文様で、「色絵 雪輪亀甲文(ゆきわきっこうもん) 桃形皿」や「色絵 山水文(さんすいもん) 猪口(ちょく)」など、様々な器で繰り返し使われています。
    「寿」の文字など縁起が良い同じモチーフが描かれた2つの焼物のデザインを見比べられる展示もあります。鍋島焼は、徳川将軍家への献上品や大名家などへの贈答品として使われていたため、格調高いデザイン。一方、海外でも人気を博した金襴手様式の伊万里焼は、豪華絢爛なデザインになっています。

  • 2024年5月14日(火)

    『記憶:リメンブランス』

  • 東京都写真美術館で開催中の「記憶:リメンブランス─現代写真・映像の表現から」を紹介します。「記憶」がテーマの展覧会で、作家たちが、自身や他者などの記憶をどのようなアプローチで表現するのかに注目しています。
    まず紹介するのは、篠山紀信さんが1970年代に日本各地の「家」を撮影した写真。通常の“建築写真”とは全く異なり、そこに生きた人たちの“におい”のようなものを強く喚起させる作品です。
    フィンランドの写真家と日本の陶芸作家ユニットによる展示では、フィンランドの都市・トゥルクに住む高齢者たちを取材し、その人生を写真と陶器で表現しています。自宅でアルバムを見ている女性を撮影した写真には、「カメラ・オブスクラ」という技法が使われています。上下左右が反転した外の光景を室内に映し出す技法です。女性のいる部屋の壁に、家の外の風景が映し出されています。被写体がいつも眺めている光景を写真の中に描くことで、心の中の風景を表現しようとする試みです。陶器には、女性が見ているアルバムの中の写真を「転写」という方法で投影し焼きこんでいます。

  • 2024年5月15日(水)

    『テルマエ展』

  • パナソニック汐留美術館で開催中の「テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本」を紹介します。
    古代ローマの公共浴場「テルマエ」は、市民が格安か無料で利用でき、仕事を終えた後に多くの時間を過ごしたとされています。身分に関係なく誰もが利用できる場として古代ローマの皇帝などが造った娯楽施設の一つで、浴場の他に運動場などもありました。当時使用されていた入浴道具や、マッサージなどで使われたオイルを入れる瓶や壺も展示されています。
    テルマエは、民衆がくつろぎながら美術品を鑑賞できる場所でもあったため、浴場の床には、水に強いモザイクタイルが使用されていました。その“モザイクタイルの床”を再現した展示室では、約2000年前にモザイクタイルで描かれた絵も見ることができます。
    古代ローマだけではなく、日本の入浴文化の展示もあり、江戸時代後期の湯屋(ゆや)を再現した模型を見ることができます。当時、湯船の手前には、熱気や湯気が外に逃げないように背の低い出入口が設けられており、それを「石榴口(ざくろぐち)」といいました。2階は男湯からのみ上がれる構造で、男性専用の休憩所として利用されていました。

  • 2024年5月16日(木)

    『“オモシロイフク”大図鑑』

  • 文化学園服飾博物館で開催中の「“オモシロイフク”大図鑑」を紹介します。約30の国と地域の衣服などを、「まるい」「ながい」「たかい」「おおきい」「おもい」の5つの特徴に分けて展示しています。
    「まるい」では、広げるときれいな丸になるスカート、「ながい」では、人の背丈より長い衣服、「たかい」では、高さのある華やかな帽子などを見ることができます。
    「おおきい」衣服として展示されているのは、パキスタン北部の民族衣装であるパンツ。大きいものはウエストが7m、小さいものでも3.5mあります。パンツは裾を絞ってあり、大きなウエストをきゅっと絞めることでパンツの中に多くの空気を閉じ込めることができます。パキスタン北部は日中と夜間の寒暖差が大きく、空気を多く含んだこのパンツのおかげで暖かく過ごすことができるそうです。
    「おもい」衣服にはインドの花嫁衣装があります。キュロットスカートは3.4kg、ヴェールは2.7 kgの重量があります。金属を細く加工した金属糸などを使い、衣服の全面に細かく立体的に刺繍しているため、豪華ですが非常に重くなっています。

  • 2024年5月17日(金)

    『茶の湯の美学』

  • 三井記念美術館で開催中の「茶の湯の美学 ―利休・織部・遠州の茶道具―」を紹介します。千利休、古田織部(ふるた おりべ)、小堀遠州(こぼり えんしゅう)の美意識を茶道具から感じる展覧会で、桃山時代を代表する国宝「志野茶碗 銘 卯花墻(うのはながき)」も見ることができます。
    千利休の美意識は、質素や静寂を重んじる「わび・さびの美」。利休は、「黒楽茶碗 銘 俊寛」のような黒い茶碗を愛好しました。利休は“黒は古きこころ”という有名な言葉を残しています。
    利休が亡くなった後に活躍したのが古田織部です。織部の美意識は、既存の価値観にとらわれない「破格の美」と称されています。そんな織部が持っていたという「大井戸茶碗 銘 須弥(別銘 十文字)」。元はもっと大きく、形がゆがんでいた茶碗を、織部が十文字に割って小さく加工しつなぎ合わせたと言われています。このような織部の美学は流行し、自由な形の茶道具が作られていきました。
    小堀遠州は、二条城や大坂城の建築にも携わった茶人でした。そんな遠州の美意識は「綺麗さび」と称されています。遠州が所持していたとされる「高取面取茶碗」の底の縁には「面取り」が施されており、建築のセンスが表れていると言われています。

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