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身長
172cm
出身地
大阪府高槻市
出身校
慶應義塾志木高校→
慶応義塾大学文学部
入社年月日
2002年4月1日
星座
牡羊座

4月10日 WBC 想定外の落胆と、そのワケ

アメリカ西部時間の3月17日。サンフランシスコ AT&Tパーク。
第3回WBC準決勝の9回2アウト、侍ジャパン・松井稼頭央選手が打ったフライが、
プエルトリコのセンター・パガン選手のグラブに収まった瞬間でした。


自分の想像を超えた落胆が、襲ってきました。


野球は一瞬で勝敗が決まるわけではないし、負けている展開だということは当然分かっていたし、
「まずいまずい」と思い続けながら試合を見ていたので、
何というか、表現は難しいですが、落胆する準備はできていたはずなんです。心のどこかで。
もちろん最後まで勝利を信じる気持ちも持ち続けていましたが。


でも、実際に襲ってきた落胆は、自分の想定を遥かに超えていたのです。


椅子から立ち上がれないわ、じわり涙が出てくるわ。マフラーで顔を隠すので精一杯でした。
後日、解説の古田敦也さんにも言われました。「清水の落ち込みぶりは相当だった。」と。


WBCで日本が出場する決勝戦を実況したい。
野球実況をしているアナウンサーであれば、誰もが抱えている夢だと思います。
僕もその1人です。

でも、その確率は相当低い。様々な条件が重ならないと、実現しません。

その条件の中には、「自分の努力次第で、なんとかなるもの」と、
                             「自分の努力では、なんともならないもの」があります。

「自分の努力次第で、なんとかなるもの」とは、

決勝の実況を任されること
 簡単なことではありませんが、自分次第です。

厄介なのは、「自分の努力では、なんともならないもの」です。

自分の勤めているテレビ局が、放送権を持っていること
 これは実は一番のハードルではないかと僕は思っています。
 僕はテレビ朝日のアナウンサーなので、テレビ朝日がWBC決勝の放送権を持っていなければ、
 夢の実現はないのです。どんなに努力して実況がうまくなっても、です。
 今回この条件がクリアされていたことは、僕にとって非常に幸せなことでした。
 こんなに幸せなことはありません、局アナとして。本当に感謝です。

日本が決勝まで勝ち進むこと
 言うまでもなく、プレーするのは選手たち。自分にはどうすることもできません。
 もちろん応援したり、祈ったり、信じたりすることはできます。
 でも、自分が日本を勝たせることはできないし、
 もし日本が負けてしまっても、全力でプレーした選手たちを責めることはできません。


つまり、自分の勤めるテレビ局が放送権を持っていて、自分がその試合の実況を任される存在でいて、
さらに日本が勝ち進まないと、夢は実現しないのです。


で、今回は実現しませんでした。


ひとつ勘違いしないでいただきたいのは、
「WBC決勝戦の実況をしたい」というのも夢のひとつであり、その夢は叶えることができました。
ドミニカ共和国 vs プエルトリコ、素晴らしいゲームでした。
まさに野球とともに生きるドミニカ共和国が発揮した力は、野球ファンとして胸に響きました。
WBCの決勝を実況する時点で、相当な幸せ者です。そのことは自分が一番分かっています。


今回実現しなかったのは「日本が出場するWBC決勝戦の実況をしたい」という夢です。


前述のとおり、様々な条件が重ならない限り実現することがない。
その中で、いくつかの条件は揃っていた。
だから僕は、「こんなチャンスは一生に一回巡ってくるかどうかだ」と、
宮崎での日本代表合宿が始まったあたりから、強く意識していました。
「一生に一回、最初で最後だからどうしてもやりたい」と強く意識していました。


こうやって自分で文章で振り返っていると、自分があんなに落胆した理由が分かってきます。



実現しなかった今、 「いつかまたチャンスはくる」だなんて、全然僕は思っていません。
一生に一回の思いで取り組んでいたので、
「もう二度とチャンスはない」と、本気で思っています。


でも、それが現実だし、
もしかしたら二回目がくるかもしれないし本当にこないかもしれないし、それは分かりません。
「自分の努力では、なんともならないもの」という要素があるので。


ただ、「一生に一回」「最初で最後」という覚悟で仕事に臨んだ時間は、間違いなく財産です。
それぐらいの覚悟でこの仕事に臨めた自分がいたことによって、
やっぱりこの仕事が好きなんだと再認識できました。


壮行試合から始まって、1次ラウンド、2次ラウンド、WBCの実況を重ねるたびに、
色んな方から「見たよ!」「頑張って!」と声をかけていただきました。

いつも僕を奮い立たせてくれるスポーツアナウンサーの仲間たち、
普段はなかなか一緒に仕事をする機会がない、スポーツ担当以外のアナウンス部の方々、
スポーツ以外のジャンルでお世話になっている番組のスタッフの皆さん、
普段直接仕事を一緒にしているわけではない社内の方々、
いつも刺激を受けさせてもらっている他社のスポーツアナウンサーの皆さん。


本当に力になりました。ありがとうございました。



もう二度とないと思っている僕ですが、
「自分の努力次第で、なんとかなるもの」だけは、クリアできる存在でいたいです。


  • 決勝戦終了後

  • サンフランシスコ名物 クラムチャウダー

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