<実況>

富川悠太
それにしても実況難しいそうですよね。

川島淳
うん、高校野球の実況はね、プロ野球を担当することに比べると感情移入しやすいぶんだけ、素直に実況できる。あと、目的が単純明快。一つの頂点に向かってやってる。ただそれだけだから。

富川悠太
そうです、そうです。実際やっている立場からしてもその通りですね。

川島淳
満塁でトンネルして、サヨナラで負ける。その子は一生引きずるからね。だけど、取材をしてみると、実は、こういう裏話があったんだよとか、はじめてわかることがあるんだ。

ホームラン打って、打って勝って・・・でも泣いてる場合もある。実は前日お母さんが亡くなっていたんだ。実際甲子園であったんだよ。熱闘甲子園に行くと、そんなことが本当にあるんだ。

松坂大輔。準々決勝、延長17回、250球。そして、準決勝は明徳義塾戦、6−0からのとんでもないような大逆転劇になった。当初投げる予定ではなかった松坂はレフトを守っていたが、途中からブルペンにはいって、投球練習をはじめる。その時びりっと肘からテーピングを剥がずシーンが涙を誘った。そして、決勝戦。「決勝のノーヒットノーラン、マンガでもあんな事ないですよ!」(松坂談)。

そういうことが実際目の前で起きちゃうからね。実際俺はバックネット裏で見ていて、3回くらいから、みんなで「これノーヒットノーランになるよ」っていっていたんですよ。それは、居た人しかわからない。ずーっと大会を3週間みてると、分かってくる。だから、甲子園にいくとホントーにいい経験をするとおもうよ。

富川悠太
去年はリポートで手一杯で、そんな選手の心の機微までは全然わからなかったです。入社一年目は野球中継の中の「サンサンリポート」で甲子園の応援スタンドのリポートだったんですけれど、自分がその高校の一員になったような感じで、とにかく興奮しました。大逆転の時など、応援団員と抱き合ってしまいましたよ。おとこでした・・・残念。

川島淳
でもね、例えば、ずーっと長く行っている学校と、例えば東亜学園。東亜学園は、決勝で敗れたんだけれどね、我々はずっと取材に行っているでしょう、当時のマネージャーは、ずーっと何度も予選が始まる前から、我々が顔出しているの分かっているから、決勝で負けて、俺の顔見た瞬間・・・・ボロボロ泣いて・・・・

進藤潤耶
ちょっとこう抱きしめてあげたりとか。

川島淳
裏でね。ハハハハ

富川悠太
息子がいるのに(笑)。

僕は、立場がまだ実況する立場になりきれないんですよ。高校野球の助監督を4年もやっていたせいか、試合を実況しながら、「どうしてここでここへなげるんだ、とか、どうしてこんな作戦をするんだ!とか、実戦的な戦略に目がいってしまうんですよ。何だか、見ていてはがゆくなってしまうんですね。困ったもんですね・・・・・。ところが自分の事となるとからっきし駄目。今自分が悩んでるのは実況の調子ですね。今のところラジオ調で練習してるんですけど、テレビ用にしゃべったらいいのか、球を一つ一つ追ってたらいいのか、その初歩的段階で悩んでいますね。

川島淳
それは、最初に誰でも悩むことなんだよね。最初の基本的な練習はやっぱり、先輩達にも言われてるように、ラジオ調でやってテレビに移項する。

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