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2023年4月22日卯月の肆

和歌山県・田辺市
~熊野路 川湯の温泉宿~

2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録された熊野古道を有し、雄大な自然が旅人の心を癒す和歌山県田辺市が舞台。あちこちに温泉地が点在していることでも知られます。主人公はこの町に移住し、温泉宿を営む百合光平さん(52歳)。今は神奈川に離れて暮らすパートナー・清水紀久子さん(53歳)と共に、地元で愛された温泉宿『すみや』を先代から“継業”し『すみ家』としてリニューアルオープンさせました。宿のある「川湯温泉」は、熊野川の支流・大塔川の川底から絶えず70度以上の源泉が湧き出ている大変珍しい温泉地。河原の砂利を掘ると熱いお湯が溜まり、自分だけの温泉をつくることが出来るんです!
和歌山県白浜町出身の光平さん。高校時代からバンド活動に夢中になり「音楽で成功したい」と20歳で上京、後にデビューを果たしベーシストとして活躍しました。その間に結婚・離婚も経験。再婚し長男・美南(はるな)さんが生まれましたが、離婚しシングルファーザーになった光平さん。その後は細々と音楽を続けながら営業の仕事をして長男を育てました。そんな光平さんが40歳の時に出会ったのが紀久子さんで、長男・美南さんとも仲良くなり一緒に暮らすことに。フランス語が堪能で、マダガスカル大使館で秘書として働いていた紀久子さんの希望で、フランススタイルの事実婚を選択。共働きで忙しい日々の中、光平さんは美南さんを田舎で育てたいと故郷・和歌山へのUターンを提案、紀久子さんもその思いに賛同します。県の移住フェアへの参加がきっかけで「川湯温泉で45年ほど前に開業した民宿を継がないか」と“継業”の話がまいこみ、2人は高齢の女将から宿を引き継ぐことに。そして、2019年4月『川湯温泉 民宿 すみ家』をリニューアルオープンさせました。慣れない仕事に苦労しながら忙しくお客さんを迎え入れていましたが、2020年春以降コロナ禍で苦境に。予約ゼロの状況が続き、紀久子さんは家計を支えるために神奈川県に戻り就職。次いで長男・美南さんも「音楽学校へ行きたい!」と東京の学校に入学し引っ越してしまいます。1人になった光平さんはこれまで地元の仲間たちに支えられ頑張ってきました。ところが…コロナ禍が落ち着きつつある今年春、突然海外からの予約ラッシュが到来!宿は外国人のお客さんで連日満室、孤軍奮闘する状態に。コロナ禍で辛い思いもしましたが、今は忙しく日々お客さんと心を通わせている光平さん。これからも、世界に川湯温泉を広めるべく、家族や仲間と力を合わせて頑張って下さいね!

川のお湯と書いて「川湯温泉」。大塔川の川底のあちこちから湧きだす源泉の温度はおよそ73度のナトリウム炭酸泉です。温泉が湧出する場所を探して砂利を掘ると、マイ露天風呂が作れます。ですが、源泉が熱いため、川の冷たい水をうまく混ぜて適温にするのがコツ。江戸時代から湯治場の一つして知られていた川湯温泉は、昭和32年には「熊野本宮温泉郷」のひとつとして国民保養温泉地に指定され、年に一度、熊野本宮大社にお湯を献上しているそうです。時間がある時には光平さん、宿泊のお客さんに“温泉掘りガイド”をすることも。道具を片手に掘る場所を吟味して、温泉水を石でせき止めたり、冷たい川の水を流し込む流水口作りなどもアドバイス。掘った場所にだんだんとお湯がたまり、良い露天風呂ができました。紀久子さんは、「熊野古道は知られているのに、川湯温泉はそんなにまだ知られてないのでもっといろんな方に知って欲しい」と思っているそうです。光平さんは「グッドなコンディションの温泉作りを目指す」そう。現在、外国のお客さんが大半の『すみ家』。光平さんは毎日、カタコトの英語と身振り手振りで乗り切っています。部屋の案内に、ボリュームたっぷりの食事、時には酒を酌み交わし、お客さんをもてなします。コロナ禍で自粛が続いたこれまでとは打って変わり賑やかな暮らしになりました。迎えてご飯を作り、また次の旅路へお見送り。毎日が一期一会です。

