トップ
トクベツキカク
セカイノニュース
スマムービー
スマメール
スマデータ
シンゴ5
オオシタアナ
ヘンシュウコウキ
スマギャラリー
バックナンバー

スマデータ投票
モバイルサイト
メールマガジン
ケイジバン
番組へのご意見
最新号のTOP

世界中の映画祭で話題を集め、ハリウッドではリメイク作が続々と発表されるなど、ここ数年、圧倒的な勢いを見せているのがアジア映画です。その中心を担うのは、韓国、中国、そして日本。しかし――韓国や中国の大躍進を見ていくと、そこには日本映画界が抱える問題点も浮き彫りになり…。躍進するアジア映画の“いま”にスポットを当てました!
いまハリウッドでは、アジア映画の大ブームが起きています。ことし8月に全米公開された中国映画「HERO」は、オープニング3日間でアジア映画史上最高となる1780万ドルを記録し、全米興行収入で2週連続第一位を獲得しました。これは、全米で公開された外国語作品の中ではメル・ギブソン監督の「パッション」に次ぐ成績であり、劇場数もアカデミー賞作品「グリーンディスティニー」を上回る2,032館で上映されたのです。ことし6月には、第60回ベネチア国際映画祭で最優秀監督賞(銀獅子賞)を受賞した北野武監督の「座頭市」がフランス、イタリアに続き全米でも公開され、あの「ニューヨークタイムズ」紙も「新たな巨匠が描く侍像!」と絶賛しています。さらに、韓国映画「ブラザーフッド」、日本のホラー映画「呪怨」のハリウッドリメイク版「The Grudge」、リチャード・ギア、ジェニファー・ロペスなど大物俳優が出演してリメイクされたジャパニーズムービー「Shall Weダンス?」が公開されるなど、アジア映画が続々とハリウッド進出を果たしているのです。そのほか、香港映画「インファナル・アフェア」はブラッド・ピットがリメイク権を買い取り、レオナルド・ディカプリオとW主演で映画化が決定。また、スティーブン・スピルバーグ監督率いるドリームワークスは故・黒澤明監督の傑作「生きる」や韓国映画「猟奇的な彼女」のリメイク権を獲得するなど、アジアンムービーは、文化や言葉の違いを乗り越え、快進撃を続けているのです。
今年度の世界4大映画祭を見てみると、「ベルリン映画祭」では、韓国「Samaritan girl」のキム・キドク氏が監督賞を受賞。キム氏は「ベネチア映画祭」においても「スリー・アイアン」で監督賞を受賞しています。「モスクワ映画祭」においては、我らがチョナン・カン主演「ホテルビーナス」がコンペティション・パースペクティブ部門において最優秀作品賞を受賞。さらに、「カンヌ映画祭」では、「誰も知らない」で柳楽優弥(やぎら ゆうや)が日本人初の主演男優賞を受賞したほか、パク・チャヌク監督の韓国映画「オールドボーイ」が審査員特別賞を受賞しています。このように、世界の映画祭でも、着実に認められつつあるアジア映画ですが、日本映画に限っていえば、興行面での世界的ヒットには至っていないのが現実です。その背景には、アジアの国々から明らかに遅れをとっているニッポンの映画産業事情があるのです。
現在日本全国には、2681館の映画館があり、これは韓国の4倍、香港の40倍にあたります。しかし、観客動員数を見ると、日本は1億6000万人なのに対し、韓国は1億2000万人。映画館の数に比べると決して多くはありません。この差は一体、何を意味しているのでしょうか? アジア映画界の中でも、ここ数年、飛躍的な躍進を見せているのが韓国です。「JSA」「シュリ」「シルミド」など、日本でも高い興行成績を記録し、いまや韓国の強力な輸出産業のひとつとまで発展した韓国映画界。その背景には様々な要因があるのです。
そのひとつは、すでに欧米やアメリカでは当たり前のように行われている、一般人も参加可能な投資ファンド(制作費を一般の人から募るというシステム)を導入しているということ。いま、日本で1本の映画を作るにあたり、その製作費はピンきりですが、おおむね約3億〜7億円かかるといわれ、複数の企業が少しずつお金を出し合う形式がとられることが多いのです。一方、IT関連が急成長を続ける韓国では、既に5年前の1999年からそのシステムが確立しており、人気作品の「チング」「猟奇的な彼女」などもこの方式を採用。映画の制作費には、それぞれ2億8000万円、2億2000万円がかけられました。また、若手有望株として注目されているキム・サンジン監督などは、以前、作品をネット投資に募ったところ、わずか14秒で1億ウォンが集まったというのです。このシステムは、映画が当たれば、投資した一般の人にも利益がもたらされます。大ヒット作「チング」では実に300%が投資者に還元されました。そのため、韓国では若いサラリーマンを中心に、この投資ファンドの人気が高まっているのです。
