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SmaSTATION!!特別企画 今だから言える!「異色の時代劇 必殺シリーズ人気の秘密」
1972年9月、「必殺仕掛人」を皮切りに歴史の幕を開けたその人気シリーズは、殺し屋を主人公にしたことで大きな反響を得、以降「仕置人」「仕留人」「仕業人」「仕事人」と呼び名を変え、仲間を変えながら20年にも渡り制作されてきました。続編を待ち望むファンからの熱い声に応える形で、昨年、東山紀之さん主演で15年ぶりに一夜限りの復活を遂げると、20.9%と高視聴率をマークしました。36年前に誕生しながら、未だ色あせない不朽の名作! その人気の秘密はどこにあるのでしょうか?

必殺シリーズ人気の秘密 其の壱:サラリーマンの代表・中村主水

必殺シリーズの顔と言えば、なんといっても藤田まことさん演じる中村主水(なかむら・もんど)。全768話のうち509話に登場し、斬った悪人の数は766人。しかし、そんな中村主水が必殺に登場したのは、実はシリーズ2作目から。1973年に放送された「必殺仕置人」が最初なのです。当初、物語の主軸を担っていたのは主水ではなく、山崎努さん演じる“念仏の鉄”でした。ところが、放送を重ねるうちに、中村主水の人気は急上昇。この「必殺仕置人」の後半以降、シリーズ全般を通して物語の中心的存在になっていくのです。奉行所の同心を務める主水は、昼間はしゃにむに働いて、家に帰れば嫁と姑に頭の上がらない婿養子と、そのキャラクターは70年代の平均的なサラリーマンを意識して作られたものでした。そんな庶民的な主水がいたからこそ、「必殺シリーズ」は長寿番組として、長年、多くのファンからの支持を得ることができたのだといいます。

「今と違って、当時はサラリーマンの残酷時代ですからね。『サラリーマンって情けないもんや』と。それでね、ふと時代劇にサラリーマンを出してみようかなと思って作ったんですよ」
(山内久司元チーフ・プロデューサー)


そして、そのサラリーマンに抜擢されたのが時代劇コメディー「てなもんや三度笠」で人気を博していた藤田さんだったのです。そんな藤田さん演じる「気の弱いダメ男」が時折見せる別の顔…そこに多くのファンは熱狂しました。


必殺シリーズ人気の秘密 其の二:必殺は時代劇にあらず

中村主水というサラリーマン的なキャラクターを登場させることで、老若男女問わず多くの視聴者からの注目を集めた「必殺シリーズ」。その異色の時代劇は、さらに視聴者の間口を広げるためにある大胆な試みにチャレンジしました。それが、「時代劇からの脱却」です。

「時代劇と考えなくていい、みたいなそういうひとつの格言的な要素みたいな物は教えられましたね。時事ネタも扱う斬新な時代劇という、見る人の目を奪う仕掛けみたいなものが施されたところが、ほかとは一線画した部分だったとは思うんですよね」
(「必殺シリーズ」に出演の京本政樹さん)

1984年放送の「必殺仕事人W」では、当時CMで使用され、人気を博したエリマキトカゲまでが登場。ちなみに、その回のサブタイトルは、「加代、エリマキトカゲを目撃する」というものでした。このように80年代以降に放送されたシリーズでは、時代劇であるにもかかわらず、サブタイトルには時代劇にはそぐわない不思議な言葉が使われていました。

「主水、ワープロをうつ」
未来を想像する主水が登場。着物のままオフィスでワープロを打っていました。

「夢次、江戸のテレクラでバイトする」
街のはずれのこの店の名前は「てるくら屋」。店で働く中村橋之助さんの仕事は、今で言う「ティッシュ配り」でした。

「もしもお江戸にピラミッドがあったら」
タイトルどおり、江戸の街に…突如ピラミッドが出現。その奇妙な建物を町人は魔の山と呼び、近づくのを恐れました。実は、その正体は、偽小判作りの工場でした。

「主水、りつ、ラブホテルに行く」
主水とその妻・りつが向かった先は、出会い茶屋と呼ばれるいわゆるラブホテル。なかはあたり一面ピンクの世界で、壁には何やら怪しい画まで…。

