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フィンランド編 撮影日記

ヘルシンキ中央駅のプラットホーム
夏の余韻
「秋のフィンランドは天気が悪い」
出発前にそう聞いていたので、それが心配の種だった。初回は、夏から秋に向かう季節の変わり目をテーマに撮影しようと考えていたので、太陽なしでは夏の部分が切り取りづらい。深夜2時過ぎまで、ホテルの部屋と玄関外の喫煙所を何回も往復しながら、雨が降った場合の撮影プランを思案していたが、喫煙所から部屋に帰るたびにフロントマンが「グッドナイト」と言ってくれるのが申し訳なくて、ひとまず寝ることにした。
そうして迎えた撮影初日の朝。ありがたいことにヘルシンキの街は晴れていた。これなら予定通り「夏の余韻」を切り取ることができる。徹夜明けのフロントマンも笑顔で快晴を祝ってくれていた。
ヘルシンキの街は“バルト海の乙女”と呼ばれ景観が美しい。1900年代初頭のアールヌーヴォー様式の建物が建ち並び、石畳の道をトラムが縫うように走る。信号待ちをしているカップル、道端で話し込む女性たち、この街のモダンな景観と相まって、なんでもない普通のことでも画になる。気温は20度前後で秋風が吹くと少し肌寒いが、日差しの強さはまだまだ夏を感じさせる。ほとんどの市民は秋仕様に衣替えをしているが、夏が名残惜しいのかTシャツやタンクトップ姿の人もちらほら見かける。
北国のフィンランドは1年の約半分が冬で、秋の期間はあっという間。すぐに暗い冬がやってくる。冬の日照時間が6時間程度なので、この国の人たちはそれだけ太陽への思い入れが強い。広場やオープンカフェで日光浴をしている人に話を聞けば、みな口を揃えて「夏が終わるのが悲しい」と言っていた。
港にあるアイスクリーム屋には行列ができている。これも「夏の余韻」じゃなかろうかと撮影したが、地元の人によれば別に夏に限ったことではないという。フィンランド人はアイスクリーム好きが多く、世界でも1、2を争う消費量で冬でもバクバク食べているらしい。晴れたおかげで撮影は順調に進んだが、寝不足なので撮影中にも関わらず眠い。
ディレクター 浜田悠希
水辺のオープンカフェ
ヘルシンキの街を走るトラム