千葉・南房総市
~幸せ呼ぶ花 カレンデュラ~

初春から色とりどりの花が咲き乱れ、一足早く春が訪れる町として知られる、千葉県南房総市。主人公はこの街に移住し、鮮やかなオレンジ色が美しい花“カレンデュラ”農家になった五十嵐大介さん(38歳)と妻の早矢加さん(39歳)です。カレンデュラは日本では「キンセンカ」として知られ、南房総市はキンセンカの切り花の有数の産地。五十嵐さんご夫婦はこの切り花の他、ハーブとして食べられる食用花も栽培し、海外でメジャーな「カレンデュラ」という呼称を使っています。でも実は夫婦には、本気で酪農家を目指し挫折した過去があり、離婚の危機を乗り越えて今があります。
兵庫県出身の大介さんは大学で酪農を学び食品会社に就職。その後、畜産を現場で学びたいという思いから青年海外協力隊員としてキルギス共和国へ渡ります。現地で少数の牛や馬と共に暮らす人々の生活に感銘を受け、いずれは自らもこんな暮らしがしたいと思い始めました。その1年後に派遣されてきたのが早矢加さんで、大介さんが通訳などの手助けをしたことで2人は急接近し帰国後に結婚。そしてキルギスの生活で触れた“小さな酪農家”を目指して夫婦で北海道へ渡ることに。研修を始めたものの投資額が大規模な酪農事情に戸惑った大介さんは「辞める」と言い出し、夫婦の仲は悪化し離婚の危機に。そんな時、大介さんの脳裏に浮かんだのが、仲が良かった頃にキルギスで見た一面オレンジ色のカレンデュラ畑でした。現地では皆がハーブとして生活に取り込んでいて「カレンデュラをハーブとして日本で広めたい」と考えた大介さんは、南房総市の農家で修業を始めました。早矢加さんも最初は反発したものの移住を決意し、夫婦は2018年に花農家として独立。2人の子供も誕生し、夢の舞台を「べレケの村」と名付けました。
一度は挫折を味わったお二人が南房総市で追い続ける新たな夢。どうかこれからも家族仲良く、頑張ってくださいね!



キク科の花「カレンデュラ」。南ヨーロッパでは古くからハーブとして、ティーにしたり、オイルと混ぜてスキンケアに利用したりと愛されてきました。かのクレオパトラも愛用していた、という説もあるほど。そんなカレンデュラを南房総の地で育てる大介さんと早矢加さん。海藻を混ぜ込むなど土にこだわり、食用として育成すると同時に、地元の特産「キンセンカ」の切り花としても栽培をしています。花を摘み取り乾燥させる食用カレンデュラと違い、切り花用の花畑には花が咲いていません。かたい蕾の状態で出荷し、お花屋さんに並ぶ頃に丁度いい具合に開くようにするためです。キンセンカの出荷場では農家同士、納品する花の品質を確認し合い、ダメな時は容赦なく指摘されます。大先輩方にアドバイスをもらいながら学ぶ大介さん。そんな花農家のイロハを教えてくれたのが師匠・髙木豊さん。ご夫婦は髙木さんにキンセンカ栽培を2年間みっちり学び、今も常に相談に乗ってもらっているんです。「食用という新しい挑戦が楽しみだし、応援したい」という師匠、心強い存在です。



ご夫婦は食用カレンデュラを加工し、様々な商品を作っています。車で1時間、お隣の鴨川市に向かうとあるのが、調理や乾燥など農家が利用できる加工場。ここでカレンデュラを洗浄して乾燥機にかけ、「ドライカレンデュラ」にします。丁度いい乾燥具合になるために試行錯誤を繰り返したそうで、その時間や温度は企業秘密!畑で摘んだ花は、こうして丁寧に手間をかけることでハーブとして楽しめるようになります。そのままお湯でハーブティーとして飲むのはもちろん、花びらを使ってドレッシングにしたり、ソープに加工したり。他にもカレンデュラオイルなど早矢加さんのオリジナルレシピで製造しています。主にインターネットで販売していますが、自宅近くの「道の駅・白浜野島崎」にも置かせて頂いています。中には道の駅に入店するいなや、カレンデュラ商品コーナーに一目散に向かうファンまでいるそうで、今密かにブームとなっているんです!



周囲には南房総に移住し、第2の人生をスタートさせた移住仲間がたくさんいます。 毎週土曜日は「DIYの日」と決めていて、昨年購入した築50年の民家を少しずつ改装しています。助っ人は、移住仲間で建築士の赤松秀夫さん。夫婦の思い描く家の形を一緒に作りあげてくれます。そんな作業をパシャパシャと写真におさめている女性の姿が…。「ベレケの村の広報部長」だと言う松本真理子さん。ハリウッドでメイクアップアーティストとして活躍していた方で、夫婦の活動に賛同し、一緒にイベントの企画などをしています。こうして様々な経験を持つ仲間と出会えるのも、移住地として人気の南房総市ならでは。そしてご夫婦の食用カレンデュラを心待ちにしている移住仲間が、イタリアンレストラン「オステリア イルファーロ」を営む佐々木さんご夫婦。朝採れの新鮮なカレンデュラと菜花を練り込み、手の込んだ自家製生パスタを作ります。この時期だけの限定で、カレンデュラの風味を感じられ、とっても華やか!



大介さんと早矢加さんの宝物が、こちらに移住してから生まれた6歳の奏介くんと2歳の花奏ちゃんです。2人のマイブームが、乾燥カレンデュラと重曹、クエン酸で作る「バスボム」。失敗して頭から重曹をかぶってしまった奏介くんですが、豪快に大爆笑。近頃お喋りが上手になってきた花奏ちゃんは、2歳にして「カレンデュラ!」って言えるんです。そんな五十嵐家は、毎朝がバタバタ!朝が苦手な奏介くんを起こすのに一苦労です。機嫌を損ねて拗ね、泣いたり甘えたりする子どもたちに振り回される日々。「思い通りにいかず、毎日あたふたしています」と笑う早矢加さんは、とっても嬉しそう。かつては離婚の危機も経験したお2人ですが、今考えるとこんな楽しい未来が待っているとは全く想像しなかったそう。かわいい天使たちとの時間のために、日々頑張っているんです。



べレケの村
五十嵐大介さん・早矢加さんのカレンデュラや野菜の農園。
早矢加さんのオリジナルで作るカレンデュラの商品も販売しています。
商品:カレンデュラオイル(30ml) 2,600円
カレンデュラハンドメイドソープ 1,900円
カレンデュラ収穫時期:12月~4月上旬



道の駅 白浜野島崎
「ベレケの村」のカレンデュラ商品も置いてある道の駅。
地元の採りたて野菜など南房総市の食材が沢山買えます。
電話番号:0470-38-5519
営業時間:午前9時~午後4時
定休日:年末年始