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黄金の大地をゆく 秋の韓国周遊1300キロの旅 撮影日記

熱気に包まれるライブ会場
華やかな夜の江南と静かな朝の清涼里
江南(カンナム)は日本でいう港区のような場所。高層ビルやショッピング街、高級住宅地までここに密集していて、渡韓する若者たちが絶対に訪れる場所と言っても過言ではない。ここで撮影するのは「江南フェスティバル」というイベント。この中心地を8車線も封鎖してK-popフリーライブを開催するというのだから驚いた。ライブ1時間前の会場にはすでに多くの人たちが駆けつけていて、熱気に包まれていた。始まるやいなや歓声があがり、人気アイドルたちがパフォーマンスを披露。実際に見てみると、社会現象を巻き起こす理由が分かった。ステージに立つ一人一人が圧倒的な存在感を放ち、現実離れしていた。
一方で、江陵(カンヌン)への旅立ちの日、薄暗い中で静かに朝を迎えたソウルの清涼里(チョンニャンニ)。午前5時、駅近くの清涼里伝統市場は、すでに動き出していた。ここは地元の人たちが利用する在来市場で、犬の肉や、豚の腸にもち米や香菜を詰めて蒸したスンデなど、見慣れない食べ物が並んでいた。中でも衝撃的だったのが豚の頭!実は韓国では、告祀(コサ)と呼ばれる儀式で使うお供え物だそうだ。例えば新規オープンしたお店の前に豚の頭を置き、口に10,000ウォンを挟む。そうすることで厄払いと商売繁盛に繋がると信じられているのだ。びっくりしすぎて目が覚めた。
清涼里駅は、韓国東側へ向かう列車のターミナル駅で、朝早くにも関わらず列車を待つ人が多かった。1人でフラフラと歩く20代の女性に声をかけてみると、これから釜山までムグンファで約6時間かけて行くのだそう。KTXだとおよそ半分の時間で行けるのに一体なぜ…?その質問を本人に聞くと、「今から乗るムグンファがちょうどいい時間に着くから」ただそれだけだそうだ。目的地への行き方一つでも個性が出るから列車旅は面白い。「アンニョン」と踵を返し、自信たっぷりの長い黒髪をなびかせながらも、少し不安げな彼女の足取りが忘れられない。
ディレクター 長谷川眞子
お供え物の豚の頭
早朝の清涼里駅