第128回『鱸(すずき)』
5月20日放送
★夏の白身魚の王様
★夏の白身魚の王様
「冬のひらめ、春のまだい、夏のすずき」白身の魚が少なくなる日本の夏、旬を迎えるすずきは昔から珍重されてきました。すずきという名も、その身が「すすきたるような」つまりすすぎ洗いをしたように白く清々と美しいからいう説があります。成長過程によって呼び名が変わる「出世魚」で、こっぱ(15㎝以下)、せいご(1年魚)、ふっこ(2年魚以上)、すずき(3年魚60㎝以上)。釣人にも人気が高く、強いひきに加え、水面近くで首を激しく振り、カミソリのように鋭いエラで糸を切る(エラあらい)ことから手ごわく、釣り上げたときの喜びも大きいそうです。新鮮なすずきは、まず洗いでぷりぷりした食感と上品な甘みを楽しみたいところ。淡白な味わいは刺身、塩焼き、椀物にもよく合い、蒸し焼きではとくに宍道湖の「奉書焼き」が有名です。
★殿様の「奉書焼き」
★殿様の「奉書焼き」
島根県松江市のかたわらに広がる「宍道湖(しんじこ)」は、川の水と海の水が入り混じる汽水湖で塩分濃度は海水の10分の1程。これが海と川を行き来するすずきにとっては絶好の棲家、江戸時代から松江名物とされてきました。上質な和紙「奉書紙(ほうしょがみ)」で幾重にも包んで蒸し焼きにする「奉書焼き」は、すずきをこよなく愛したお殿様「不昧公(ふまいこう)」こと松平治郷(はるさと)に献上するため、漁師たちが知恵を絞った誠に瀟洒な料理です。「包んで蒸し焼きにする」、実はこれがすずきの旨みをうまく引き出す料理法で、フレンチでは芸術的とも言える「パイ包み焼き」が、イタリアンでは家庭的な「カルトッチョ(包み焼き)」が代表格。ちなみにフランスの大西洋のすずきは大きく、ワイルドさが魅力。イタリア地中海産は小さいけど味が濃い。それぞれの国の料理人の主張です。
★極上すずき「常磐物」
★極上すずき「常磐物」
すずきは全国各地の海で獲れますが、なかでも評価が高いのが「常磐物(じょうばんもの)」。場所は福島県いわき市の沖合い。このあたりは潮の流れが速く水がきれいなため、身が締まり味に濁りがないすずきが獲れるのです。刺し網漁師、遠藤健一さん父子の漁に同行し、獲れたてのすずきを浜料理で頂きます。「洗い」はもちろん、「あら汁」には実に深い味わいが…
★和の真骨頂
★和の真骨頂
常磐物のすずきに惚れ込んでいる料理人鈴木好次さんによると「上等な刺身だけでなく、“骨”も味わってください」中骨を軽くあぶって昆布だしに…すると料理人も思わず絶句の極上出汁が!これで作る炊き込みご飯や潮汁(うしおじる)はもう最高!!さらに鈴木さんの手は止まらない。現れたのは“和と洋の結合”からうまれた一皿、そこには夏の輝きが見事に封じ込められていました。
取材先
制作担当
【ディレクター】林 英幸(ViViA)
【プロデューサー】加納 満(ViViA)
【プロデューサー】高階 秀之(テレビ朝日)