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デンマーク編 撮影日記

デンマーク最北端の夕日
夕日の広場
旅の終着地、デンマーク最北端の街スケーエン。19世紀後半、コペンハーゲンで主流となっていた伝統的な芸術表現に反発する若いアーティストたちが、コペンハーゲンから最も遠いこの地に集い、新たな表現を模索した。スケーエン美術館には、‘スケーエン派’と呼ばれた彼らの作品が四方の壁に隙間なく飾られていて、当時の若い芸術家一人ひとりの熱量のようなものが伝わってくる。
スケーエンの海岸は、北海とバルト海が出会う場所として知られている。2つの海は塩分濃度が違うため、はっきりと波の境目を見ることができるらしい。この不思議な自然現象は、2001年放送のデンマーク編でも紹介され、そこには岸辺に横たわるアザラシが映っていた。あまり期待せず海岸に向かうと、遠くにグレーの塊が見えた。逆光でよく見えないが、アザラシかもしれない。近づいても全然動く気配がない。もしや死んでる?と恐る恐るさらに近づくと、あれ?大きな石…。妄想が大きすぎたのかと全員で大爆笑をしながら、石と記念撮影をした。
さらに今回は、この海に沈む夕日も撮影しようと出発前から考えていた。夕日といっても沈むのは、夜の22時近く。撮影場所は決めていなかったが、スケーエンへ向かうローカル線の担当者に、お勧めの撮影スポットを教えてもらった。日没まで街の撮影をし、夕食を急いで済ませ向かったのは、デンマーク語でSolnedgangspladsen(ソルネドガンスプラセン)、「夕日の広場」という場所。‘夕日のキオスク’という看板を掲げる売店とベンチが並んでいる。すでに多くの人が集まっていて、まさに夕日を眺めるための海岸のようだ。波音をききながら、日が沈むのをただ待つ、なんとも贅沢な時間。ドイツから日々ドタバタと動きまわり、たどり着いたユトランド半島の北の果て。どこと決めてもいなかったにもかかわらず、夕日を眺める人たちの幸福感漂うこの場所で、曇りや雨でもなく、太陽が沈むのを撮影できる。素直に嬉しい気持ちでいっぱいになった。
ディレクター 渡部博美
アザラシだと思ったら…
スケーエン派の画家たち