2010年5月22日(土)ひる4時 放送 「都のかほりスペシャル はじまりの奈良〜美味しい!楽しい!“お初”さがし旅!〜」

旅人:西村和彦 真矢みき 桜木涼介
芸能のはじまり

平城京が出来てから、ちょうど1300年目の奈良。今、大注目の奈良に日本中の人が訪れています。定番の史跡巡りだけではわからない魅力が満載です。みなさんはご存知ですか?私たちの身近な物の多くが、ここ奈良から始まっていることを。
旅人3人は“はじまり”をさがしにまず「春日大社」へ。国の繁栄、五穀豊穣などありとあらゆる願いをかなえてくれる62ものお社がある神社です。



“はじまり”をさがす3人、春日大社の宮司、花山院(かさんのいん)さんに、たずねてみることに。花山院さんは、大化の改新でも知られる藤原鎌足の次男、藤原不比等の子孫。不比等公から数えてなんと54代目だとか!よく耳にする歴史上の人物に一同驚きです。
そんな花山院さんが教えてくれた“はじまり”、は役者業を営む3人にゆかりの深い言葉。それは春日大社で毎年12月に行われる、日本最古の文化芸能の祭「春日若宮おん祭」から生まれたもの。この祭は、芝舞台の上で様々な芸能が奉納されます。そのため、「芝」の上に「居」る、それで「芝居」。自らの“はじまり”に出会った3人、これからの芝居に更に磨きがかかりそうですね。

グルメのはじまり

当時、奈良は全国から美味いものが集まる都でもありました。平城宮跡の東の端にある「東院庭園」。ここは天皇や貴族たちが宴会を開いていた場所です。つまりここはグルメの“はじまり”の地。ここで、当時の人たちが実際に食べていたであろう料理を頂くことに。再現してくれたのは、奈良パークホテルの料理部長、尾道龍男さん。木簡などの古い資料をもとにした研究から、全国から集めた名産品を使った料理を当時の貴族たちが堪能していたことがわかっています。そのお膳に欠かせなかったものが、3つの調味料。海藻から作った塩、藻塩(もしお)。玄米酢。醤油のルーツとなった(ひしお)。これらを自分の好みで組み合わせ、料理につけて食べたのです。また最近、健康食として注目されている黒米も、ご馳走として食べられていました。白米の2倍以上のミネラルが含まれている黒米は、もち米独特のモチモチ感とほのかな甘みが特徴です。
そして当時、天皇家だけしか食べられなかったものが、「熟蘇(じゅくそ)」と呼ばれる乳製品です。チーズのルーツともなっている熟蘇。牛乳をひたすら煮詰めて作ります。この熟蘇を更に加工すると最終的に「最上級の食べ物」ができるといいます。その最上級の食べ物が転じて、現代では、ものごとの本当の魅力を表す言葉になっています。その言葉とは?答えは「醍醐味」。牛乳5リットルから大さじ1杯強(約20cc)しか作れないというオイル状の「醍醐」。これが「醍醐味」の語源なんだそうです。熟蘇の濃厚な味に舌鼓を打つ3人、古代の貴族たちと同じご馳走に大満足でした。

