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SmaSTATION-5特別企画後編『家族・関係者が語る人間松本幸四郎そして、九代目幸四郎の見果てぬ夢とは』
遂に実現した香取編集長VS九代目松本幸四郎さんの真剣対談。この後編では、幸四郎さんの演技論や、ご家族や関係者の証言を元に、幸四郎さんの素顔に迫りました。
歌舞伎の名門に生まれた九代目松本幸四郎は3歳の初舞台以来、歌舞伎だけにとどまらず、ミュージカル、シェークスピア作品、映画、テレビドラマと幅広い分野で活躍。ブロードウェイで日本人として初めて全編英語の台詞による「ラ・マンチャの男」を公演し、イギリスでも「王様と私」を上演しました。祖父から受け継いだ「勧進帳」弁慶役は、800回を迎え、ミュージカル主演は2000回。役者人生60年を振り返り熱く語った前回。話題は、香取編集長のミュージカル出演へ・・・。

松本:三谷さんが「舞台やってくれ」「ミュージカルやってくれ」と頼んでも、あなたは「やらない」と…。で、番組を見てたらば「毎日同じことするのは嫌だ」って…。確かにそうですよ。同じこと、同じ動き、同じ台詞をやるのは。でも、祖父の言葉にもあったけど、毎日違うんですよ。お客様は。そういう気持ちにはなりませんか?毎日お客さまは新しいんだ、と…。

香取:あの…正直三谷さんにはそういう理由というか、「毎日同じことなんで僕はできないと思います」と…。

松本:今日はね、歌舞伎を観にきてくれることと、舞台でミュージカルをやってくれるというこの2つの約束を条件に(番組に)出たんですよ。

香取:毎日同じことっていう理由は本当じゃなく、本当は怖い部分があります。

松本:僕もいまでも怖いですよ。本当に怖い。何回やろうと怖いですよ。それは当然ですよ。だから是非出てください。

香取:はい(と言ってうなずく)。

松本:だって他の方は皆ほとんど・・・スマップの方は出てるでしょう?

香取:そうですね。最近、草なぎとか稲垣とか・・・舞台やっていますね。

松本:いい舞台やってるもん。

幸四郎さんに、舞台出演を約束した香取編集長。この後、話題は演技論へ。

松本:台詞ってのは、本当はしゃべっているときよりも、しゃべっていないときの方が難しい。その証拠に「勧進帳」っていう舞台では何十人、何百人の俳優さんが同じ台詞、同じ動き、同じ格好をします。でも、全員違います。それは台詞と台詞の間が違うから。

香取:間(ま)ですね。

松本:「悪魔(あくま)」の“魔”でもあると昔から言っていました。上手い俳優、魅力的な俳優さんは、みんなその間がうまい。声を出すことで一番大事なことは何だと思う?

香取:声を出すことで?気持ち…その台詞をちゃんと理解してないと、ということですかね?

松本:声を出すことで一番大事なのは「耳」。だってすべての音は耳から入ってくるでしょう。いくら一生懸命、腹式呼吸だなんだかんだ、発声法を訓練したって、耳を訓練しなければ絶対にいい歌もいい台詞もしゃべれない。それから最高の踊りってどんな踊りだと思います?

香取:最高の踊り?

松本:最高の歌でもいいや。僕はね、最高の踊りってね、ただうまいだけの踊りでもないと思うんです。ただきれいなだけの踊りではないと思うんですよ。僕にとって最高の踊りってのは見ている人が思わず踊りたくなるような踊り。歌でも声量が豊かで美声で、そういう歌でもない。テクニックを駆使して非常にうまいな~って歌でもない。聴いている人が思わず口ずさみたくなるような、聴いている人が思わず歌いたくなるような歌。パヴァロッティの「トゥーランドット」、歌えませんよ。歌えませんけど、みんなパヴァロッティを聴いたあと、劇場を後にしながら、「タララ~」ってパヴァロッディになった気になって帰るでしょう。あれが最高の歌だと思う。

香取:それは、どこから生まれるんですかね?その歌い方、その踊り方は?

