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4月5日 岡崎朋美・出産から競技復帰へ

   

岡崎さんは、基本的に、赤ちゃんには母乳を与えていました。
一日に2回、そして夜中にぐずったときに授乳する生活を続けていました。

岡崎:「母乳はほんとにね、栄養価値がものすごいあると聞いていますし、風邪引かないということも言われているので、母乳は出るのであればあげたいなと思っているんですよ」

アスリートの授乳について、再び目崎医師にきいてみました。

目崎医師:「お乳のほうに栄養素がどんどん行きますので、そういう意味ではおかあさんのほうが栄養不足状態になっていってしまう。パワー系のスポーツになると筋肉をしっかりつけなきゃいけなくなりますので、なかなか、時間がかかって大変だとおもうんですね」

アスリートとしての身体を犠牲にしても、子供のために母乳を与え続ける母親としての気持ち。


   

宮嶋:「母乳をあげることで、アスリートとしての身体にダメージがあるというようなことは、どうなんでしょう」

岡崎:「吸い取られてはいるけれど、精神的に強くなるというか、生んだことによって、体はちょっと疲れるかもしれないけれど、精神的に、責任と言うものが出て、すごいパワーが出るんじゃないかと思うんですね」


    

スケート連盟や日本オリンピック委員会にはまだ子育てをする女性アスリートのためのサポート体制が整っていません。
岡崎さんは根っからのプラス思考だけを頼りに、目の前のことを黙々とこなしていきます。

岡崎:「大変ですけれど、楽しいです。やりがいがあると言うか、はははっ・・・」

太ももにぎゅっと力を入れながら、ひざの周りを指差します。

岡崎:「こうやってやると、多少、ムキってきたんで、ここがなかったんですよ、ほんとに。 だいぶできて・・・ 」

出産後9ヶ月後、脚の筋肉が戻ってきたとは行っても、全盛期の6割程度の筋力です。


   

10月下旬、北海道帯広市に移動し、
レースに向けた氷上トレーニングが本格的にはじまります。

2ヶ月間、ホテルの一室が生活の拠点となります。

岡崎:「ここは杏珠のお城なんで、いろいろホテルの人にもご無理言って部屋を改造して、・・・」

練習後、この部屋に戻れば、すべてが子供中心です。


   

11月12日、ジャパンカップ帯広大会当日。
ママとなって、40歳で挑むレースです。
4時におきて、暗い部屋の中で、子供が起きないようにそっとストレッチをして、ホテルを出たのが朝5時30分、誰よりも早い会場入りです。


   

そして、この日、ホテルで子供の朝食の面倒を見ていたのは、東京から駆けつけた夫の安武さんでした。

安武:「今までのスケート人生で、モチベーション的には今が一番充実しているんじゃないですか?」


   

主婦と同じ体力と言われた6月から、わずか5ヶ月間のトレーニングで、どこまで滑る事ができるのでしょうか。

脚の筋力がまだ十分でなく、多少ぎこちなさが残りますが、そこはベテラン、すべりの技術は健在です。


  

  

  

  

  

  

トップクラスが海外遠征で不在とはいえ、500mを2本滑って3位に入ります。

朋美ママの復活は大きな注目を集め、
岡崎さん自身も、試合を重ねるごとに、勘を取り戻してきます。


   

母親としての育児とアスリートとしての生活、

今年の秋から始まる次のシーズンは海外遠征もと夢が膨らみます。
海外では、子供をどうするのか、これまた、決まっていないことだらけです。

岡崎:「子供の成長早いんですけれど、なるべく私もソチに向かって早い成長で、一緒に歩んでいこうかなと。「いけ!いけ!」言わないの?

杏球:「いけいけ!」

岡崎:「あっ!ちょっと言った」


  

  




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編集後記

近年、オリンピックや世界選手権でメダルを獲得するのは圧倒的に女性が多いのですが、女性アスリートがおかれている環境は決して恵まれたものとはいえません。これはアスリートだけでなく、社会全般に言えることかもしれませんが、スポーツは力あるものが強い世界だけに、一般社会よりもさらに男性優位で物事が進んでいくように思えます。結婚が女性にとってのキャリアの終着点ではなく、妊娠出産復帰は当たり前の人生の通過点として捉え、さらに、それを次につなげていく思考が求められています。しかし、現実にはその環境の必要性を感じる男性も、女性も少ないように思います。スポーツ界は一般社会よりもさらに保守的なのかもしれません。
岡崎さんのチャレンジはさまざまな人に勇気と元気を与えてくれるように思います。スポーツ選手は自分のパフォーマンスだけでなく、自分の生き方で、社会にメッセージを発信できる存在にまでなってきていることを実感した取材でした。


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