おふくろの味のはじまり

次に一行が向ったのは、「唐招提寺」。金堂にある3体の国宝。中央には金堂のご本尊である盧舎那仏坐像。向って右側には薬師如来立像。そして左側には、千手観音立像。この千手観音、かつては本当に千本の手を携えていたそうですが、現在は953本です。
そもそも唐招提寺は中国からやってきた僧、鑑真和上が759年に建てたお寺。ここは奈良のお寺の中でも特別な存在なのだとか。
どこがどう特別なのか、奈良仏教に詳しい、奈良国立博物館学芸部長の西山厚さんにうかがいました。西山さんは、早速ある場所へと案内してくれました。それは鑑真さんが眠っておられるお墓。「お寺にお墓があるのは当たり前って思われるかもしれませんが、実は奈良のお寺ではとても珍しい。」と西山さん。確かに、東大寺にも興福寺にも薬師寺にも、お墓はありません。何故かというと、奈良の多くのお寺は国立寺院。お坊さんはいわば国家公務員。公の寺に個人のお墓は作れませんでした。でも唐招提寺は鑑真さんのプライベート寺院。だから特別なのです。
754年、正しい仏教を伝えるために日本にやってきた鑑真さん。当時、海を渡ってくるのは命がけの至難の業。5回の失敗の末6回目にしてようやく成功。その時鑑真さんは仏教のほかにもたくさんのものを日本に伝えました。その一つが、境内の中の売店で売られているということで向った3人。「鑑真和上ゆかりの招提みそ」、そう味噌です。今では日本の味を支えている大事な調味料も、ここ奈良がはじまりだったんですね。このお味噌は、蒸した大豆・麦・米に麹をつけ、ウリやナスなどの野菜を混ぜ合わせ熟成させたもの。ご飯のおかずや酒のあてにぴったりなのだそうです。一度お試しあれ!

西村和彦のはじまりの旅

まだまだある奈良の“はじまり”を西村さんがご紹介。 風情あるお茶室でお点前を頂戴する…、そんな時に欠かせないのがお菓子。
実は饅頭(まんじゅう)も奈良生まれって知ってました?はじまりは室町時代。宋から渡来した林浄因(りんじょういん)という人が、お坊さんの栄養食として作りました。饅頭の祖を祀る林神社(りんじんじゃ)には、こんな碑石が。林さんが饅頭を大事そうに抱えています。ちなみに東京にある「塩瀬総本家」は林さんの子孫が開いたお店で創業660年、現会長は34代目とのこと。


続いて訪ねたのは、創業141年の「森奈良漬店」。名物、奈良漬のはじまりは清酒と深い関係があります。清酒の発祥は、奈良市内にある正暦寺。清酒が生まれることで、副産物として酒粕ができ、それに野菜を漬け込んだのが奈良漬のはじまりです。定番はウリですが、今では漬ける野菜の種類も増え、この店では11種類を漬けています。中でも西村さんの一番のお気に入りはセロリ。小気味良い食感と爽やかな香りが絶妙なのだそうです。そして、西村さんが今宵の宿に選んだのが、若草山にある「遊景の宿 平城」。ここを選んだ理由は、絶景!東大寺の大仏殿も興福寺の五重塔もすべて一望できるんです!!本当に素晴らしい景色に、真矢さんも桜木さんも大感激!

そしていよいよお待ちかねの夕食。地元の食材を使った、手の込んだ料理が並びます。中でもこの宿の自慢が、風呂吹き大根ならぬ「柿の風呂吹き」。奈良の名物である柿を昆布ダシで炊き上げ、ゴマ風味の味噌ダレでいただく、オリジナル料理です。ほかにも、黒米を練り込んだそうめんや、7年前にブランド化された奈良の新しい特産品、大和牛(やまとうし)の鉄板焼など、ご馳走が並びます。絶景の宿でいただく絶品料理。奈良は良いなあ〜。



スイーツのはじまり

旅の2日目。一行が向った先は奈良市内から車でおよそ1時間、明日香村です。ここは平城京より前、聖徳太子の時代に都が置かれていた場所。その当時、絶大な権力をふるっていたのが、蘇我馬子。彼にゆかりの深い地を西村さんと桜木さんが訪れました。そこは「石舞台古墳」。幅3.5メートル、奥行き7.7メートル、高さ4.8メートルの大きな墓。馬子の権力の大きさがうかがえます。




