世界の車窓から

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オーストリア編 撮影日記

空港さながらのウィーン中央駅
期待と緊張のウィーン
9月の第1月曜日、我々はウィーンの街からロケをスタートさせた。オーストリアでは9月は新年度にあたり、入学式が行われる学校も多い。街は爽やかで気持ちが良いけれど、何が起こるか分からない緊張感やドキドキ感に包まれていた。ハプスブルク家の栄華を残す古い街並みを歩くサラリーマンも難しい顔に見える。と私は勝手に考えていた。なぜなら「車窓」のロケが初めてで、それこそ新入生のような気分だったからだ。これから始まる旅で面白い出会いに恵まれるだろうか。期待と不安が入りみだれていた。
まず訪れたのは2014年に生まれ変わったウィーン中央駅。かつて南駅があった場所に作られた新しい駅で、各方面からの国際列車が集まるヨーロッパ有数のハブステーションになっている。1日に14万5000人が利用するといい、一番驚いたのは大きい荷物を持つ旅人の多さ。列車情報が記された電光掲示板の周辺はまるで空港のようだった。
ここ中央駅で早速うれしい出会いがあった。オーストリアには小学校の入学祝いに“シュールテューテ”という円錐型の包みを贈る風習があるのだが、なんと偶然、駅でその風習にちなんだイベントが行われていたのだ。日本で調べていた時に、実際にモノを持って登校する児童の撮影は難しいと聞いていたので、とても嬉しかった。新しい中央駅とオーストリアの風習を紹介できる!と私も子ども達と同じように笑顔になった。
午後は街の俯瞰を撮影しようと、中心部にあるウィーンのシンボル、プラーター遊園地の大観覧車に乗り込んだ。俯瞰の撮影だけで終えようとしていたとき、一組の親子が目に留まった。話を聞くと、新年度の初めの日は毎年娘と観覧車に乗りに来ているとのこと。お父さんも小さい時から乗っているという。ウィーンっ子がしていることを紹介したくなって、急遽観覧車の撮影も行った。この街で120年近く回り続ける観覧車の歴史を感じ、スケジュールを変更することになったが悔いはなかった。
ロケ初日から、「車窓」は一瞬一瞬の出会いを大切にしていくのだと、新入りの私は気付かされた。
ディレクター 小林祥大
シュールテューテに遭遇
観覧車は憩いの場