また韓国では、国による支援体制も確立されています。公的機関が映画振興のため年間1000億ウォン、日本円で100億円を支出しているのです。これらは、製作費の支援だけでなく、海外映画祭への参加費、映画人の育成、現像、録音などの技術的なバックアップなどに使われています。ソウルから車で一時間半ほどの京畿道南楊州市にある「ソウル総合撮影所」は、その運営費をすべて国が負担しています。敷地面積は約130ヘクタール、東京ドーム約28個分。敷地の北側から中央にかけて、伝統家屋や民族村、中小都市、板門店の野外セットが並んでいます。中央部には、映像体験館や食堂などがあり、小道具や衣装が展示され、映画発達史や製作過程、最先端のアニメ製作についても紹介されているだけでなく、関係者用の宿泊施設もあります。南側には、撮影スタジオや録音、編集などの映像館が並び、まさに、韓国映画の中枢とも言える場所なのです。この撮影所は一般開放もされており、一番の人気スポットは「JSA」で使用された、板門店のセット。本物の板門店は写真撮影はおろか、韓国国民が訪れることも難しいため、映画撮影のためだけでなく、体験教育の場としても利用されているのです。
このように国を挙げて映画制作を盛り上げる韓国には、まだまだ、日本に存在しないあるものがあります。それは「映画法」です。その中でも有名なのが「スクリーン・クオーター制度」。これは、年間上映日数の40%に相当する146日以上、国産映画を上映することを映画館に義務づけたもの。この結果、韓国における興行ランキングは、自国の映画が大半を占めています。「シルミド」や「ブラザーフッド」など、ひとつの作品の観客動員数が1000万人を超える作品も出てきているのです。ことしの日本の興行成績を見てみると、ハリウッド映画が上位を独占。ことし一番のヒット作といわれる日本映画「世界の中心で、愛をさけぶ」でさえ観客動員数は618万人なのです。さらに、ことしから韓国では、小中高で映画が新たな正式科目となっています。授業内容は、映画鑑賞を行ったり、教科書を使用して映画制作の方法を学んでいくというもの。授業には国立の映画アカデミー出身の専門講師があたり、若い人材の育成に力を入れているのです。
ここ数年、ハリウッドでも好調な成績を残しているもうひとつの国が中国です。
この国の映画館入場数は年間、約6億人と世界第1位。国民ひとり当たりの平均入場回数は年13回と、日本の1・5回に比べ桁違いです。そんな中国映画界の財産といえば、やはり豊富な人材。全米2000館で公開された「HERO」が40億円の興行収入をあげ、まもなく新作「LOVERS」の全米公開を控え、いま世界が注目する監督のひとりがチャン・イーモウ。1985年「紅いコーリャン」でデビューし、そのデビュー作が「ベルリン映画祭」金熊賞を受賞。鮮やかな色使いと魅力的な女優を発掘するのが定評なチャンですが、そんな彼に認められ、1999年「初恋のきた道」でデビューし、アカデミー受賞作品「グリーンディスティニー」において一躍脚光を浴びたのがチャン・ツィイーです。彼女は来年、あのスピルバーグが監督総指揮を執る「ゲイシャ」で初のハリウッド映画主演が決定。ハリウッドが最も注目するアジアン女優となっています。
そして、すでにハリウッドでも、観客を呼ぶことのできる名監督としてトム・クルーズやニコラス・ケイジなども厚い信頼を寄せるアクション映画の第一人者となったのはジョン・ウーです。東洋のハリウッドと呼ばれる香港で、元々はコメディー映画を作り人気を博していた彼は、「男たちの挽歌」シリーズで一躍、香港を代表するアクション監督となりました。そんな彼が、ハリウッドへ向かったきっかけとは1989年の「天安門事件」です。中国への返還後、香港にも軍隊がやって来るかもしれない、そうなると自由な映画作りが保証されないかも知れない――これを期に、ジョン・ウーはハリウッドを目指すこととなったのです。1993年「ハード・ターゲット」でハリウッド初進出した彼は、1996年ジョン・トラボルタ主演「ブロークン・アロー」で初の全米ナンバーワンヒットを獲得。そして2000年、トム・クルーズ主演「ミッションインポッシブル2」でアクション映画監督として名実ともに不動の地位を確立したのです。
香港といえば、1997年、香港を舞台に、我らが香取慎吾編集長と岸谷五朗が大暴れする日本・香港合作ムービー「香港大夜総会」も話題になりましたが、この香港から生まれたスーパースターといえばご存じジャッキー・チェン。現在、ジャッキーは、香港映画発展のために、政府を巻き込んで、映画館や撮影所、テーマパークなどを備えた「ジャッキー村」の建設を計画しているそうです。
折しも、今月はトニー・レオン、木村拓哉、コン・リーらアジアを代表するスターが共演したウォン・カーワイ監督の「2046」が公開された月。アジア映画は、今後ますます世界の映画界の中で大きな存在になっていきそうです。

NEXT
Copyright(C)2004
tv-asahi
All Rights Reserved.