松本:分からないな~。ピカソの言葉に「絵って言うのはうまくなっていくんじゃない。変わっていくだけだ。」っていう言葉がありますね。僕はね、その答えはうまく分かんないんだけど…。歌舞伎だとひと月に25日間芝居していますね。同じ役を毎日やりますから、まあ段々、うまくなっていくように思うでしょう。ところがある女形の先輩に言われたの。千秋楽近くですよ、もう20何回やっているから、「今日は良かったわよ」って言われると思って行ったんですよ。そうしたら、「あのね、お芝居ってのはね、段々うまくなるんじゃないのよ。段々ヘタになっていくのよ。」って言われたの。「うまくなったと思うのは、慣れからくる錯覚よって言われたの。「あっ、なるほど。慣れから錯覚ってのはあるな」と。

役者人生60年、役者・松本幸四郎はそう語りました。では、舞台を離れた人間・松本幸四郎とは一体どんな人物なのでしょうか?幸四郎さんと縁の深い方々からお話を伺いました。

【変わったところetc.】
・毎年お年玉をくれる。これからも続けて欲しい(市川海老蔵さん・中村勘太郎さん・中村獅童さん)。
・飛行機が苦手(板東三津五郎さん)。
・「パルコ歌舞伎」を観に来て、息子の芝居なのに自分がカーテンコールに応えていた(勘太郎さん・三谷幸喜さん)
・日本一自宅でガウンが似合う(獅童さん)


【注文したいこと】
・勧進帳2000回目指して欲しい(海老蔵さん)
・一緒に芝居をしたい(勘太郎さん)
・一緒にドライブしたい(獅童さん)
・かっこ悪い役を見てみたい(三津五郎さん)


【子どもたちから見た父・幸四郎】
・負けず嫌い・完璧主義(市川染五郎さん)
・変人(長女・紀保さん)
・自覚の無い人・・・(次女・松たか子さん)


【父へのダメ出し・・・】
・夜中のピザはもうやめて・・・
・お店が11時までなのに、5分前とか1分前に注文・・・(紀保さん)
・しかも、皆の分を注文。夕食後なのに食べられないよ・・・・
・話し出すと止まらない・・・簡潔に喋って・・・(染五郎さん)


【父への讃辞】(松たか子さん)
・芝居を愛している・・・
・子供たちにも常にライバル心をもって接してくれるからありがたい・・・
・母と結婚してくれてありがとう・・・

香取:いやあ、色々なお話がありましたが・・・。

松本:それぞれにね、心のこもったお言葉をありがとうございました。

香取:ピザ!好きですか?

松本:ええ、まあ…嫌いではないですね。

香取:それでもまあ(注文できる)時間が決まっていたりするじゃないですか。それでも食後に「今ピザが食べたい!ピザが食べたい」ってことですか?

松本:そういう感じですね。いまの感じ。

香取:子どもっぽいところがあるって言うか…。

松本:子どもですね。本当に。僕ね、大人って何だろうって思ったんですね。

香取:僕もよく考えます、それは。

松本:大人ってね…近ごろ思うんですけど、甘え上手の、甘えさせ上手な人だと思うんですよ。それは男女の間とか恋人とか夫婦とか・・・だけじゃなくて、仕事の面でも。外交の面でも、政治の面でも。日本人って甘え下手で甘えさせ下手なんじゃないかと思って、僕を含めてね。とっても甘えさせ上手で、甘え上手な人もいるんですよ。その人って割りにステキな人が多いのね。男の人も女の人も。それができるのが大人なんじゃないと思うんですね。

香取:それがうまければうまいほど大人?

松本:そうです。「ピザ、ピザ、ピザ」って言ったって、「あっ、ピザね」って言わせるような。そういうところに持っていくようなね(笑)。

そして最後に、幸四郎の見果てぬ夢とは…

僕はね、この間スペインへ旅行したんですけども、僕は30何年間「ラ・マンチャ」をやっていて、スペインへ行きたくなかったのは、そこでもって一区切り着いちゃうような気がしたんですよね。でも今度は意を決して行ったんですよ。そうしたら、そんな気持ちは微塵も起きなかったの。「風車」を前にしたら、『ああ、今まで見ていた夢は、夢のための夢だったんだ』って。60・・・僕はことし8月で64になるんですけども、64になって、そこで初めて・・・そこで初めて見る夢が本当の夢だったんだなって思えたんですよ。夢ってのは、ただ見るだけのもんじゃなくて、夢ってのはただ語るだけのもんじゃなくて、夢ってのは夢を叶えようようとするその人の心意気だ、と思えたんですね。もうずいぶん昔のことですけど、歌舞伎が一時衰退したことがあるんですよ。それが本当に…お客様の、それから松竹ならびに関係者の皆さんの努力で今日のように盛んになりましたけれども、多くの俳優さんたちは「なんとか歌舞伎を存続させよう」「消滅させてはいけない」という気持ちでいろんな試みをなさってました。そのときこれはおそらく僕ひとりだったと思うんですけど、「無くなるなら無くなれ。日本人が作った歌舞伎を日本人によって消滅させられるんだ。それなら無くなれ」って思っていました。僕はいち歌舞伎役者として消滅するその日まで歌舞伎をやろう、と…。

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