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■ここまで13年間岡崎選手の指導をしてきた長田照正監督は、岡崎選手の選手続行決断をどう見ているのでしょうか。
宮嶋:岡崎さんもとうとう長老になってしまいましたね。
長田:長老もいいとこ。気持ちはかわらないけれどね。いいねああいう性格ね。ああなりたいね。
宮嶋:監督がご覧になっている中でも最年長ですよね。
長田:そうね、橋本よりも上だからね。
宮嶋:客観的に体力の衰えとかはないですか。
長田:そう、大きくはないんだけれどね、手術したって言うのが頭に残っているから腰まわりのところがどうにもならないかなって言うのがあるね。何でも一生懸命やるタイプだから、抜くこと知らないから、その分疲労もたまるだろうけれどね。だからここまでできるんだよね。30歳近くなって、年だからって周りの目気にしながらいろいろ歳相応のことを考えながらっていうのが大半なんだと思うけれど、岡崎はそれが少ない。
宮嶋:まさかここまでつづけるとは思わなかったんじゃないですか?
長田:長野が終わったときにね、普通だったらやれって言っても、本人が止めたいっていうのが普通だよね。やめたってほかにないしさ、ほかに何にもないじゃない。
宮嶋:朋ちゃんがここまで続けられたファクターは何ですか。
長田:そういわれてもね・・・スケートやっていれば収入がいいとか、そういうのはないからね・・・
宮嶋:ソルトレークで感じるものがあったみたいですね。
長田:オリンピックって言うか、ソルトに入ってからだよね、入ってからようやく俺が言っていることと本人がしようとしていることがね、徐々に接点が出てきたんだよね。あれ、今だから言うけれど、一週間もうちょっと、あったら,もう少し面白かったかなって言うのがあったね。
宮嶋:メダル争いに食い込んでいたかもしれないと・・・
長田:それは何といえないけれど、ソルト行って最初のトライアルでも、38.2とかだったでしょう。そのトライアルがおれから見るとチェックするのによかったんだね。明確に見えてきたんだね。本番のレースまで残された一週間、徹底的にやらせて、100メートル入って、バックストレッチの第二カーブの入り口まで、姿勢だね、第一カーブを抜けてからのストロークと足首の角度とか、その辺だよね、そのままの状態で入って、ぐっといく、それをずっとやっていった。
怖いんですよ、がーんって沈んでいくと、第二カーブ、アウトインで小さなカーブを回らなくちゃならないときなんか、ほんとに怖い。みんな無意識の内に力を抜くわけだよ、どの選手も、抜くって言うか、あわせに行く。日本選手はみんなどの選手も、合わせに行っちゃう。そうすると、ひざの動きを小さくしながら無意識のうちに無難に足をうごかす。それを、「練習なんだから転べよ、転べよ!」って言っていたら、そのうち、一回か二回引っかかるようになってきたんだね。本人も動きはひざが深い分動きは、動作は遅いんですよね、でも、出口ですごくいい感じになってきて、「それだ、何だ,おまえ、何を今ごろわかってきたんだ」と・・・
あれで一皮むけたかな。後一週間ぐらいオリンピックが遅かったら、コンマ2ぐらい速くなってたかな。37.5がターゲットね、おれから見たら間違いなくクリアーしたよなって感じだな。そんなこともあって、本人は、現在に至っているんじゃないかな。
宮嶋:朋ちゃんは:面白いことを見つけることが上手ですよね。
長田:うん、なんかね、今まで面白いことあまりなかったんじゃないのかな。(笑い)
割と一度にできる器用な子じゃないからね。俺があれやこれや品変え、靴をいたずらしながらやるんだけれど、ついてこれないんだよね。だけども、それをある部分を止めて時間かけてってやるとクリアーできるんだわ。そんなんでスケートが面白いって思えるようになったんだろうね。みんなは、若いときは表面的に面白いとか、楽しいとか言っているけれど、傍からみていると負け惜しみのところがあるよね。岡崎は今、本当に面白いっていう感じになってきたんじゃないの。来年全シーズンが面白いって言うんじゃなくて、自分が目指すところが面白いっていう感じだよね。ソルトレークとカルガリーの高速リンクがあるからね。そういう部分で、わかってきたんじゃないのかな。
宮嶋:スケートの本当の面白さに気づき始めたということですか。
長田:ソルトレークをきっかけに何か別の楽しさが出てきていますよ。
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