愛知・新城市
~夫婦でつなぐ合掌造りカフェ~

次回の舞台は愛知県新城市。父が54年前に白川郷から移築した合掌造りの古民家を蘇らせ、『かふぇ このはずく』を始めた豊島令子さん(70歳)と、夫の裕光さん(74歳)が主人公です。
愛知県新城市(旧鳳来町)出身の令子さん。機械メーカーのエンジニアだった裕光さんと出会い、25歳のときに結婚しました。そんな令子さんが初めて合掌造りを目にしたのは16歳のとき。新城でおよそ600年続く寺院の19代目だった父・全孝さんが、町の活性化のため白川郷から移築してきたのです。かつては五平餅屋さんやお土産屋さんなど多くの店で賑わっていた鳳来寺山につづく表参道。昭和43年、観光客の足となっていた鉄道が廃線となり、町は次第に活気を失っていきました。そんなとき、白羽の矢が立ったのが白川郷の合掌造りの古民家でした。「観光の目玉となる施設を作りたい」と考えた全孝さんは、雪の深い時に何度も白川郷に足を運び、「合掌造りを譲って欲しい」とお願いしました。そしてついに、当時白川郷でも2番目に大きかったという合掌造りを地元へ移築。食事処を開きました。しかし、開店当初は賑わいを見せた食事処も時代の波には勝てず、建物はおよそ20年前には使われなくなり、徐々に廃墟のようになっていきました。転機が訪れたのは2年前。裕光さんが突然、「この建物でカフェをやりたい」と切り出したのです。提案を受けた令子さんも、「両親の想いが詰まった場所だから、ここでカフェをやってもいいかな」と決心します。そして、お2人は「鳳来寺山への参道に活気をとり戻したい!」と志を同じくする仲間たちの力も借り、合掌造りを改修。去年4月、『カフェ このはずく』をオープンさせました。カフェの厨房を仕切るのは令子さん。人気メニューは旬のフルーツを盛り付けたスイーツで、一推しは自家製プリン。一方、几帳面な性格の裕光さんはドリンク担当で、アイスコーヒー作りにも驚きの技が!
鳥の声、虫の声、そしてみんなの笑い声でいつもにぎやかな『かふぇ このずく』。雑踏から離れ、鳳来寺山の自然の中でゆったりと過ごせるのが魅力です。そんな癒しのカフェを営むお2人の日常、そしてお客さんや地元の人たちとの温かい交流の様子を紹介します。



築年数200年以上の『かふぇ このはずく』。屋根の高さはなんと13メートル、4階建ての高さに匹敵します。中に入ると大きな囲炉裏の先に、どーんとカフェスペースが。見どころは「根曲がりの松」。自然に曲がった松だからこそ、強く粘りがあり、重い屋根を支えることができるそうです。長さはおよそ10メートル。今や、これほどの松はなかなか手に入らないそうです。「この建物を300年、400年と残していきたい」と考えるお2人。これからも手と手を取り合って、合掌造りのカフェを守っていってください



この日、『かふぇ このはずく』に孫たちが遊びに来ました。そこで、裕光さんは「合掌造りを探検しよう!」と提案。まず初めに、みんなで2階へ上がります。階段を上った先に広がっていたのは90畳もある広い空間!思わず孫たちも走り回ります。さらに、合掌造りのてっぺんである屋根裏も探検。「ここでは昔お蚕さんをかっていたんだよ」という裕光さんの言葉に孫たちは「おかいこって誰?」と興味津々な様子でした。



『かふぇ このはずく』の定休日、裕光さんと令子さんはお出かけです。行き先は霊峰・鳳来寺山の見晴らし台。1425段の石段をお互い歩調を合わせながら登っていきます。目的地にたどり着くと、ご褒美の絶景が!「見晴らしが良く、風も気持ちいい。」とお2人も笑顔を見せます。山登りで汗を流した後はお昼ご飯です。令子さん手作りのお弁当には、卵焼きや昆布のおにぎりなど裕光さんの大好物がたくさん。幸せな休日となりました。



物づくりが得意な裕光さん。この日も、「カフェで使う“ある物”を令子さんに作ってあげよう!」と何やら計画したようです。向かった先は竹林。お店で使う食器を竹で作ります。瀬戸物の小鉢が割れて、令子さんが困っていたので考えついたのです。早速作業がスタート。竹を割ったり削ったり、苦戦しつつも小鉢やカップが完成しました。カフェで使われる日が楽しみですね。




かふぇ このはずく
裕光さんと令子さんの営むカフェ。令子さんの作るお稲荷さんや、季節のフルーツソースが人気のプリンセットがおすすめです。
営業時間 午前10時~午後4時
定休日 火・水・木・金曜日
※11月は金曜日も営業
おそば 800円
おいなりさん 800円
プリンセット 800円