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5月13日 瀬古利彦さんとイカンガーの難民キャンプ駅伝

タンザニアにある難民キャンプで瀬古利彦さんとイカンガーさんが駅伝を行うことを聞いて、同行して取材をしてきました。その模様は5月1日に報道ステーションで特集として放送しましたが、予想以上の反響に驚きました。


ホテルルワンダという映画がありました。ツチ族とフツ族の争いを中心に描いたものですが、ブルンジでも同様に1993年ごろからツチ族とフツ族の争いが激化して、数十万人が虐殺されています。そこから隣国タンザニアに逃れてきた人たちが住んでいるのが、今回取材に行ったムタビラ難民キャンプです。

一昨年ネパールにあるブータン難民たちが暮らすダマクを訪れて以来、私にとって難民キャンプでの取材は二度目ですが、難民たちが抱える問題はどこのキャンプも似たものがあるのを強く感じました。最低限の衣食住は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や国連世界食料計画(WFP)が面倒を見てくれます。しかし、キャンプの外に出ることを禁じられたり、職業を持てなかったり、未来への展望が描けないなど、本来人間が持っているべきものがかなり制限されていることも事実です。「かごの鳥状態」と嘆く人々もいます。


ムタビラ難民キャンプはできてから既に16年がたち、このキャンプで生まれた子供たちが人口の60%をしめているといいます。こうした環境で育つ子供たちに、今回の駅伝は大きな力を持っていたようです。




選ばれて走った子供たちの晴れやかな表情は見ているものを思わず微笑ませずにはおきません。
今回は選ばれなかったけれど、チャンスがあれば自分もあんなふうに走れるかもしれないと夢を持った子供たちの眼も新鮮でした。
そして、それをうれしそうに見つめる大人たち。

今回のプロジェクトは国連難民高等弁務官事務所と早稲田大学が共同で行いましたが、現地でこまごまとした仕事を手伝ってくれたのはライト・トゥ・プレイ (Right To Play)というNGOの皆さんです。スポーツが持つ力を信じている人々です。


子供たちは今回の駅伝で、初めてスポーツウェアーをあてがわれ、初めてランニング・シューズをはかせてもらい、みんなに世話をされてイベントに参加していました。このような機会は、子供たちにとってコミュニティーの一員として扱われていることを実感できる数少ないチャンスです。一人ではない。仲間がいる。みんながあなたのことを気にしているんだよという強いメッセージが子供たちに送られるのです。

タンザニアにある難民キャンプだけでなく、今私たちが住む日本の中でも子供たちがコミュニティーの一員であることを実感できる機会がどんどん減っているように思います。
スポーツはたくさんの力を持っています。スポーツの持つ力をもっと利用しない手はない。今回の取材でそう教えられたように思います。

それにしても30年前に瀬古担当記者だった私にとって、時間を経てこのような取材に携われ、瀬古さんの熱い思いに触れられたことは取材者冥利に尽きると思っています。


5月1日に放送した番組はこちらからご覧になれます。

また、駅伝のミッションの詳細についてお知りになりたい方はこちらをご覧ください。
   
 
    
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