瀬古利彦が斬る
全日本大学駅伝展望
普通に力を出せば、東海大が強い。出雲駅伝では、伊達秀晃(4年)、佐藤悠基(3年)の二枚看板以外の選手も安定した力を見せていた。順当に行けば東海大が優位と思う。しかし、駒大の2年生も伸びてきている。大八木監督の手腕もふまえると、2強と考えられるのでは。距離が長いほど強くなる伝統を持つ駒大に利もあるが、今の東海大はエース2人がそれぞれ2人分くらいの力がある。佐藤が2区、伊達が最終区と私は予想するが、多少負けていても伊達に最後を任せれば大丈夫と、他選手が安心感を持って走れるのは強みだ。
日大、日体大、順大も優勝候補の一角だ。しかしこの3校が勝つには、それぞれが有利な展開に持ち込むのが条件で、他校の出来に左右される。絶対的な強さでは、東海大が一枚上と見る。
日体大は北村聡(4年)中心に頑張っているチームだが、もう１〜2枚、駒がほしい気がする。出雲で1年生が活躍したが、基本的に大学駅伝は3〜4年生の安定するチームが強い。その意味でも東海大は有利だ。順大は箱根優勝以後主力が多く卒業したので、昨年よりは戦力が落ちた感がある。
今回は2区に、素晴しい選手が集まるのではないだろうか。順大･松岡佑起(4年)､日体大･北村聡(4年)､中大･上野裕一郎(4年)､早大･竹澤健介(3年)､東海大･佐藤悠基(3年)､城西大･高橋優太(2年)､日大･ダニエル(2年)などのメンバーが、もしこのエース区間に集まったら、非常に楽しみな展開だ。もちろん各校戦略があり、エースをどこに持ってくるかも見どころだが、全日本大学駅伝の2区でがっぷりよつの学生最強決定バトルも見てみたい。
山梨学大･モグス(3年)は、最終区と予想している。昨年、驚異的な区間記録を作ったごぼう抜きが、今年も見られるか、これも大きな楽しみだ。
瀬古利彦プロフィール
１９５６年三重県出身
財団法人日本オリンピック委員会 理事・財団法人日本陸上競技連盟 理事
言わずと知れた「伝説のマラソンランナー」瀬古利彦氏。
１９８０年代、日本、そして、世界のマラソン界をリード。マラソン全戦績１５戦１０勝、福岡、東京はもちろん、ボストン、ロンドン、シカゴ…世界のビッグレースを総ナメにした。その勝率と共に切れ味鋭いスパートで一時代を築いた「マラソン界のカリスマ」。
早稲田大学時代は、エースとして箱根駅伝で大活躍、まさに大学駅伝から世界へと羽ばたいていったパイオニアである。低迷する男子長距離・マラソンを憂う瀬古氏が、今、「復活」のカギとして最も期待しているのが学生長距離界だ。そんな期待も込めつつ、瀬古氏ならではの厳しくも優しい視点と切り口で、レースを解説。