前の記事を読む 次の記事を読む  
トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー
 
 

 
6月12日 水中のプリマ。シンクロ・ヨーロッパカップから。

とうとうロシアがその正体をあらわしました!

シドニー五輪のシンクロナイズドスイミング、チームとデュエットで二つの金メダルを獲得した
ロシアが、オリンピック後、初めてその姿をあらわしたのです。

イタリアを長靴にたとえて、そのアキレス腱あたりにあるバーリという町で行われたシンクロのヨーロッパカップ。
5月31日から6月3日まで、いまどき珍しい?屋外で大会は行われました。
炎天下、雲ひとつない青空の下、バカンスだったら、どれほど素敵なことか!
朝9時に始まって、まだ明るい夜の20時までの競技スケジュール。


ジリジリ太陽が照りつける屋外大会

色の白いヨーロッパの選手たちはあっという間に真っ赤になって、蛸のような肌で演技をしておりました。
私たち取材クルーもじりじり照りつける太陽に、痛い!痛い!と悲鳴をあげながら、あっちだこっちだと走りまわっていたのであります。
(取材クルーと申しましても、カメラマンと私の二人だけの超少数精鋭?省エネクルー。なんと会場にいた日本人は我々二人だけ!)


ブルスニキナ選手

 
ロシアチームはオリンピックの時のメンバーがほとんど引退し、残っているのはブルスニキナ選手だけ。
ブルスニキナといっておわかりになる方は真のシンクロ通ですね。
彼女はシドニーのデュエットの金メダリスト。
最後の演技の芸術点で、すべての審判が10点を出したあの「カラテ」の演技をした選手です。

ブルスニキナ選手は今回のヨーロッパカップではソロだけに出場しました。

「オリンピックで金メダルをデュエットとチームの二つで獲得したけれど、私のコレクションにはひとつ足りないものがあるの。
それが、ソロのチャンピオン。福岡ではもちろん金メダルを狙うわ。日本の立花選手一騎打ちね!」

こうインタビューに答えてくれた彼女の演技のテーマは「千夜一夜物語」
「王様に物語を語りつづけることで、一日一日を生きながらえていく様は、今の私が毎日毎日懸命ににシンクロの練習をしながら、生きていくのと重なって感じられるの。」

物語に自らのシンクロ人生を重ね合わせて演じるフリールーティーンは見事なものでした。
最初の陸上動作からブルスニキナの芸術作品が始まり、水中から脚が語りかけ、手が蝶のように舞うのです!
それは「水中のプリマ」と言うにふさわしい優雅さ、華麗さ、無駄のないバレエそのものです。


足先まで神経を行き届かせる

本番の競技直前まで、ブルスニキナ選手につきっきりで、指導していた小柄な年配の女性がいました。

コレオグラファーと呼ばれる振り付け師のタラソワさんです。
ロシアが誇るボリショイバレエ団出身のタラソワさんが、指の角度からあごの上げ方までを付きっきりで指示をだしていきます。

最後の一人となるまでプールに残り、炎天下の中、立ちっぱなしで指導をする63歳のタラソワさんには、頭が下がる思いでした。


モスクワのバレエレッスン。
タラソワコーチと共に。

 
タラソワさんが指導するのは水の中だけではありません。
ブルスニキナ選手に8歳のときからバレエレッスンを施してきたのです。
ロシアの選手たちはその多くが、一週間のうちに3回はバレエのレッスンを入れています。ブルスニキナ選手も例外ではありません。
バレエを抜きにシンクロを考えられないと断言します。
自分がどうすれば美しく見えるか、ブルスニキナ選手はタラソワさんと一緒にレッスンをしながら、タラソワさんを鏡にして動きを磨いてきたのです。

フィギュアスケートのパフォーマンスに魅せられて、6歳のときにお母さんに、「躍らせて!」とせがんだ少女は近所にあったプールに通い始め、
シンクロで自らを表現することに喜びを感じ始めました。


福岡でまたお会いしましょう!

そして、その少女は今、シンクロナイズドスイミングで見る者をとりこにする見事なプリマに成長したのです。

彼女の演技を見ながら、水の中のバレリーナ、ブルスニキナ選手の演技がみられる時代に生きていてよかったと思わずにはいられませんでした。

福岡で行われる世界選手権では、ブルスニキナ選手の演技をぜひぜひご鑑賞ください。

次ページでは、シンクロナイズドスイミング・ヨーロッパカップの結果を公開します!!
 
スポーツ古今東西
 
モスクワ大会に始まり、ロス、ソウル、さらには冬の大会も経験し、シドニー大会がなんとオリンピック取材10回目になる宮嶋泰子アナウンサー。取材ではその選手の持っている「根」を掘り起こそうと歳甲斐もなく?大声を張り上げて走り回り、スポーツを縦から見たり横から見たりと大忙し!他とは一味違うスポーツ企画をこのコーナーでぜひお楽しみください。
 
 
    
前の記事を読む 次の記事を読む  
トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー