世界の車窓から世界の車窓からFUJITSU
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撮影日記1

「ようこそ!台湾へ。」世界の車窓からロケに初めて参加することになった私を、満面の笑みで迎えてくれたのは、浅黒い顔に角刈りヘアーが似合う強面のコーディネーター、リョウさん。ごつい指にはめられた指輪がキラリと光り、先に続く3週間のロケに身が引き締まる思いがする。今回のミッションは、台湾一周、およそ900キロの路線をくまなく走り、その他、観光路線や蒸気機関車にも乗車するというもの。のべ約1300キロの行程だ。

「世界の車窓から」の、あのゆったりとした独特のテイストから、さぞやロケも悠々、のんびり進めていることだろう、と甘い期待を抱いていた私だが、現実はそう甘くはないもの。到着するやいなや、旅の厳しさを思い知らされる。ホテルに私物をおろし、台北市内の夜市に直行。息つく暇なく、ロケは続くものなのです。翌日も早朝6時から、公園で太極拳に興じる市民の皆さんを撮影し、台北駅から最初の列車、台湾高速鉄道に飛び乗った。4つ自由席車両を含め、全12の車両からなる台湾の新幹線は、2006年、日本の財団法人主催の総合的デザイン評価制度でグッドデザイン賞を受賞しているだけあって、車内もすっきりとして、乗り心地も抜群。乗客たちも、どことなくリラックスした雰囲気を醸し出していた。

車窓ロケで重要な要素となるのが、乗客たちの反応。実際に乗り合わせた方々に挨拶し、カメラで撮影しても良いかどうか許可をとるのだが、台湾のみなさんは実に親切かつ、友好的。「もちろんよ」と微笑んで、様々な話をしてくれる。温暖な気候のせいなのか、日々おいしい食事を食べている幸福感からなのか、車内で出会う笑顔は、日本のそれとはどこか違う。話しているうちにこちらも、体の中から暖かくなった気がするから、不思議だ。車内撮影を開始して20分がすぎた頃、ちょうど私が赤ちゃんをつれた女性の話に夢中になっていたときのこと。反対側の座席に座った推定70歳くらいのおじいさんが、親指をたててしきりに「グッ〜ド、グッ〜ド」と話しかけてくるではありませんか。まさか日本の芸人をご存知で?と思いながら、その意味を問いかけてみた。すると、なんと!私の仕事ぶりを気に入ったのだとか。息子のところに嫁にこないかというのです!!32歳、独身の私は、それこそグッド〜と叫びたい心を抑え、とりあえずアシスタントのT君にTEL。「私、ここでお嫁に行けるらしいのですが…、行ってみても良い?」すると、すかさず「いけません!3週間後には戻ってきて編集してもらいます。嫁はまたの機会に!」と、きっぱりNG。そりゃ、そうか。一瞬、台湾永住の未来を夢見てしまった私だが、T君の声に目を覚まし、再び無事に(?)台湾一周の旅を続ける運びとなりました。
 
ディレクター 李 玉美
台北駅の撮影
台湾高速鉄道
車内の赤ちゃん連れ
撮影日記2

台湾一周の旅も1週間がすぎた火曜の朝。台北発の特急列車、自強号に乗車した。本数が多いこともあり、通勤、通学に便利な市民の足となっている。乗客たちは、朝刊に目を通したり、寝たりない朝の睡眠をむさぼったりと、車内には、ただただ静かな時間が流れている。こんなときは、ロケクルーもその静けさを壊さぬよう、息を潜めながらの撮影。なるべく存在感を消し、音をたてぬように気をつける。

2時間ちょっとで台湾第3の都市、台中に到着。駅を出ると、先に到着したロケ車を横付けし、ドライバーのコウさんが「しんくーらー(おつかれさま)」と出迎えてくれた。台湾は九州よりもさらに小さな島。必然的にどの路線も乗車時間が短くなる。同じ場所から同時に出発しても、車輛の方が列車よりも早く到着することがほとんどだ。

車窓ロケの重要要素その2、それは“列車の走り”撮影。これは、乗車した列車を外から撮影するというものだが、雨季の台湾、天候がかわりやすいため、一度乗車したらすかさず今きた道を車で戻り、晴れならば晴れ、雨ならば雨のうちに列車が走る姿を撮影しなければならない。台中から再び台北へと戻りつつ、絵になる風景を探して”走り“を撮った。

台北に戻り、やっと一息。街一番の魚介料理を味わえると聞いて、コーディネーターに連れられ、とある食堂へ。台湾の人々にとっても、「食べる」ということは、人生最大の喜びらしい。どの食堂からも、身を溶かすような美味なる香りが立ち上り、軽快な会話が聞こえる。撮影の辻さん、助手の佐藤君、それからコーディネーターのリョウさんと共に席につき、台北近郊からあがった海老や海魚に夢中になっていた頃…一本の電話が。なんと、私の実の母、通称“寅貞さん”が台北に来ているというのです!実はウチの母、フーテンの寅さんもびっくりの旅好き。今回も私が台湾ロケに出ると聞いて、友人を引き連れ台北入りしていたのだ。数分後、私たちのいる食堂へやってきた母の一声は…「あら、あら、まぁまぁ、お疲れさま〜」なんとも、初めてとは思えない距離感で乱入し、ひとしきり自分の旅の話をした後、「それにしてもすごいわね〜。みんなまだ若いのに、あの“世界遺産”を作ってるなんて」って、オイ!“世界遺産”じゃなくて、“世界の車窓から”だってば〜。あれほど、列車の旅だよと念を押していたのに…。スタッフ一同、寅貞パワーに完全に圧倒されていた。ごめんね、みなさま。ハチャメチャではありましたが、寅貞さんのおかげで、楽しいひとときを過ごし、ホテルへ。翌日のロケのエネルギーチャージばっちりで眠りについたのでありました。
 
ディレクター 李 玉美
自強号到着
列車の走りを撮影
スタッフ一同と寅貞パワー
撮影日記3

今回は撮影担当の私が日記をしたためさせていただきます。

さて、台中を出発したローカル列車は、街を抜け緑の中へとぐんぐん進んでいきました。バナナの大きな葉っぱや、高い高いビンローヤシ(ヤシの木の一種)の木々をすり抜けるように走る列車。まさに緑のトンネルといった風情です。列車から身を乗り出して撮影していると、ときおり風にあおられたバナナの葉っぱがふわりと頬を撫でていったり、並走する渓流のせせらぎがかすかに耳元にささやいてきたり…風景も気候も、日本とはまったく異なるはずなのに、撮影しながらなぜか懐かしい気持ちが胸いっぱいに広がってきました。車内の乗客の人々も、遠い昔に、どこかで会った人たちのよう…バタバタと時間に追われているはずの撮影の旅のなかでも、時々こんな至福の時間があるんです。これを味わいたくて、そしてこの気持ちよさを番組作りにうんと込めたくて、私たち撮影隊はハードなスケジュールにもめげず、撮影の旅を続けているのかもしれません。

ローカル線の「集集線」の終点「チャーチャン」駅。しずかにたたずむこの小さな駅とその周辺の集落も、これまた心休まる場所でした。変な帽子を得意げにかぶった李ディレクター、白いタオルを頭に巻いた建設労働者風の私、アジア人離れした顔つきの佐藤助手、萌え系ファッションのコーディネーター・ユミさんという不思議な4人組を、この村の人たちはやさしく迎え入れてくれました。ゆったりした時間を、ゆったりと撮影する、ここでもそんな幸福を味わうことが出来ました。

こんな幸せに浸ってばかりでいいのだろうか、とふたたび気を引き締め向かったのは渓湖駅。ここから出発する蒸気機関車に乗るためです。かつてはサトウキビを運ぶ路線だったのですが、今は観光列車として、週末ごとにサトウキビの代わりに観光客を乗せて運行しているのです。週末、天気は快晴、集まった乗客たちも楽しげな表情でした。サトウキビの運搬車を改造した車両は、360度見渡せるオープンスペース。蒸気機関車がのんびりと煙を吐き出し運行する線路の両方にひろがる色々な田んぼや畑。やはりここでもまた、至福を感じてしまった撮影隊でした。至福の台湾!
 
