世界の車窓から

トップページ > 撮影日記

フランス編 撮影日記

高さ65mのセジュルネ橋を渡る列車
プチ・トラン・ジョーヌ
今日はスペインと国境を接する町ラトゥール・ド・カロルからプチ・トラン・ジョーヌに乗り込む。駅で停車中の列車を撮影していたら、ドクロマークの恐ろしい看板に気がついた。「さわると死ぬぞ!」。実はこの列車、上空の架線から集電するのではなく、線路のそばに敷かれたもう一つのレールから集電する。日本の地下鉄でも使われているシステムだ。さわるなと言われるとさわってみたくなる。本当に電気が通じているのか確かめたい衝動にかられるが、何とか抑えた。いい年して困った性分だ。
列車は標高1500mを越すセルダーニュ高原や険しい峡谷を走っていく。天気は快晴で屋根のない車両から眺める360度の車窓は格別だ。スピードも時速30キロとゆっくりで、ちょうどいい。何でも、これぐらいのスピードでいいんだよなあ。携帯からスマートフォン、パソコンからタブレット端末、撮影もテープからカード収録へ。便利さや効率ばかりを追い求め凄まじいスピードで変わっていく世の中に、ヨロヨロと後ろの方からついていく私。気がつくと、♪気楽に行こうよ 俺たちは 焦ってみたって同じこと のんびり行こうよ 俺たちは 何とかなるぜ 世の中は・・・と口ずさんでいた。
さて楽しんでばかりはいられない。ディレクターはスチール写真を撮らなければならない。でも360度の車窓を撮るのは結構難しい。ムービーカメラと違ってパンできないし、窓枠が無いから、ただの風景写真になってしまう。乗客や車両をひっかけて撮ろうとするが、いいアングルはカメラマンに譲らなければならない。しばらく格闘したがあきらめて、やっぱり旅を楽しむことにした。仕事放棄?いえいえ、この旅の気分をナレーションで伝えることも大事な仕事です、ハイ。ただの言い訳ですけど。
ディレクター  福本 浩
開放的なプチ・トラン・ジョーヌの車両
危険を知らせる看板