DIARY
ダイアリー
D日記 #112 ノースポートハーバー/アメリカ
ニューヨーカーの気軽なリゾート地として、夏は多くの人で賑わうロングアイランド。
その北側に位置し、マンハッタンから1時間ほどのドライブで行ける田舎町ノースポートに、マリーナに面したブリュワリーがあるという情報をみつけたお酒好きな私は、早速アポをとり午前10時の打ち合わせへと向かいました。
ノースポート近くの駅まではロングアイランド鉄道でマンハッタンから1時間ほどの列車の旅を楽しみ、そこからアメリカでは一般的となった配車サービスアプリを使ったのですが、迎えにきた地元住民のドライバーさんは朝10時にブリュワリーへと向かう女ひとり客に好奇心を隠せません。軽く事情を説明すると、「いいチョイスだね。とても人気のブリュワリーだから、よくお客さんを乗せていくよ」との事。その一言に、私の期待はいやおうなく高まります。
ブリュワリーで迎えてくれた34歳の若き醸造責任者のクリスチャン・カーさんは、子供のころ家族とアメリカにやってきたドミニカ共和国からの移民だそう。家計を助けるためティーンエイジャーのころから飲食業界で働き、レストランやバーでビール作りの奥深さに触れて、この仕事でキャリアを積むことを決意したのだといいます。
3年前からはこのハーバーヘッドブリューイングの醸造責任者を任されるまでとなったクリスチャンさん。「小さな醸造所の良いところは、色々なアイデアを気軽に試せることです」という彼は、マリーナの夕日の色をビールで表現しようと考えるなど、とてもクリエイティブなアイデアマン。この番組の取材も創作の活力へと変え、日本にヒントを得たお米と、ノースポートの地元焙煎所のコーヒーを使った、「近くて遠いが出会う」をコンセプトとしたビールの試作を発案してくれたのです。
3週間後に完成したクリスチャンさんの新作ビール「MINATO -JIKAN」は、飲み心地良くも味わい深い冬のポータービールとしてメニューに加えられ、早速注文したお客さんたちは皆ほんのり赤くなった笑顔をほころばせていました。