世界の車窓から

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チェコ・スロバキア編 撮影日記

ヨーロッパ文化の中心プラハ
旅の始まり、チェコ人の熱
チェコとスロヴァキアについての歴史も調べた。番組を作る上での心得も教えてもらった。しかし、番組開始から29年目を迎えた『世界の車窓から』、そのディレクターという大役を任された私の不安と緊張は消えることなく、日本を離れるとさらに高まっていった。
撮影初日は旅の起点プラハ。この世界有数の観光都市には、いくつもの見どころがある。街の中心を流れるヴルタヴァ川に架かる優美なカレル橋。600年の時を刻む旧市庁舎の天文時計。“建物の博物館“といわれる街並み。国立マリオネット劇場、カフカの家……撮影の選択肢は無数にある、そして、そのすべてが画になるだろう。だからこそ、何にフォーカスして番組を作れば良いのか悩ましかった。
私はプラハの街を撮影する最中でも自問自答していた。…そんなとき、突破口となったのが現地の生の声だ。ロケで最も身近なチェコ人であるコーディネーターのマルティンさんが、聖ヴィート大聖堂の撮影をしきりに勧めてきたのである。「この場所こそがチェコ繁栄の原点なのだ」、と。その熱意に押されて、この聖堂と内部にあるチェコ出身のアールヌーヴォー画家アルフォンス・ミュシャのステンドグラスを撮影する。よし、これで聖ヴィート大聖堂とアールヌーヴォーで一本分作ろう。あのプラハっ子の言葉が旅の中でチェコ人の熱を初めて感じた瞬間で、そうすることが正しいと思ったのだ。
観光客の集まるプラハにも確かにガイドブックに載っていない地元の人々の姿がある。ヴルタヴァ川で競技用ボートを漕ぐ学生。教会の前で犬の散歩をする女の子。上半身裸で白鳥に餌をやるおじさん。そんな光景を目の当たりにし、チェコの人々の思いを聞くと、ようやくチェコにこの足でやってきたことを実感し、私はこれに出会いたかったのだと思う。そして、これからの旅の中で出来る限りカメラでそんな瞬間を捉えていきたい。
ディレクター 小峰 康平
聖ヴィート大聖堂はチェコの原点
重厚なプラハ中央駅