<ラジオとテレビの違い>

川島淳
ラジオとテレビの違いって何だと思う?

富川悠太
見てても分かることなんじゃないですか?テレビの方が、裏の情報が多く入れられることかな。

川島淳
実際に実況をしたことがないんで、してないから分からないって言うのもあると思うけど、ラジオとテレビってね、根本的に実況が違う。テレビっていうのは、実況はいらない。

富川悠太
やっぱり、この選手はどういう選手だとか、そういう見えない部分を教えて欲しい。

進藤潤耶
あーーー、言ったね。俺それ(笑)。
僕、テレビの実況見て思うのは、たまに「ちょっとしゃべり過ぎだよ」「ちょっとそのまま見せてくれ」っていう、所はありますね。ラジオだと、黙ってられると、「今何起こってんだよ」って不安になりますけれど。テレビだとそういことはない・・・

川島淳
難しいんだけど、全部言ってることはあたってんだ。俺もそうだった。普通の中継は実況に解説がつくよね。テレビの中継のコンセプトは座談なわけよ。

目の前の物事について、「あっイチローですねー」「この時期で4割って事は94年のあの時でも68試合までしか4割を保てなかったのに実はもう75試合超えてるんですよね。どうですか、今年のイチローは」「いや、今年のイチローは、去年よりも、背筋がのびてしかも、結婚したと言うファクターもあっていいんじゃないですか」と、座談なわけですよ。

ただ、今回高校野球を富川の場合は一人で実況しなくちゃいけない。で、一人でしゃべるって言うのは、非常に難しいわけ。なぜ、むずかしいのかと言うと、ある程度主観をしっかりとしないと、しゃべれないわけ。このプレーはミスなのか、それとも、こういう要因があって、ミスではなくて偶然の産物なのか、自分で判断しなくてはならないわけ。普通の中継だと解説がフォローしてくれるわけ。だけど一人しゃべりだとそれを全て自分で評価しなければならない。しかも、物語も自分で作って行かなければならない。準決勝でしょ?決勝に言った時のコメントをもう考えとかなきゃ。頭ん中で。例えばホームラン打つ、ガーーーン!打ったーレフトスタンドへーーー!この白球の先に82回の夏の甲子園は見えたのかー!レフトスタンドホームラーーーーン!

進藤潤耶
あちー(笑)。

富川悠太
でも、高校野球だから、それくらい行かなきゃ。選手たちの興奮は言葉では言い表せないくらいなんですからね。

川島淳
何をしゃべろうかと常に思ってないと・・・・。今の俺の悩むところは、こうしゃべろうとか用意し過ぎて、目の前の所を吹っ飛ばして、自分の物語にはめたがってる。それは逆に良くない。本当は資料を作って、試合当日はすべてを忘れます。目の前の事に集中する。・・・・・・・そうできればいいけれども、まあ、最初はできないからね。だから最初はおもいっきり失敗してもいいから、泣いている選手と同じようになきながら実況してもいいし、それが良いか、悪いかは別にしてそれくらい感情移入して、どうストレートに伝えられるかだよね。

富川悠太
難しいと思うのは、高校野球を見ている人って必ずどっちかを応援しているじゃないですか。そうなると、自分がどっちかっていうわけにはいかないですよね。

川島淳
だから、両方しゃべればいい。優勝したのはなんとか高校。しかし、敗れたとはいえ、なんとか高校の選手達も夏を目指して頑張りました。その気持ちはわかるでしょ?だって、あと2回勝てば甲子園なんだよ?・・・1発勝負だからね。当然のことながら、実況だから。それまでにどう思い入れを作るか。1発勝負。

富川悠太
ドンドン不安になってきた。
 
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