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スペイン・ポルトガル 〜初夏のイベリア半島横断の旅〜 撮影日記

ドウロ渓谷のブドウ畑
ポルトガルの夏の風物詩
ポルトガルでは、初夏ならではの風景に出会うことができた。
一つは、リスボンの“聖アントニオ祭”。街の守護聖人・聖アントニオをたたえ、縁結びを祈願する夏の一大イベントだ。中でも注目したのは、公募で選ばれたカップルを街の皆で祝福するという結婚式。私たちは、誓いを終えたカップルが教会から登場する最高の瞬間を撮影したいと、数時間前からスタンバイした。ポルトガルの国営放送のテレビ中継や新聞社など多く報道陣も詰めかけ、緊張が高まる。いよいよカップル登場の瞬間、他のカメラを邪魔しないように気を付けながらも、平林カメラマンが果敢にカップルに突撃する。新郎新婦たちは、最高の笑顔をカメラに向けてくれた。後で聞いたところによると、国営放送のアナウンサーが「今日は日本のテレビが取材に来ています!」と私たちを何度も紹介してくれていたらしい。街に笑顔と幸せが溢れる、素敵な祭りだった。
もう一つは、ポートワインの産地、ドウロ渓谷のブドウ畑だ。ドウロ川の斜面に築かれたブドウ畑は、新緑の季節を迎え、鮮やかな緑に染まっていた。段々畑が連なる渓谷を列車が駆け抜ける様は、まさに絶景。この畑を作った農家さんに会ってみたいと思い、列車や移動の車の中から人の姿を探すものの、なかなか見つからない。ブドウが実る前の時期のため、あまり畑での作業は無いらしい。次の列車の撮影時刻も迫っていたので、「あと5分探してダメなら諦めよう!」と決めてブドウ畑の中を必死で探す。すると…いた!枝の手入れをしていた4人家族に出会い、枝の手入れの様子を撮影させてもらえることに。彼らの丁寧な仕事を見ていると、人の手があってこそ生まれる絶景なのだと実感することができた。
スペインのバルセロナを出発し、ポルトガル北部までおよそ2200キロを駆け抜けた三週間。変化に富んだ風景と温かい人たちとの出会いに恵まれ、イベリア半島の持つ様々な表情に圧倒された旅だった。
ディレクター 中村有里沙
聖アントニオ祭の結婚式
ブドウ畑で作業する家族