いかがですか?この写真。 |
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私と一緒に写っているのは、冨成房子さん。
水泳で昨年年齢別50m平泳ぎで世界新記録をマークされたんですよ。
おいくつだと思いますか?
聞いてびっくり。
今年90歳になられるんです。
10歳から海で泳ぎ始め、昭和10年には古式泳法の師範免許を女性で初めて取得されました。その後の長い人生で、冨成さんにとって泳ぐことは人生の楽しみとなっていきました。大分の灯台の元、海でゆったりと泳いできた冨成さんがプールで初めて泳いだの55歳のときだそうです。
「それまで地元にプールがなかったもんですからねえ。海で泳ぐのが当たり前だったんですよ。」
プールで泳ぎ始めたのが55歳ということは・・・35年前・・・1973年、ミュンヘンオリンピックの翌年ということになりますね。そのころから全国に徐々にスイミングスクールなどが作られるようになっていったのかもしれません。今では当たり前のように「水泳 イコール プールで泳ぐこと」と思っていますが、それはごく最近のことなんだなと改めて感じさせられました。
冨成さんはその後ベテランスイマーが出場するマスターズ大会などに参加して、優勝の栄冠も手にするようになりましたが、年齢を重ねるに従ってさらに驚くべき活躍をされるようになったのです。
なんと年齢別での日本記録更新は30回。
さらに85歳から89歳の部と、90歳から94歳の部で世界記録を2回も記録されているのです。 |
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にこやかな笑顔の奥に、スポーツを楽しみながら果敢に記録に挑戦していくファイトを秘めていらっしゃるんですね。
とても楽しげにお話をされるので、気がついたらすっかり意気投合してしまいました。ご一緒にいる間ずっと思っていたことは「ああ、こんな風に歳を重ねたい!!」でした。 |
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冨成さんは、今回スポーツグランプリという賞を受賞されました。この賞は長年にわたるスポーツ実践者で、現在も活動を継続し、中高年齢層の顕著な記録や実績を挙げ、国内外において高い評価を得た個人又はグループに与えられるもので今回で3回目を迎えます。表彰式は国民体育大会が行われた大分で行われ、天皇皇后両殿下との懇談の場も設けられました。今回、冨成さんも含めて表彰されたのは6名の方でした。左からご紹介いたしましょう。
表彰式の日も宮崎で行われていたマスターズ陸上から直接駆けつけてくださった83歳の陸上競技の山崎英也さん。マスターズ世界陸上で銀メダルを獲得しているスプリンターです。
「一番楽しいのはボールを持って走っているとき」という90歳のラブビーフットボールを今でもなさっている大西五郎さん。息子さんも、お孫さんもラガーマンだそうです。
83歳の岡田保雄さんは今でも朝稽古を欠かさないという剣道範士の方です。「戦後人間らしい生き方ができたのは剣道のおかげ」と剣道が支えてくれた人生を語ってくれました。
このスポーツグランプリの発案者でもあり、表彰状を一人ひとりに手渡してご満悦の表情を浮かべている日本体育協会の森喜朗会長。その向かって右隣が小林五郎さん。小学生のときに長崎の海で覚えた水泳でこの10年間年齢別世界記録を次々にたたき出している92歳です。小林さんも温水プールで泳ぐようになったのは80歳になってからとのことで、「一年中毎日泳げるのは本当にうれしいね」と語っていらっしゃいました。恵まれすぎている私たちの環境をまたまた思い知った瞬間でした。
冨成さんのお隣、一番端に背筋をぴんと伸ばして立っていらっしゃるのは今年82歳になられる緒方仁司さんです。剣道実技で最も難関といわれる8段審査に80歳で合格された方です。8段審査は合格率1.2%という超難関で、緒方さんは25年間にわたり30回もこの審査に挑戦してこられたそうです。
自分の体と心が喜ぶ楽しみをしっかり持っている人たちの顔は輝いています。長寿社会といわれる日本。これからどうやって生きていくか、自らの身を振り返ってしまった一日でした。 |