過去の放送

2018年3月3日放送 「福井・熊川宿 本葛」

『日本三大葛“熊川葛”復活』
ロケ地:福井県若狭町

今回注目する食材は、福井県若狭町産の“熊川葛”。そのおいしさの秘密を探るため、和菓子界の重鎮・佐々木勝さんと雛形あきこさんが現地を訪れる。

福井県若狭町にある熊川宿は江戸時代、鯖街道の拠点としても栄え、鯖寿司はこの町の名産品。そして、もうひとつの名産品が“熊川葛”だ。“吉野葛”“秋月葛”と並んで日本三大葛のひとつといわれ、江戸時代には鯖街道を通って京都の菓子店にも運ばれていたが、40年前にその生産の過酷さにより、作る人が途絶えてしまったいう。

そんな熊川葛を8年前に復活させたのが、葛作りの匠・西野徳三さん(72歳)たち。今回、復活の噂を聞きつけた佐々木さんはこの目で熊川葛ができるまでを確かめたいと、若狭町を訪れたのだ。

作業場の裏には、熊川宿の歴史にまつわるさまざまな資料が保管されており、西野さんたちは江戸時代の書物を読んで、見よう見まねで葛作りをはじめたと話す。しかし、純白の本葛を作り出すには、多大な手間と時間がかかるという。純白の本葛を生み出すため、西野さんたちはどんな過酷な作業をこなしているのか…!?

西野さんたちの苦労を目の当たりにした佐々木さんは、極上の熊野葛を使って腕をふるうことに。はたして、佐々木さんはどんな和菓子を作り出すのか…!?

今回のシェフ・レポーター

雛形あきこ(女優)
佐々木勝(『菓匠 京山』主人)

地元の匠

葛作りの匠
西野徳三さん

匠の仲間
藤本正夫さん
杣長次郎さん

今回登場した料理

ひな祭りの和菓子のお盆

練切のお雛様

葛まんじゅう

葛玉のぜんざい

『葛』

伝統の葛作りの製法

葛はマメ科の植物です。
夏の間、光合成で作り出したデンプンを根っこに蓄えて、冬に備えます。
その根っこのデンプンが葛粉の原料になります。
洗った葛根を粉砕して、細い繊維にします。
その繊維を水で揉み、デンプンを搾り取ります。
西野さんたちは、すのこに並べて、踏んで絞ることにしました。
その絞り汁を1日置くと、水より重いデンプンと不純物が底に沈殿するので上水を捨てます。そこに新しい水を足し、竹の棒で撹拌し、サラシで漉す。
これを繰り返すのが「寒晒し」と呼ばれる伝統の葛作りなんです。
西野さんたちは2か月間25回ほど繰り返し、純白の熊川葛に仕上げます。
1キロの葛根からわずか4%、40gしかできない貴重な本葛です。

和菓子を美しく飾る葛の秘密

大事なのは葛の透明感、「美しいことが大切だから」と佐々木さんは言います。
水で溶いたデンプンを加熱すると、糊状の透明な液体となり、これを「糊化」といいます。
葛の他にも、じゃがいもやトウモロコシなど色々な種類のデンプンがありますが、この涼しげな透明感は、葛ならでは。
形が作りやすいもも葛の特長です。
佐々木さんは「良い葛はピンと立つ、コシが切れると立ってくる」と言います。
型崩れしないのも和菓子には大切なんです。

葛ならではの、なめらかな透明感と、加工しやすい性質。
葛は和菓子には欠かせない存在なんです。