撮影 辻 智彦
台湾のローカル列車
集集線沿線 チャーチャン村
サトウキビ列車
撮影日記4 「活力のでる国・台湾!」

今回は撮影助手の僕が日記を書かせて頂きます。

台湾は日本の九州と同じくらいの小さな島国ですが、その小さな土地にはバラエティーに富んだ風景が凝縮されています。切り立った山があり、広大な川があり、田園風景がどこまでも続くかと思いきや台北や高雄のような高層ビルが聳え立つ街に突き当たります。気候は暖かく、11月だというのに毎日半袖で汗だくになりながらロケをしていました。豊かな土地や温暖な気候で暮らしている台湾の人々は穏やかで優しく親近感が湧きます。やっぱり人は住む土地に多大な影響を受けるんだなとあらためて思いました。そんな台湾で僕が最も印象に残っているのは屋台のネオンです。

11月上旬、二水を出発して夕方高雄に到着。そのまま高雄の夜市を撮りに行く事になりました。夜市には生活必需品から果物や魚や肉など様々なものが、怪しげな光に照されながら所狭しと並んでいます。遠目には鮮やかな光も、良く見ると実は少しくすんでいて、くすんではいるんですがどこか落ち着きます。そんな怪しげな光の下で、汗をかきながら屋台で働く人たちを見ていると、これが台湾かと納得しました。映画でしか見た事がなかった独特な光や、その光に照され、活気に充ちた人々の働きっぷりには興奮させられました。

その日は撮影させてもらった屋台で夕食をとる事になりました。強面で男気のある大男が作った料理を、その大男からは想像もつかない程綺麗な奥さんが運んできてくれました。台湾は食べ物が本当においしいんです。台湾といえば小籠包を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、僕が一番驚いたのはショウガです。日本ではショウガは料理のスパイスとして使われていますが、台湾のショウガは食べるショウガなんです。とても柔らかくて、味もきつくなく、いくらでも食べられます。ショウガだけでも食べますし、肉や野菜と炒めてもとてもおいしくて、僕達撮影隊に活力を与えてくれました。3週間のロケを、体調を崩す事なくとても良い状態で臨めたのはショウガに活力をもらったせいかもしれません。今思うと車窓からの風景や、活気に溢れた台湾の人々からもたくさんの活力をもらった気がします。活力のでる国・台湾!の魅力がぎっしり詰まった車窓台湾編、これからも是非御覧下さい。
 
撮影助手 佐藤洋祐
台湾の風景
台中黄昏市場
六合観光夜市
撮影日記5

台湾一周の旅も半ばを過ぎた頃、「気の遠くなる風景」に出会いました。
私は、あまりにも美しい景色に出会うと、その美しさに圧倒され、“気を失うような感覚”に見舞われることがあります。そのような風景を、勝手に「気の遠くなる風景」と名付けているのですが…台湾でも見つけました!まさに、人の意識を“無”に持って行く力のある景色に。
それは、南湾と呼ばれるビーチにあります。台湾最南端を走る南廻線を途中下車して、車で1時間。真っ白な砂と、真っ青な海が、互いにじゃれ合うように、行ったり来たりを繰り返し、心地よい波の音が、耳の奥をくすぐります。
台湾と言えば、「台北や高雄などの大都市」と、「熱気あふれる屋台」というイメージしか無かった私は、まさにここで度肝を抜かれたのです。絶景で気を失ってみたい方、ぜひ、南湾まで足を伸ばしてみてくださいね!

