茨城・常陸太田市
~人生雨のち陶芸日和~

今回の舞台は、茨城県常陸太田市。子どもの頃からの夢を叶え、陶芸家になった根本典子さん(57歳)と、支えるパートナーの藤田博美さん(60歳)が主人公です。
茨城県水戸市出身の典子さん。母親の実家が笠間市で近所には陶芸作家の工房があり、子どもの頃から陶芸が身近なものでした。高校卒業後は磁器メーカーに就職し、21歳で結婚。長男を出産後に離婚を経験し、シングルマザーになりました。生活のために建築資材会社や飲食店など多い時には3つの仕事を掛け持ちしガムシャラに働きました。そんな典子さんが唯一心穏やかになれたのが、陶器店やギャラリーで焼き物を愛でるひと時。ある日、偶然出会った陶器に強く心を奪われました。けれどその作品はとても高価だったため購入を諦めることに。その代わりに典子さんは「自分でも作ってみたい!」と強く思い、知人から笠間焼の先生を紹介してもらい、そこで懸命に腕を磨きました。そして2020年独り立ちし、常陸太田市に『ねもと工房』を構えました。さらに今年2月に難関試験を突破し、茨城県で23人目、女性では2人目の笠間焼・伝統工芸士になりました。
笠間焼は江戸時代中期、笠間の名主が信楽焼の陶工から指導を受けて窯を開いたのが始まりと伝わり、食器や花器など普段使い出来る「暮らしの焼き物」として親しまれています。典子さんの作品も日常的に使えるものが大半で、中にはネコをモチーフにした茶香炉や茶碗もあり、特に女性から人気です。自宅は築60年の古民家でパートナー藤田博美さんとの暮らしを満喫しています。休日、藤田さんは畑で野菜を作り、動物好きで烏骨鶏9羽、ウズラ8羽と犬1匹、ネコ2匹を飼っています。
子どもの頃から好きだった陶芸の世界に飛び込み、笠間焼の伝統工芸士として奮闘する典子さんと、支えるパートナー・博美さんとの田舎暮らし。そして見守る師匠や家族、応援してくれる友人たちとの交流を紹介します。



この日は、素焼きした物に釉薬をかけ窯詰め作業です。釉薬が乾いたら、ガス窯に詰めます。詰める場所によって焼き上がりが違うので、試行錯誤を繰り返し詰めていきます。およそ1時間かけて60個の作品を詰め終えました。翌日、窯に火を入れ、窯の内部が何と!1250度になるまで約18時間もかけて焼いていきます。



窯の火を止め2日間冷ましてから窯出しです。窯の中には、従来とは違う仕上りを狙った茶香炉があります。これまではツヤが無い“炭化焼成”でしたが、今回はツヤありの“酸化焼成”。注目の結果は、大成功です!典子さんが狙った美しい焼き上がりになりました。



典子さんの師匠は諏訪幸雄さん。諏訪さんは、かつて茨城県窯業指導所の所長を務め、笠間焼の後継者育成に力を注いできました。典子さんは諏訪さんの元で最初は小皿作りから修業しました。諏訪さん曰く「小皿を同じ大きさ、同じ厚さで何枚も作り、ろくろに慣れろ、それが基本」。諏訪さんには今でも色々な相談に乗ってもらっています。



典子さんと博美さんの出会いは11年前、友人の紹介でした。当時、陶芸のことで頭が一杯だった典子さんでしたが、博美さんの一途な気持ちに魅かれてお付き合いが始まりました。典子さんが伝統工芸士の試験に1度落ちてしまい挫折しかけた時には、博美さんが叱咤激励。2度目の試験前は、博美さんがご飯を作るなど生活面をサポートしてくれました。互いに支え合い、今の暮らしがあります。




ねもと工房
根本典子さんが営む工房です。
典子さんの作品は工房隣接のギャラリーなどで購入できます。
※笠間の秋の陶器市「秋市」(10月31日~11月3日)に出店予定です。
ギャラリー営業時間:午前10時~午後4時
定休日:不定休
数に限りがありますので、詳細はSNSをご確認ください。
茶香炉 6,270円
飯碗(小) 2,100円など