西村さんと桜木さんが古代ロマンに思いを馳せている頃…真矢さんはスイーツのはじまりを目指し、奈良を代表する日本料理店「萩王」へ。明治時代の豪邸を改装した趣ある店内です。ここは日本料理店でありながら、地元の食材を活かしたオリジナルスイーツも大評判。あまりの人気に売り切れることもしばしば。作っているのは、この店の長女でパティシエの大山佳子さん。ここで真矢さんスイーツのはじまりに出会います。スイーツ、つまりお菓子のはじまりは、ある果物に関係しているのだとか。それは中国から伝わったミカンの原種である「橘」。昔は甘いこの果物を「菓子」と呼んだとか。
今回、大山さんはそんな日本のスイーツのはじまりに思いを馳せ新作を完成させました。ミカンの皮を乾燥させた陳皮(ちんぴ)と地元の黒豆をふんだんに使った焼き菓子です。古代をイメージし「あすかかぜ」と名づけられました。「あすかかぜ」は今月からメニューに加わっており、実際に食べることができます。

大仏のはじまり

今や日本中にある大仏。そのはじまりは奈良、といっても東大寺の大仏ではありません。大仏のはじまりは明日香の地にあったのです。飛鳥寺は今から1400年前に作られた日本最古の寺です。
そこに作られたのが、日本最古の大仏様「飛鳥大仏」、東大寺の大仏よりも150年古い大仏さまです。そのお姿には大きな特徴が。
よく見るとお顔の一部と右手の指3本に、つなぎ目のようなものが!実は、都が平城京に移り、明日香が廃れると共にこの寺も廃れ、やがて雨ざらしに…。時は流れ、江戸時代、畑の中で見つかったのが、大仏さまのお顔の一部と指3本。これでは可愛そうと、修復されたのです。様々な人の思いが込められ修復された飛鳥大仏…味わい深いお顔をしております。

ガラスのはじまり

明日香の地は、日本ではじめてガラス作りの工房が作られた場所でもあります。 真矢さんは、当時の方法でガラス作りを体験できると聞き、明日香民俗資料館へ向いました。ここで古代ガラスを復活させたのが、奈良を代表する陶芸家、脇田宗孝さんです。早速真矢さん、ガラス玉作りに挑戦です。





ガラス玉作りは2人1組の作業です。溶かしたガラスを棒に巻き取り、窪みをつけて2つ合せます。そうすることで、中に空洞が出来るのです。これを溶かしながら伸ばし、筒状になったものを小さく輪切りにします。最後にカットした部分の角をとるため、再び熱を加え完成。 とっても美しい瑠璃色のガラス玉。真矢さんも思わず見とれてしまいました。

ラブソングのはじまり

美しき奈良の都。そこにはもちろん男と女のラブロマンスもありました。平城宮跡の朱雀門は、男女が愛を語らう出会いの場でもあったのです。当時の人々は歌をおくり、思いを伝えました。そんな「恋の歌」を集めたのが「万葉集」。いわば、ラブソングのはじまりです。
「こいといえば うすきことなり しかれども あれはわすれじ こいはしぬとも」 西村さんが詠む万葉集の恋の歌に、真矢さんの現代語訳が続きます。「口に出せば 恋なんて薄っぺらい言葉さ でも俺は忘れない お前のことを 絶対に!たとえ恋に狂って死んじまっても」


このポップな現代語訳は、万葉集を研究している奈良大学文学部教授の上野誠さんによるもの。「今の若い子にとって訳そのものが古くなっちゃったんじゃないかと。学問的なところは踏まえるんだけど、ちょっと踏み込んで訳したらどうなるかっていうのを試したんですよ。」と上野さん。この情熱的な歌を、振付師でダンサーでもある桜木涼介さんに、踊りで表現して頂きました。幻想的な万葉の世界が広がります。



1300年目の都、奈良で、はじまりを探す旅。それは発見と驚き、そして感動にあふれたものでした。さあ、皆さんも是非、日本人の心のふるさと、「はじまりの奈良」を旅してみませんか?







  1. フォトギャラリー 奈良の情景をお楽しみください。

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