「主水、未知と遭遇する」
なんと江戸の町にUFOが飛来・・・実はこのUFO、夜逃げをたくらんでいた一族が夜、人が出歩かないようにするために仕組んだものでした。


必殺シリーズ人気の秘密 其の三:華麗なる殺しのテクニック

高らかに響き渡るトランペットの音色とともに繰り広げられる仕事人たちによる“必殺”。その華麗な“必殺”には、次のようなものがあります。

「刺 殺」
針やかんざしなどを使用して、相手の急所を一突きでしとめるこの必殺法。シリーズ第1弾「必殺仕掛人」で主演の緒方拳さん演じる藤枝梅安(ばいあん)が使用していたのもこの技。「必殺仕置屋稼業」では、沖雅也さん演じる市松が竹串を使用。「必殺商売人」では、梅宮辰夫さん演じる新次が髪結い用の櫛を、相手の首筋に一突き! そしてだめ押しは、「必殺仕事人V」で村上弘明さん演じる政が使用したのは花の枝でした。この「刺殺」で最も人気があったのが「必殺仕事人」から登場し、シリーズの中心人物のひとりでもある三田村邦彦さん演じる秀が武器であるカンザシを巧みに操る必殺法。その華麗な手さばきが話題となり、多くのファンを魅了しました。

「吊るし技」
「必殺スペシャル・恐怖の大仕事」で、フランキー堺さん演じる与市が使った吊るし技。ヒモの先に輪をつくり悪人の首にかけるという必殺法です。実は、この悪人役を演じていたのが中条きよしさん。後に「三味線屋の勇次」として「秀」同様にシリーズの中心的な人物となりました。そんな彼の必殺もこの吊るし技。武器の「三味線の糸」を相手の首に投げつけて吊り殺すというものでした。「必殺仕事人V」では、京本政樹さん演じる竜も武器をヒモに変え、この吊し技を使っています。

「力 技」
相手の背骨を素手でへし折るという究極の力技。山崎努さん演じる鉄による「必殺骨外し」です。その豪快な必殺は、レントゲン写真を使うことでさらに過激さを増し、武器を持たずして相手を倒す恐怖感を見事に表出しました。さらに「暗闇仕留人」では、近藤洋介さん演じる大吉により、「必殺心臓つかみ」となり、レントゲンに加え心電図まで使用されました。さらに、1977年の「新必殺仕置人」で鉄が再登場したときには、レントゲン映像の画質もアップし、視聴者にインパクトを与えた必殺となりました。まさに、それまでの時代劇の常識を覆す、多彩で華麗な必殺技の数々。それはシリーズを重ねるごとに次第にエスカレートしていき、いつしか、あり得ないような意外な技まで飛び出すことに。次に、その奇想天外な必殺技をいくつかご紹介しましょう。

「飛び道具」
「必殺仕事人V 旋風編」に登場したひかる一平さん演じる西が使用したその武器は、なんとバズーカ砲でした。

「プロレス」
「必殺仕切人」に登場したのは、芦屋雁之助さん演じる勘平のプロレス技。自家製のプロレスリングで相手を振り回し、目が回った相手は、灯篭で頭をうって死亡するというもの。さらに別の回では、本格的なリングを作り、レスラー顔負けの必殺技を披露。なんと、相手をロープに投げていました。

「さば折り」
「必殺仕事人」に登場した衝撃の殺し技がこれ。伊吹五郎さん演じるおでん屋の左門は、まず相手の腰骨を外し、そして、真っ二つに!

「仕掛け花火」
「必殺からくり人」では、こんなとんでもないびっくり技まで登場しました。森田健作さん演じるのは、花火師・天平は、相手を羽交い絞めにしたかと思いきや、なんと花火を飲み込ませて爆発させたのです。

「指ひねり」
「必殺渡し人」で登場したこの必殺。渡辺篤史さん演じる大吉は、まず相手を倒し、そして、指で腸をひねりとどめをさすという荒技を使うのです。

「南京玉すだれ」
「必殺仕事人V・風雲龍虎編」に登場したこちらの必殺技。このシリーズでは、あの三浦友和さんが初のレギュラーとして参入。かげろうの影太郎という大道芸人役を演じ、伸ばした「南京玉すだれ」の先で相手の額を突き刺すという技を披露しました。


必殺シリーズ人気の秘密 其の四:意外な殺し屋

ドラマシリーズだけでも全768話。約20年にも渡って放送されてきた必殺シリーズ。その長い歴史の中には、緒方拳さんをはじめ、津川雅彦さん、山田五十鈴さん、中村敦夫さんといったそうそうたる顔ぶれが並び、彼らの迫真の演技がシリーズの人気を支えてきました。また、一時視聴率が低迷した時代には中条きよしさんをはじめ、当時はまだ無名に近かった三田村邦彦さん、京本政樹さん、村上弘明さんなどの「イケメン俳優」を積極的に起用することで女性ファンを広く獲得、人気回復の起爆剤としました。