民宿『すみ家』に欠かせない食材を仕入れに、仲間のところへ出かけた光平さん。まずは若手・中野純平さんがお父さんと営む『ジビエ本宮』へ。地元で獲れる猪や鹿肉の加工販売所です。臭みもなく美味しい鹿肉は、酒の肴にぴったり。もう一軒はもちろん、そんなお酒がずらりと揃う専門店です。社長の阪上憲司さんは、光平さんの中学時代のバスケット部の先輩で、光平さんが和歌山県にUターンしたことで再会。いつも和歌山県ならではのお酒を紹介してくれます。紀州南高梅と熊野古道の名水を使って仕込む梅酒「ばばあの源」は、外国のお客様に大人気。
また、川湯温泉の近所の宿仲間も日々支えあっています。ペンション『あしたの森』の栗栖康平さんは光平さんと同い年の若手同士、一緒に田舎町を盛り上げようと頑張っています。また『旅の宿しば』を営む芝さんは温泉組合長でもあり、コロナ禍の間、家計が苦しく様々な支払いが遅れた光平さんを待ってくれました。光平さんは「人は、人に生かされている」と語ります。仲間の支えがあり苦難を乗り越えてきました。

今日は光平さん、紀久子さんと一緒にお客さんへのガイドの下見にと、熊野古道を歩きにやってきました。紀久子さんはフランス語で「高野・熊野通訳案内士」というガイド資格を取りました。京都・吉野・高野山・伊勢の各地から「熊野本宮大社」、「熊野那智大社」、「熊野速玉大社」の三山に向かう巡礼道は、平安時代から人々が歩いてきた路です。今日は「中辺路(なかへち)」を通り3時間ほどで「熊野本宮大社」にたどり着く手軽なコースを歩きます。
一歩一歩、踏みしめて熊野古道をやってくるとより厳かな気持ちになるといいます。そして「熊野本宮大社」で2人は何をお祈りしたのかというと…。光平さんは「祈るというよりもお礼。コロナの中で家族の事とかいつもお祈りして、ありがとうございますとお祈りをした」とのこと。紀久子さんはズバリ、「宿屋が繁盛しますように!」だそうです。分かりやすく直球なお願い、きっと叶いますよ。

『すみ家』は今年4月で、民宿を継業して4周年を迎えました。紀久子さんは神奈川からかけつけてお客さんのアテンドなどを手伝ってくれ、東京の音楽学校に通い、料理も好きな長男・美南(はるな)くんも春休みで帰省。厨房に立ち調理や配膳を手伝ってくれました。普段は、離れ離れに暮らしている3人。光平さんは「今宵は4周年の記念!」と、お客様にふるまい酒をし、みんなで乾杯をしました。コロナ禍を体験し、生活も苦しく、くじけそうになった日もありました。でも今、こうしてお客さんと家族と一緒に、笑顔で記念すべき日を迎えられたことは、光平さんにとって何にもかえがたい喜びです。「僕だけじゃなく、世界中の人が、良く耐えたと思う」と思わず涙ぐむ、本当に心の温かな光平さん。どうかこれからも、光平さんと紀久子さん、お2人らしい『すみ家』の歴史をこの地で刻んでいってくださいね!

楽園通信

すみ家

百合さんが継業した「川湯温泉」の温泉宿です。

【宿泊料金】素泊まり
平日:大人6,000円
  (子供4,500円・幼児1,500円)
休前日:大人7,000円
  (子供5,250円・幼児1,750円)
【食事料金】食事は事前予約制
朝食:1,000円 夕食:3,000円
※ハイシーズンは値段が異なります。
※消費税込み・入浴税別(中学生以上150円)
【アクティビティ料金】(宿泊者のみ)
温泉掘りレクチャー 1グループ 2,000円
レンタルショベル付き

電話番号:0735-42-0097
電話受付時間:10時~15時・20時~22時
(予約は電話以外にHPのお問い合わせフォームからお願いします)
定休日:不定休