瀬古利彦が斬る
関東予選会を斬る
1位通過の城西大と2位通過の大東大は、どちらも力のあるチームで、これから伸びていくチーム。順当な予選突破だろう。特に去年、本大会初出場を果たした平塚監督率いる城西大は、その経験が全員に生き、自信を持って走っている。特に、第4組で他を引き離すスパートを見せたエース高橋優太（2年）は、インカレ5000mで3位に入った学生界でもトップクラスの選手。1着であたりまえということだ。
3位の拓大はよく頑張った。最近箱根の予選などで「あと数秒で・・・」という悔しい思いをしていたし、第4組で6位から逆転したのは素晴しかった。
4位の早大は去年予選会10位と情けない結果だったが、今年は大丈夫だと思っていた。次週の日本選手権で世界陸上競技選手権を目指すエース竹澤健介（3年）抜きで4大会ぶりの本大会への出場を決めた。去年東海大がエース抜きの布陣で予選落ちの憂き目にあったが、今年の早大は他選手も力をつけてきたということだろう。
5位の中央学大はエース木原真佐人（3年）がよかった。こういうトップレベルの選手が本大会に出ないと面白くない。力のある選手が伊勢路で競いあうところを見たいので、この予選通過はよかったと思う。
落ちた中で残念だったのは、東洋大。箱根などで力をつけてきていたのだが、今日は精彩を欠いた。それ以外は、比較的順当ではないだろうか？
天候的にも湿度も涼しく、番狂わせがおきにくい状況だったと思う。若い城西大がトップ通過というのはうれしく思う。
本大会でシード校を打ち負かす力があるのは、早大だろう。アンカーで一気に逆転を狙えるエースがいるのは大きい。
本大会見据えたシード校の印象だが、東海大、日大、順大、日体大など相変わらず強い。東海大には佐藤悠基（3年）と伊達秀晃（4年）の2枚看板がいるし、箱根駅伝優勝の順大も4年生が抜けたが、インカレでも松岡祐起（4年）が2位に入るなど力を見せ層は厚い。昨年優勝を果たした駒大には安定感がある。
今年は今のところ、1年生に飛び抜けた選手は聞かない。1年生によって順位がガラッと変わる可能性は少ないだろう。
全日本大学駅伝は距離の長い箱根とは戦法が異なり、スピードランナーがいることが大事になってくる。そういった意味でも竹澤健介（早大3年）、佐藤悠基（東海大3年）、高橋優太（城西大2年）、上野裕一郎（中大4年）、北村聡（日体大4年）、伊達秀晃（東海大4年）などのエースを擁するチームは有利か。これから日本を代表するような選手がたくさん出場するので、本大会が本当に楽しみだ。
瀬古利彦プロフィール
１９５６年三重県出身
財団法人日本オリンピック委員会 理事・財団法人日本陸上競技連盟 理事
言わずと知れた「伝説のマラソンランナー」瀬古利彦氏。
１９８０年代、日本、そして、世界のマラソン界をリード。マラソン全戦績１５戦１０勝、福岡、東京はもちろん、ボストン、ロンドン、シカゴ…世界のビッグレースを総ナメにした。その勝率と共に切れ味鋭いスパートで一時代を築いた「マラソン界のカリスマ」。
早稲田大学時代は、エースとして箱根駅伝で大活躍、まさに大学駅伝から世界へと羽ばたいていったパイオニアである。低迷する男子長距離・マラソンを憂う瀬古氏が、今、「復活」のカギとして最も期待しているのが学生長距離界だ。そんな期待も込めつつ、瀬古氏ならではの厳しくも優しい視点と切り口で、レースを解説。