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D日記 #347 プリンスエドワード島/カナダ

今回取材で伺ったネリーズ・ランディング・マリーナでは、宿泊客向けに電動自転車の貸し出しが行われています。オーナーのジェンさんがそのアイデアを思いついたきっかけは、「コンフェデレーション・トレイル」。かつて島を駆け抜けた鉄道の線路跡です。1989年に鉄道が廃止され、レールが撤去された後、1990年代に車の入れない遊歩道として生まれ変わったこの道は、今ではサイクリングや散策を楽しむ人々に愛されるトレイルとなっています。

かつて島を汽車が走っていたという話を聞いて、ふと思い出したのが『赤毛のアン』の冒頭です。

物語の中で、孤児だったアンは養子として迎えられることになり、船でプリンス・エドワード島へ渡ります。そして汽車に乗り、待ち合わせの駅へ。ところが、そこで待っていたのは、男の子を迎えるつもりだったマシュー・カスバートでした。

手違いでやって来た少女を、本来なら送り返すはずだったマシュー。しかし、駅に残されたアンをそのまま置いて帰ることができまず、グリーン・ゲイブルズへ連れて帰ったことからストーリーが動き始めます。

汽車と駅は、アンが新しい人生へ踏み出し、マシューやマリラと出会う、物語の大切な出発点。一つの手違いから始まった出会いは、やがてかけがえのない家族の愛へと育まれていきます。

そんな物語を作者ルーシー・モード・モンゴメリが生んだ時代に島を走っていた汽車はもう存在しません。 

かつて列車が行き交った線路は取り払われ、その跡は、車の入れないコンフェデレーション・トレイルへ。今では人々が歩き、自転車に乗り、島の風景をゆっくりと楽しむ道になっています。

汽車が人を運んだ道は、時代とともにその役割を変えました。それでも、旅する人を新しい場所へ導くという役割は、今も同じ。

アンが汽車を降りた駅で、思いがけず新しい家族と出会ったように。このトレイルをたどる旅人たちもまた、プリンスエドワード島の美しい風景や人々と出会い、それぞれの新しい物語を見つけているのかもしれません。