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2月13日 一輪車に賭ける青春 〜安藤勇太 2006夏〜
(報道ステーション・プレイバック)

この二年間、安藤さんの悩みはスタートでした。
どうしてもぶれてしまうのです。



なぜスタート時のブレが起こるのか、
スポーツ科学部の学生として、運動力学の面からも一輪車を研究して、授業で発表してきました。

また、ぶれを少なくするために、トレーナーのアドバイスのもと、
股関節周りの筋肉や腹筋を徹底的に鍛えてきました。




土黒秀則トレーナー:「走るの見せてもらったんですけれど、びっくりしました。
すごいスピードだし。本人が気づいていない使っていない筋肉もつかえるようにすれば、もっともっとレベルアップできると思います。」

安藤さんの生活は一輪車競技を中心に回っているのです。



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7月3日に突如、サッカーの中田英寿選手が突然の引退宣言をした翌日、
その引退宣言を安藤選手はじっと見つめていました。

安藤:「なんか、すごい胸打たれるものが…」

プロになって以来、
サッカー好きですかと問われても、好きだよと素直に言えない自分がいた。
子供の頃に持っていたボールに対する瑞々しい感情は失われていった。


この部分に安藤さんは甚く共感したようです。

安藤:「自分の責任だとか、そういったものを考えると
やっぱりここに書いてあるとおり、
自分が初めてであった一輪車、楽しく仲間と一緒に乗って上へ上へと目指してがんばっていた、
そのころと比べると違うな、明確にそれは感じますね。」

一輪車競技を認知してもらい、社会的スポーツとしての価値を高めたい、
そんなトップ選手としての責任感が、楽しさに勝るようになってきたのです。

同時に、「トップアスリートとしての試練」とも言うべき、
身体の故障もかかえ始めていました。


 


股関節・変形性・関節症
ひどいときには歩いているときでも、左側の股関節の痛みがでてくるのです。

練習後の治療は欠かすことができません。

楽しむ一輪車からスポーツとしての一輪車へ、
自らの肉体が、その壁を乗り越えるための試練に直面していました。


 


トップアスリートとして、今年スイスで行われる国際大会では、
100mだけではなく、1500mでの優勝も狙っていました。

宮嶋:「1500mも面白そうですね。」
安藤:「限界に近いところの勝負なので、弱い自分がみえたりだとか、
逆にそれに勝てる自分だとか自分の心が見える競技かなと思っています。」



国際一輪車競技大会(ランゲンタール)
700C 1500mレース


スイス・ランゲンタール、いよいよ国際競技会での1500m。
安藤選手の今シーズンのトレーニングがすべて試されるときがやってきたのです。

6人が参加して行われたレースはスタートから安藤選手が飛び出します。
2周目からは同じ日本の泉田選手との一騎打ちの様相を呈してきます。
3周目からは、泉田、安藤の二人で、抜きつ抜かれつのデッドヒートを展開。
泉田が先頭に立てば、安藤が抜きかえします。


 


そしてラスト200m。
バランスを崩しながらも必死でキープ。
鬼気迫る表情で、安藤選手ゴール。

<T:優勝 安藤勇太
   2位 泉田     >
 
激戦の末に優勝をもぎとりました。
それにしても見ごたえのあるレースでした。





宮嶋:「一輪車のレースって、ぶっちぎりで走っていてもゴール直前で転倒したり、かなりエキサイティングだなあと思ったんですけれど」
安藤:「陸上でこけることってほとんどないけれど、一輪車ってそれがあって、ダントツで走っていても番狂わせもあるし、見ているほうはその部分が面白い。」
宮嶋:「どういうときにぶれたりおっこっちゃったりするんですか」
安藤:「変な余分なことを考えてしまったり、欲を出したりとか、
それが筋肉の少しの緩みが一輪車に伝わってしまって
それが落車につながるんですね。」


 


一輪車レースの面白さを私たちにしっかりと教えてくれた安藤さん。
地元のテレビ局の取材を受けたり、サインをねだられたりと、人気も上々です。

安藤さんはこれからどんなことをしていきたいと思っているのでしょう。

安藤:「一輪車をやってきたから得てきた恩恵がたくさんあって、
いろんな人に伝えたいし、これからやっていく人には味わってほしいし、
自分が味わった以上にもっともっとでかくしていければ、
もっと競技の魅力も増していくだろうし。」

一輪車を子供の遊びでおわらせたくない。
大人になっても一輪車を楽しめるような環境を作っていきたい。
安藤さんの夢は広がっていきます。




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【編集後記】
一輪車の国際大会は以前東京の国立競技場でも行われました。
東京の大会はしっかり組織化されて、時間どおりに運営されたそうです。
今回大会が開かれたランゲンタールは牛舎の匂いがどこからともなく漂ってくるスイスの田舎町です。
周りは緑の木々に囲まれて時間もどこかゆったりと過ぎていきます。
その会場の雰囲気そのまま、レースの時間は遅れることは当たり前で、
ボランティアの人たちもガムをかみながらのんびりとジャッジしています。
取材する立場としては今何が行われているのかもよくわからず、大変なことの連続でしたが、お客さんや選手たちやサポーターを見ているとこれは素敵だなと思えることたくさんありました。
寝そべりながらのんびりレースを鑑賞したり、お弁当を広げたり、
自然の中で好きなことをしている人たちが放つ開放感に満ち溢れていたのです。
田舎の運動会のような雰囲気で行われる国際大会が日本でも開けるようになったら、
それはとっても魅力的だと思うのです。
楽しいスポーツの大会はコンクリートの城砦のような立派な競技場でタイムスケジュールどおり進行される必要はないと思いませんか。
でも、時間どおりに動く習慣をつけられている日本人にはそのほうが難しいのかもしれませんね。
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