「撮影所に行くと中高生がうわっといて、違う意味での盛り上がりが出てきましたね。夜10時からの作品であるこの「必殺仕事人」を小中高学生が見るようになったという」
(京本さん)


多くの名優陣の活躍によって不動の人気を誇ってきた必殺シリーズ。なかには意外な人物が闇の仕事人としてレギュラー出演しています。1978年に放送された中村敦夫さん主演によるシリーズ第14弾「翔べ!必殺うらごろし」。脇を固める仕事人が記憶を失くした「女殺し屋」を演じたのは、市原悦子さんでした。さらに、若き日の和田アキ子さんも、若という「女殺し屋」の役で主演。いかにも彼女らしい必殺技を披露しました。

さらにお笑い界からも意外な人が参戦。1985年放送の「必殺仕事人X激闘編」に登場したのが、笑福亭鶴瓶さんです。鶴瓶さん演じる参の武器は「ビードロ」という先がガラスで出来たこの道具。その殺し方は、相手の眉間を一突きというものでした。スポーツ界からは往年の名選手が出演を果たしています。1977年の「新必殺仕置人」には“ミスタータイガース”藤村富美男さんが登場しました。その役名も「虎」。そしてもちろん武器は「バット」でした。ほか、異色ゲストが多数登場するのも必殺シリーズの特徴。映画『必殺!』では、トリカブトの毒を用いる凄腕の仕事人“霞の半吉”の役として赤塚不二夫さんが出演。ちなみにこの映画には、あのたこ八郎さんも出演していました。そんな異色のゲストのなかでも、特に異彩を放つのが、ゆでたまごのおふたりでしょう。そう、彼らは、あの人気漫画『キン肉マン』の作者です。出演作は1985年に放送された「必殺仕事人X」の第9話、「主水、キン肉オトコに会う」の回。しかも彼らは、吉本新喜劇の高石太さんとトリオを組み、仕事人に憧れながら無残な最期を迎えるという、単なる賑やかしにとどまらない、この回の中心人物を演じています。1990年に放送された「大暴れ仕事人! 横浜異人屋敷の決闘」には、舛添要一厚生労働大臣が出演しました。

「みなさん面白がっていましたね。どうしても『朝まで生テレビ』のパロディーっていうか、その関連で見るから。今時、政治家連中が例えば『TVタックル』なんかでもの凄い下手くそな演技をやりますけど、ちゃんと鑑賞に堪えるレベルでやったのは、初めてですね」
(舛添氏)

まさに、異色の時代劇の名に相応しく、名優から文化人まで、常識にとらわれることなく実に大胆な起用を行っているのも必殺シリーズの人気の秘密なのです。


必殺シリーズ人気の秘密 其の五:必殺を作った一流の仕事人たち

シリーズ第1弾、「必殺仕掛人」の第1話を演出し、「必殺」の雛型を形づくったのは、実は巨匠・深作欣二さんでした。必殺シリーズにおいて、主水たちが夜の仕事を決行するとき、その映像は光と影を巧みに利用した世界観で描かれています。この、ハードボイルドなコントラストを作り上げたのが深作さんだったのです。以降、全シリーズを通して、その世界観は受け継がれることとなります。そして、シリーズを支えた仕事人たちのなかで忘れてはならないのが、効果音の演出家たち。殺しをはじめ劇中で使われるその効果音にもこだわりぬいています。例えば、仕掛け人が武器に使う針がターゲットの延髄に突き刺さる音は、「川の流れる音」と「水を流したまま石けんで手を洗う音」を組み合わせ、さらにそのテープを手で回転させて出したものでした。そして、骨はずしの際につけられる音は、映写機にフィルムがかかった音を利用。また、勇次の三味線の音は、本物の三味線の糸をボールペンの握りの部分で擦って出されていました。さらに、三田村邦彦さん演じる秀が、カンザシを回す時の音は、ジッポライターを開ける音を音源にしていました。

デジタル技術が発展していなかった当時、必殺シリーズは、こうした、こだわりの仕事師たちのアイデアと絶え間ない努力によってその独自の世界観を構築。長年愛され続けたのです。まさに時代劇を超越した異色の人気シリーズ。闇の仕事人たちが見せる喜怒哀楽に、意表をつく殺しのテクニック、そして先の読めない優れたストーリーに、思わず息を呑む映像美。それらが一体となって、存在感のあるキャラクターが大活躍する不朽の名作「必殺」は生まれたのです。


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