2009年05月31日 09:30
この金曜日から再びパリに来ています。日本には2週間、東京だけの滞在で、移動のない毎日。たった2週間でも同じ所に居るというのは、僕にとってはかなり珍しいのですよ。一応日本の自宅は神戸ですが、「題名」が始まってからずいぶん東京で過ごす時間が増えました。住んでみると、さすがに東京は、東京で快適です。買い物も食べる所もすぐそばにあるし、レベルも高い。ただ神戸の家がちょっと恋しいなぁ。神戸のマンションは、玄関は山に面し、リビングは海に面しており、毎日季節の移り変わりが感じられます。東京に比べれば小さい街だけれど、港があり、お気に入りのお店があり、夜景が綺麗で、しかもタイガースの試合が毎日テレビで流れている!まぁ、そんなこと言っている間に、また日本にすぐ飛び立つわけですが。パリ管弦楽団とのコンサートを水曜日に終えたら、また東京に数日滞在し、6月中頃からは、「カルメン」の稽古と公演でやっと兵庫に帰ります!「カルメン」は、何しろ世界で最も上演回数が多いオペラ。改めて譜面を見ると、やはりよく書けています。有名なナンバーが目白押しだし、ワグナーのように「僕は、どうしてもこれを鳴らしたい!」という感じではなくて、「今ある条件でどうやったら最大の効果が出せるか」を考え抜き、舞台作りを進める上での苦労や、良い意味でのしたたかさなど、作曲家ビゼーの作戦がいろいろと見えてくる。今回の演出はまだ全て付いたわけではないけれど、かなり手間暇かけて稽古は進行しています。兵庫、東京、名古屋を結んでの15回公演。プレッシャーですけれど、絶対良いものにします!

さて今回は、この4月に神奈川フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任した、金聖響さんの指揮でベートーヴェン「運命」の秘密に迫りました。聖響くんと最初に出会って、もう15年位になります。最近彼は、ゴルフが上手過ぎるところが、ちょっと僕としては気に入りませんが、才能溢れる、華が一杯ある指揮者ですよね!新しいポジションを得て、ますます彼の色がはっきりと表れる音作りにこれから向かっていくことでしょう。ぜひ精一杯頑張ってほしいと思います!ところで、指揮者のタイトルって色々あることに、皆さんはお気付きでしょうか?今回、聖響くんが就任した「常任指揮者」以外にも「芸術監督」、「音楽監督」、「首席指揮者」や、「首席客演指揮者」など様々です。一応それぞれの意味と重さが違っており、ヨーロッパでは常任指揮者や首席指揮者となると年間少なくとも、そのオーケストラの指揮台で10週間以上、10プログラムは指揮することを求められるのが普通ですし、オペラハウスだと年間3演目は新作を作らなければなりません。そして、芸術監督や音楽監督となると、全体のプログラム構成や客演指揮者やソリストの選考はもちろん、予算に関することから人事にまで関わります。けれど、何といってもオーケストラとの演奏、芸術的な成果の向上が、指揮者の最大の仕事ですから、いくら、そうした運営の会議に振り回されていても、良い演奏を保ち続けなければならないわけです。同時に、いつも同じメンバーと音作りを続けるということは、お互いの酸いも甘いも知りつくしているわけですから、発展的な結果に繋げることがより可能になります。オーケストラメンバーとの演奏だけではなく、楽団のスタッフも含めて、一緒に学び、一緒に育つ。指揮者はスーパーマンではないので、時にはミスも犯し、その時は頭を下げることもあります。だからこそ、共に作り上げた成果を、みんなと一緒に心から喜ぶことができるのです。でも、指揮者ってなかなか大変な仕事でしょう?聖響くんは、就任から数ヶ月経った秋頃にでも、ゴルフに誘ってみようかと思っています。

視聴者からのコメント
2009年06月08日 12:39
AGUS

以前の題名のない~は、良くも悪くもただ演奏を流すだけのことが多く、今回のような企画が今後も増えていくのはとても喜ばしいことだと思います。
所で、番組中でテンポの違いはホールの残響による、とコメントが有りましたが、具体的に今と昔でどう違うのかが良くわかりませんでした。
ベートーベンに限らず、クラシック音楽は時代と共に速いテンポで演奏されることが多くなる、とどこかで聞いたような気がするのですが・・・。

2009年06月06日 10:58
ワルツ33番

タイからお送りしています。佐渡さん、私もこの番組は、とても大好きです。3歳からピアノを習っていて音楽に興味を持っています。番組に出ている佐渡さんの姿にあこがれています。ベートーベンの交響曲は、どれもすてきなものばかりですもんね。これからも、ますますの活躍を、期待しています。がんばってください。 

2009年06月01日 14:39
ぼもやん

小3と小1の娘と一緒に見ました。わらべうたの回ですっかり『題名のない音楽会』が大好きになった二人です。クラッシックはまだ難しいのかな~?と思いながら聞いた今回の『運命』ですが、調の変化で一つの曲がさまざまに聞こえることに、素直に驚き、感動していました。次回の『アレンジバトル』ではどんな反応を見せるか、番組からも子どもたちからも目が離せません!

