DIARY
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D日記 #348 プリンスエドワード島/カナダ
ペリーさんの体験ツアーボートが出航するジョージタウンは、ムール貝の養殖と深い関わりを持つ港町です。私たちが取材で訪れた日も、港の周辺では何隻もの船が行き交い、海の上ではムール貝の養殖作業が行われていました。
プリンスエドワード島は、実はカナダ最大のムール貝の産地。島で養殖されているのは主にブルーマッスルと呼ばれる種類で、冷たく栄養豊かな海と、風から守られた入り江や湾が、養殖に適した環境をつくっています。プリンスエドワード島産のムール貝は、カナダ全体の生産量の約80%を占めているというから驚きです。
取材を終えて港に戻ると、ペリーさんが「少し食べてみて」と、船小屋から茹でたムール貝を持ってきてくれました。この日は、ボートの上でウエディングパーティーを予定しているお客さんを乗せるため、ペリーさんはすぐにまた出航しなければなりません。それでも、お客さんたちのために用意していたムール貝を、私たちにも少し分けてくれたのです。
しかも、味付けは海水だけ。
目の前に広がる海で育ったムール貝を、その海の水で茹でる。ふっくらと肉厚な身を口に入れると、貝そのものの甘みとともに、ほどよい塩気と海の香りが広がります。
調味料を加えていないからこそ、その味は驚くほどまっすぐでした。
「これが、この海の味なんだ」
そう思わせてくれるような、まさにプリンスエドワード島の海を丸ごと味わう一皿。新鮮なムール貝のおいしさはもちろん、その場で海を眺めながら食べるからこそ、より強く感じられる味でした。
そして、この海の恵みに満ちた島を語るうえで、もう一つ欠かせないのがオイスターです。
プリンスエドワード島では、冷たく浅い入り江や湾を利用した牡蠣の養殖も盛んに行われています。面白いのは、同じ島で育った牡蠣でも、育つ場所によって味わいが大きく変わること。
水に含まれるミネラルや塩分、栄養、潮の流れなど、その土地ごとの海の環境が、牡蠣の味をつくります。
そのため、牡蠣は単に「プリンスエドワード島産」とひとくくりにするのではなく、どこの湾で育ったのか、その「海」まで含めて楽しむことができます。
例えば、Colville Bayの牡蠣は塩気と甘みのバランスが特徴的で、Raspberry Pointはすっきりとした後味が魅力。それぞれに異なる個性があります。
海を旅して、その土地のものを食べる。
それは、ただ新鮮なものを味わうということではありません。
どんな海で育ち、どんな人たちがその海と向き合い、どのように私たちの食卓まで届けているのか。
プリンスエドワード島では、ムール貝も牡蠣も、ひと口食べるたびに、その土地の海が見えてくる。
海の恵みを味わうことは、その海の物語を味わうことなのかもしれません。
