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<女子選手のジェラシーって・・・>
女子選手は指導が難しいと言う男性指導者のほとんどは、女子選手同士のジェラシーについて言及します。このチームではジェラシーは存在しないのでしょうか。
宮嶋「普通女子チームは凄く難しいというのだけれど、そういう妙な雰囲気とか、ジェラシーはありますか。」
渋井「うちは監督奪い合いはないよね。うちはどうぞどうぞだよね。(笑)」
土佐「どうぞどうぞ(笑)持っていってください」
宮嶋「お互いはない?なんであの人こんなに走れるのかしらとか・・?」
渋井「だから練習しろって!」
土佐「速い人は速いしねえ仕方ないですよ。」
宮嶋「私はあの人より速くなるんだと隠れて腹筋したりとか、」
渋井「私か?(笑)」
土佐「隠れてやってます。嘘嘘!」
宮嶋「人より強くというのとは違うんでしょうね。」
渋井「人より自分に負けたくないよね。」
土佐「自分との闘いですよ。多分。かっこいい!(笑)」
お互いがライバルであっても、結局は自分自身との闘い。それがマラソンの強さにつながるのでしょう。自分で練習の必要を感じ、自分で追い込んで、自分で喜びを味わう。
そして、その環境をそっと整えるのが鈴木監督の心配りなのです。
個性を大切にしていく鈴木監督は、決して選手をひとつの枠にはめようとはしません。
最後に超管理術をみせる鈴木監督のインタビューをご紹介しましょう。
宮嶋「走法などで、特に鈴木監督から注意される点はありますか。」
鈴木監督「長距離は自分が走っている走り方が1番楽な走り方で走っているはずなんで、その個人個人の基本的な部分はできるだけ崩さないように。ただこの部分だけ直すともうちょっと記録が伸びるかなという注意だけはする。だから全部な直そうとか、渋井がいいからといって全部渋井のようにはしないです。」
宮嶋「それにしても、性格的にも渋井さんみたいなタイプはこれまでマラソン界にいなかったんじゃないですか。」
鈴木監督「本当はいたんじゃないですか。でも指導の中で、固定した指導というか、個性じゃなくて、チームとして強くしていくという監督さんが多かったんじゃないですかね。」
宮嶋「選手の個性よりもチームを優先したと言うことですか。」
鈴木監督「やっぱりチームのカラーで全員が動くということがあったんじゃないですか。
個人よりも全体が優先されることが多かったんだと思いますよ。自分のところは個性それぞれで生かしながら、練習をやってますんで。」
宮嶋「それにしても、ここまで二人が育ってくると、鈴木監督自身は自信はおありになりましたか。」
鈴木監督「ないない。自分の力がどれだけあるかわからないのを引き出していくのが指導なので、多分まだ力あると思いますよ。わからないですからね。練習の中で力を築いていくんですよ。だから今の記録は最高でもないし、もっと記録出せるかもしれないし。そのためにどういう練習をするか、本人たちがどういう気持ちで練習するかですよ。」
宮嶋「どうやってモチベーションを与えていらっしゃるんですか。」
鈴木監督「いつも挑戦なんですよ。練習一回一回、本数をしっかり走っていくことが大切です。そこから、新しいものが生まれてくる。無謀はだめですけれど、挑戦は必要だと思います。それは本人たちもわかってますね。だから、自分が言う設定タイムよりも必ずいいタイムで入ってきますから。それが強さですね。それは土佐もそうですし、土佐から始まってきていますね。そしてそのことを渋井もわかって、がんばってるんじゃないですか。」
監督が提示する設定タイムを上回るタイムで練習を常に行う渋井選手と土佐選手。
そこには自覚、自発、自主が存在していたのです。
日本の選手は自立していないと長い間言われ続けてきました。ようやく女子スポーツ界にも素敵な魅力的な選手たちが現れ始めたようです。
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