~未来につなぐ故郷SP 2024春~

「SDGs」をテーマにした1時間拡大スペシャル。故郷の島を守ろうと奮闘する兄弟と、伝統の技を継承し未来につなごうと頑張る女性の2組を紹介します。
最初の舞台は佐賀県唐津市の松島。故郷の島で唯一のレストランを始めた宗 勇人さん(34歳)と、素潜り漁の海士(あま)として生きる弟・秀明さん(29歳)、そして息子たちを応援する海士の父・勇さん(62歳)が主人公です。勇人さんは、料理をすることが好きで、調理科のある高校に進学。卒業後は松島に戻り、島の魚介を使って料理を出すレストランを開きたいと考えていました。しかし父・勇さんは「こんな小さな島にお客さんが来るわけがない。島の海産物も減り商売に使えるほどの量ではない」と反対し島外での仕事を勧めました。そこで勇人さんは佐賀市内や福岡市内のレストランで働き腕を磨きました。そして、2015年に松島のイベントで「1日限定レストラン」のシェフを務め、その時の料理が大好評だったことから改めて島でレストランを開くことを決意。2016年、実家のリビングを使い『リストランテ マツシマ』をオープンしました。弟の秀明さんは、幼いころから父・勇さんに憧れ、高校卒業後は海士になると決めていました。しかし、勇さんは海士の将来に不安を抱き、島外で就職し3年間は続けるよう勧めました。本音は「3年島を離れたら、町場の暮らしが気に入り、そのまま島外で家庭を持つだろう」との思いでした。しかし秀明さんの意志は固く勇さんとの約束通り3年で務めた会社を辞め、2016年に島へ戻り勇さんと同じ海士になったのです。松島には商店もコンビニもありません、あるのは手付かずの大自然。そんな松島で勇人さんが始めた『リストランテ マツシマ』は人気店となり、今では福岡市内にも出店。勇人さんは松島と福岡を行き来する忙しい日々を送っています。一方、海士の秀明さんは地元の若い仲間と協力し観光客用のグランピング施設をオープン。さらに地元の特産品を目指し塩づくりも始めました。勇人さんと秀明さんは「何もない島だからこそ、何でもできる!」と考え頑張っています。
島を愛し、島の暮らしを未来へとつなぐ兄弟の奮闘ぶりを紹介します。



松島の海士は現在7人。勇さんや秀明さんをはじめ、なかには海士歴50年の大ベテランもいます。この日も7人そろって船に乗り、いざ出航です。真剣な表情で漁場へ向かうその姿は、まさに「海のサムライ」。到着するとイカリをおろし準備完了です。一斉に海へ飛び込み、海底からアワビやサザエ、ウニなどを次々と引き上げます。
松島の美味しい魚介は、勇人さんの『リストランテ マツシマ』を始め、全国の皆さんに「美味しい幸せ」を届けています。



冬の間は休業している『リストランテ マツシマ』ですが、この日は大切なお客様を招待し特別にオープンしました。来島したのは勇人さんが島の分校に通っていた時の恩師、伊藤先生ご夫妻。勇人さんが感謝の気持ちを込めて作った料理を食べていただきました。「先生方が郷土に根ざした教育をしてくださったからこそ、島に戻りたいという気持ちが芽生え、戻って来るきっかけになりました」という勇人さん。伊藤先生はシェフになった勇人さんとの再会に涙を浮かべていました。懐かしい松島の恵みに舌鼓を打ち、分校時代の思い出話に花を咲かせました。




リストランテ マツシマ
勇人さんが営むイタリアンレストラン。松島で唯一の飲食店です。松島の海士がとった海の幸や島の野菜をふんだんに使った料理を提供しています。
1日1組限定、予約制です。
電話:080-2738-2655
4月~10月の限定営業
定休日:不定休
全8皿のお任せコースのみ
大人 19,000円(サービス料・ワンドリンク込み)
別途お子様メニューあり

もう一つの舞台は兵庫県豊岡市の城崎町湯島。東京から移住し、城崎の伝統工芸品「麦わら細工」の職人となった今井幸子さん(39歳)が主人公。東京都渋谷区生まれの幸子さん。服飾の専門学校を卒業後オーダーメイドスーツの会社に就職しますが1年後に倒産。その後は、両親が営むスーパーマーケットを手伝っていました。しかし、高齢の両親は体力的にも厳しくなり、2019年にスーパーを閉店します。幸子さんは、次の仕事を探す前に休養を取ろうと母・洋子さんと城崎温泉へ出かけました。そして、宿泊した温泉旅館で初めて目にした麦わら細工の綺麗さに感動し興味を持ったのです。その作品は、後に出会う麦わら細工の師匠・神谷俊彰さん(58)の父親が描いた“翼を大きく広げ飛んでいる鶴”でした。旅行を終え東京に戻った幸子さんでしたが、城崎が気に入り、この地で暮らしたいと、1カ月後に再び城崎を訪れました。そして温泉旅館を飛び込みで訪ね仕事をさせてほしい直談判、1年ほど住み込みで働き、休みのたびに『かみや民藝店』の麦わら細工のワークショップに通ったのです。店主であり師匠の神谷さんは「熱心でワークショップに20回以上通って来たから、本格的にやってみたらどうだ」と声を掛けたと言います。最初は躊躇した幸子さんでしたが、「城崎で麦わら細工を仕事にできるなら」と決意。2020年、城崎に移住し正式に神谷師匠のもとで働きながら麦わら細工を学びました。更に城崎で夫・博和さんと出会い2022年に結婚、現在は博和さんの両親と4人で暮らしています。
麦わら細工に打ち込む幸子さんの姿と見守り指導する神谷師匠との交流、支える家族の姿を紹介します。



幸子さんが麦わら細工の仕事を終え帰宅するのは、いつも夜の7時半過ぎです。そのため、早く帰る博和さんのために夕飯を作り置きしています。でも、博和さんは食べずに、いつも幸子さんの帰りを待っているんです。お互いを「ひろくん」「さっちゃん」と呼び合う仲睦まじい素敵なご夫婦です。2022年に結婚したお2人、婚姻届けを出したのはバレンタインデーでした。幸子さんは昨年、結婚記念日に自分でデザインした麦わら細工の桐箱にチョコレートを入れてプレゼントしました。城崎に思い切って飛び込み、生涯の仕事と生涯の伴侶にも出会え、幸せ一杯の幸子さんです!



麦わら細工職人への道を歩み始め、3年となった幸子さん。この日、神谷師匠から
新たな課題が与えられました。幸子さんが挑戦するのは、「桔梗(ききょう)張(ば)り亀甲(きっこう)。桔梗の花と亀甲模様が連なる柄ですが、今回はさらに難易度を上げて、桔梗を縞模様で描くといいます。緊張感が漂う中、幸子さんの挑戦が始まりました。ときに「ああ、ダメだ!」と声をあげながらも頑張った幸子さん。完成した桔梗張り亀甲は、「今までにない作品」と師匠からお褒めの言葉をいただきました!幸子さん、これからも麦わら細工の職人目指し、さらに頑張ってください。




かみや民藝店
幸子さんの師匠・神谷さんが営む、麦わら細工のお店。桐箱やアクセサリーなどの麦わら細工の作品を購入できるほか、ワークショップなども行っています。
電話:0796-20-5206
営業時間:午前10時~午後6時
定休日:不定休