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タイ編 撮影日記

東北部イサーンを走る列車
タイ鉄道は遅れない?
 タイの鉄道は遅れるのが当たり前。出発前はそんな情報が溢れていた。撮影するにはあまり有難くないことだが、タイで撮影する上では致し方ない。遅れたら遅れたでそれもネタのひとつにすれば良いと考えていた。
 特に最初に乗車したチェンマイ―バンコク間は、定刻通りだと14時間も走ることになる寝台列車、2時間以上遅れることもあると聞いていた。本来ならば朝日が昇る頃に到着するはずが、すっかり日も昇っているのにまだゴトゴト走っている。でも乗客は皆あせることなくのんびり到着を待つ・・・などという構成を思い描き早朝の撮影に臨んだ。しかし、目が覚めた時、まだ薄暗い車窓に飛び込んできたのは大都会のビル群。朝6時に撮影を開始した時点で既にバンコク近郊に差し掛かっていたのだ。遅れることを見越して動き始めたこちらの思惑は見事に裏切られ、撮影開始わずか30分でバンコクに到着してしまった。
 その後、列車旅は東北部のイサーン地方へと進んで行ったが、ここでも遅れるどころか、定刻より早く駅に到着する程だった。早く着いた時は、駅で時間を調整してから再出発といった具合。時刻表通りに行かないということは想定内だったが、早すぎて列車の走りを撮り逃すことになるとは思ってもみなかった。
 そんな中、唯一バンコクから西へ向かうナムトック線だけは大幅に遅れた。週末のみ運行される観光列車を撮影したのだが、例えば、元々20分の停車の所を観光客に合わせて延長したり、岸壁すれすれの桟道橋を超低速で走行したりと、全く時刻表通りに進まない。聞けば1日5~6便しか走らないので、駅での停車時間や列車の速度は全て運転士に委ねられており、時刻表を気にせず走行していたらしい。タイの列車旅を撮影するには“臨機応変さ”がカギとなるのだ。
ディレクター 二田 靖章
バンコクへ向かう寝台列車
観光客で賑わうナムトック線