映画「スター・ウォーズ」ではジェダイの騎士たちが銀河の平和と自由を守ります。ジェダイの騎士が操る特別な力が「フォース」。彼らはしばしば挨拶のように「May the Force be with you(フォースと共にあらんことを)」と口にします。この決まり文句と May the 4th をかけて、5月4日は「スター・ウォーズの日」と呼ばれるようになりました。もともとはファンたちの遊び心から生まれた記念日だったのですが、今では公式の記念日として定着しています。
今回はオルガニストの石丸由佳さんが、東京藝術大学奏楽堂のパイプオルガンのさまざまな音色を駆使して、「スター・ウォーズ」メイン・タイトルを演奏してくれました。たったひとりで演奏しているにもかかわらず、その壮大さは「スター・ウォーズ」の世界観にぴったり。石丸由佳さんのジェダイの騎士を思わせる衣装も決まっていましたね。
有名な冒頭の勇ましいメロディは、主人公ルーク・スカイウォーカーのテーマと呼ばれます。輝かしさと重厚さが一体となったパイプオルガンの音色が、ルークの冒険心と秘められたフォースの強大さを伝えてくれました。いったん音楽が静まった後に登場するフルートのパッセージは、あたかも本物のフルートのように軽やか。王女レイアの主題では、弦楽器系のストップに「ウンダ・マリス」のストップが重なって、うねりを作り出します。優雅なメロディなのですが、暗い色合いが加わって、悲劇を予感させるところがなんとも味わい深いと思いました。
オルガンのストップについての解説もとても興味深いものでした。あんなにもたくさんのストップがあるとは。「フルート」や「トランペット」といったストップはイメージしやすいですが、鼻声風の「ナザート」や、古楽で使われる弦楽器「ヴィオラ・ダ・ガンバ」があるのがおもしろいですね。ストップの組合せから音色を作り出す様子はまるでシンセサイザー。多くの作曲家たちがこの楽器に魅了された理由がよくわかります。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)