さて、南廻線の旅が終わり、台東線へと乗り換えたある日。たわわに実った稲穂を揺らしながら北へと走る車内で、どうも撮影の辻さんの様子がおかしいのです。朝からずっと「よ〜し、よ〜し」と自らに気合いを入れ続けています。いつも以上に機敏なカメラさばき、ディレクター顔負けのインタビュー、この日は、何かが違うのです。「どうしちゃったのかね?辻さん…」と、こっそりコーディネーターに聞いてみると、「玉美さん、今日はあの日ですよ、あの日!」と意味深な答え。そこで、ハッと気がつきました。実はこの日、台湾のあるテレビ局が、私たちの撮影の様子を取材に来る日だったのです!!それも、列車を撮影しながら旅を続けるカメラマンが主役の特集ニュース。辻さんに気合いが入るのは、無理もありません。大きなカメラを担ぎ、汗を流しながら撮影に興じる日本人カメラマンを、後ろから台湾のカメラが追いかけます。ノリにのった辻さんは、満面の笑みでインタビューにまで応えているではありませんか!!

ちなみに、翌日のニュース番組で無事、辻さんの笑顔がしっかりと台湾全国に放送されていました。辻さん、お疲れさま。そして、パワー全開の辻さんに付いて行かざるを得なかった助手の佐藤君、コーディネーターさん、ご苦労様でした〜(笑)。
 
ディレクター 李 玉美
美しい南湾のビーチ
海沿いに北へ
逆取材を受ける辻智彦キャメラマン
撮影日記6

台湾有数の観光名所、花連から首都台北へ。台湾一周の旅も最後の乗車となりました。「太魯閣号」は、今、最も注目されている最新列車です。小旅行を楽しむ家族連れや、バックパックを担いだ外国人たちが乗り込みます。「パシャ!パシャ!」ホームのあちこちで、記念写真のシャッター音が小気味よく鳴り響いています。そんな中…列車の後方でしきりに窓ふきをする若者を見つけました。よく見ると、それは我らが撮影助手の佐藤君!「世界の車窓から」の大事なシーンの一つとして、車窓に流れる絶景があります。せっかく四季折々の美しい風景があっても、窓が汚れていたら台無し。ロケバックの中に必ず、大きめのガラスクリーナーと窓ふき用タオルを忍ばせておいて、出発前にカメラマンがホームの様子を撮影する間、助手は大急ぎで窓を拭いておくのです。
佐藤君の手慣れた作業のおかげで、「太魯閣号」の車窓もばっちり!雄大な山々が流れたかと思えば、田園風景が行き過ぎ、そうかと思えば、紺碧の海までもが通り過ぎて行きます。「台湾って、本当にいろんな“顔”を持つ島だな 〜」、自然の優美さに思わず見いってしまいます。

沿線の街として訪れたのは、「ジョウフェン」。海を見下ろす山肌に小さな家々が並ぶ、風光明媚な港町です。ここは、ベネチア国際映画祭でグランプリを受賞した台湾映画「悲情城市」の舞台になったところで、石の階段でつながる小さな路地に、赤提灯、レトロな風情に包まれています。台北から車で一時間ちょっとという立地の良さもあり、ひっきりなしに観光客が訪れるのだとか。
港が近いため、新鮮な魚が豊富にとれるんでしょうねぇ、名物は「魚介のすり身団子のスープ」。絶品でした〜!ロケ当日は、朝から小雨がパラつく肌寒い一日だったのですが、魚の出汁がきいたこの暖かいスープに、スタッフ一同「ふ 〜」っと、真っ白なため息をこぼし、つかの間の幸に酔いしれます。

台湾一周、全行程1300キロの旅。無事に台北に戻ると、そこには大都会の夕景が待っていてくれました。旅の途中に出会った優しい笑顔、逞しい大自然、いろんな思い出が頭をよぎり、私たちは無言のまま、しばらく街の音に耳を傾けていました。心の中で「台湾の皆さん、ほんとにありがとう 〜」とつぶやきながら。
 
ディレクター 李 玉美
太魯閣号
ジョウフェンの街
魚介のすり身団子スープの店
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