2009年06月01日 10:28
yue

昔ながらのスタイルでの演奏。とっても驚きました!母とTVの前で”いいねぇ~”と唸ってました。
素人ながら一つ一つの楽器の音が良く聞こえていて・・
楽しい企画、また御願いします!

え?聖響さん、ゴルフがお上手なんですか?佐渡さん頑張って!!

2009年06月01日 08:43
ボンスケ

楽器の配置によって聞こえ方が違ってくるという実験は興味津々でした。いっそのこと、管楽器や打楽器を前面に、弦楽器を後部に配置したオーケストラを一度聴いてみたい。もちろん、それで効果の出そうな曲を選んだ上で。期待しています。

2009年05月31日 17:11
oka

中学校2年生の音楽の教科書に載っている「運命」を多方面から分析、演奏していただきありがとうございました。音楽教師の僕にとって、今回のプログラムは演奏法や作曲、楽器の配置による響きの違い、指揮者のこだわりなどに大勢の生徒が興味を持つことができる内容で、とてもうれしかったです。冒頭の「八分休符」の存在する意味を感じてもらい、生徒の口から「緊張感をもたせるため」という言葉が出てくるような授業を目指します!!

2009年05月31日 14:58
みこ

「対向配置」、編成、テンポなど、その時代の再現と聖響さんの色を出された演奏、堪能いたしました♪ いろんな実験も、子供と一緒に楽しみました。再来週、聖響さんのベートーベンを聴きに石川県立音楽堂へ行きます!楽しみにしています!!

2009年05月31日 12:52
40年来のファン

休符なし、和声つきの実験演奏。これぞ、題名の真骨頂でしょうか。ユニゾンは、単純なが
ら、これでなくては、という場合があるんですね。ベートーベンの曲は、練りに練られていて
いて、寸部の変更の余地がないこと、物理数学の変分原理から、諸方程式が導かれるような
ものなのでしょうか。これと対照なのが、ブルックナー。自身に数稿あり、それぞれに、
ハース版、ノヴァーク版あり。聴いても区別がわからないのも。
黛さんの時、田園第一楽章の展開部が単純すぎるというので、直純さんなどが、改訂
作曲演奏した事ありましたね。それなりに面白かったです。

2009年05月31日 10:49
あると・ママ

いろいろな「和音」のところでは、一緒に観ていた子ども達も笑い転げたり、「おぉ~」と声を出したり、楽しんでいました。こんな実験をオケを使って贅沢に聴かせてくれるのは『題名…』ならではです!

2009年05月31日 10:21
ぼたん

おパンツのゴムが伸び切ったような「運命」ではやっぱりちょっと。。。とてもわかりやすい説明をいただいて、楽しかったです。ベートーベン氏はやっぱり天才だとよくわかりました。
パリへのお里がえりはいかがでしょう。海外ではベルリンに引っ越されたそうで、パリにお宅がないことが少しさみしく、またなつかしく感じておられるところでしょうか。そちらでのご成功をお祈りします。
神戸へも、お早うおかえりを!先日市長さんから安全宣言がでて、街がおちつきを取り戻しました。みんなでマスクをつけてがんばった成果です。1週間自宅で過ごした街じゅうの子どもたちを、2週間友達の無事を祈りながら自宅ですごした高校生たちを、どうぞほめてやってください。
若葉が美しい神戸の街へみなさん来てやってくださいね。

2009年05月31日 09:52
しのママ

 なんと疾走感の溢れる運命だったことでしょう。前回もワクワクしながら観ていたのですが、今回はドキドキしながら感じられる運命でした。特にその時代を再現しながら・・・なんて、とっても素敵な時間でした。金聖響さん!!ブラボー!!

2009年05月31日 09:45
サドラー2号

対向配置での「運命」、とても興味深かったです。TVを通しても、ちゃんといつもと聴こえ方が違うのがわかりました。向かって左側から低音が聴こえてくるのって、新鮮!今の録音技術の高さに驚きました。
次週からも面白い企画が目白押しですね。とても楽しみです。

2009年05月31日 09:38
emiemi

ずっと疑問だった「対向配置」の意味がわかりました。色々勉強になります。。。演奏方法以外に、当時の楽器を再現して演奏したら、(フルートならトラヴェルソにするとか)また印象がかわるのかしら。

2009年05月31日 09:30
げ@一介のリスナー

超がつくほど有名な通俗名曲の代名詞、ベートーヴェンの第五交響曲ですが、腑分けすればするほどその凄味が分かってきますね。作曲の技法、管弦楽法、演奏法、各方向から納得づくの内容で、これは勉強になりました。