過去の放送

2017年9月9日放送 「放牧豚」

『一流シェフを魅了する “放牧豚”』
ロケ地:福島県郡山市

今回注目する食材は、福島県郡山市産の放牧豚。そのおいしさの秘密を探るのは、牛、豚、鶏はもちろん、カモやシカなど厳選した国産肉を熟成させて究極のうま味を引き出す神谷英生シェフと、大相撲の元大関・把瑠都。放牧豚を飼育する夫婦を訪ねるほか、神谷シェフが肉のうま味を引き出す“熟成の技”を披露する!

2人が訪ねたのは、放牧豚の“匠”・降矢敏朗さん(66)と妻のセツ子さん(63)。
降矢さん夫妻は、傾斜地を利用して開いた5カ所の放牧場で、10頭ずつ合計50頭の三元豚を放牧している。
三元豚は通常生後6カ月、体重120キロくらいまで育てたところで出荷されるが、降矢さんは10カ月かけ、200キロ前後になるまで大きく育てているという。出荷間近の10カ月の放牧場を見学した神谷シェフは、モモのシルエットがいいと絶賛!降矢さんによると、斜面を登ったり降りたり…とたっぷり運動するため、モモに筋肉がつくという。
さっそく神谷シェフがモモ肉を分厚くカットして、バーベキュー。カットした肉を見た把瑠都は「霜降りが、牛肉みたい!」とビックリ。味付けは塩だけ、炭火で焼き上げた、超厚切りのモモステーキの味は…!?

そんな放牧豚の肉質に感動したシェフは、究極のうま味を引き出すため、自身の店で降矢夫妻の放牧豚の肉を熟成させることに。
熟成させること2週間、神谷シェフは降矢さん夫婦と孫2人を店に招いて、完成した熟成肉をふるまう。はたして、神谷シェフはどんな熟成肉を作り上げたのか…!?
また、生物学者の福岡伸一氏が放牧豚がおいしい理由を、科学的な視点から詳しく解説する。

今回のシェフ・レポーター

把瑠都(元大関)
神谷英生(『ラ・ブーシェリー・デュ・ブッパ』オーナーシェフ)


地元の匠

降矢敏朗さん、セツ子さん



今回登場した料理

「放牧豚の熟成ロースト」

『放牧豚』

いいとこ取りの『三元豚』
匠の放牧豚、肉質はしっかりしているのに硬くないのは一体なぜなのか?
福岡博士に聞いてみました!


福岡伸一
(生物学者、青山学院大学教授)

福岡「食用の豚には、ランドレースや、大ヨークシャー等、さまざまな品種があります。それぞれに、子供をたくさん産む(繁殖能力の高さ)、大きく育つ(肉の生産性の高さ) 、食感や風味がいい(肉質の良さ)等の特長があります。いろんな品種の豚を掛け合わせるとそれらの特長を併せ持った雑種ができるわけです。」

3つの品種を掛け合わせた雑種を「三元豚」といいます。
匠の降矢さんが育てている三元豚は、 ランドレース・大ヨークシャー・デュロックを交配したもの。

福岡「デュロック種には、肉にサシが入り、 霜ふりになるという特長があります。 運動量が多く、筋肉が発達しても、脂肪のサシが入るので、硬くならず、おいしい肉になると考えられます。」

熟成肉のおいしさの秘密とシェフの技
最近よく聞く「熟成肉」。そもそも肉を熟成させるというのはどういうことなんでしょう?

福岡「肉の熟成とは、科学的に言うと、肉の中の酵素が筋肉タンパク質を分解することです。
そうすると、肉は柔らかくなり、うま味成分も増えます。」

今回、神谷シェフが使ったのは、『枝枯らし』という熟成方法。最初の1週間は、湿度0%、4度の低温の熟成庫で、まず水分を抜き、うま味を凝縮させます。
さらに、湿度を50%に上げ一週間。
こうすることで、じっくりうま味を増やし、しっとりした熟成肉に仕上げたんです。