過去の放送

2017年7月22日放送 「わさび」

『奥多摩が育む極上わさび』
ロケ地:東京都奥多摩町

今回は究極のわさびを求めて、そば職人・細川貴志さんと俳優・前川泰之さんが、東京・奥多摩町を訪問。細川さんがわさびの香りを存分に楽しめる、究極の天ぷらそばを披露する。

2人が訪ねたのは、わさび生産者の佐藤勉さん、通称“わさびの勉さん”。妻の順子さん、仲間の井草さんと3人で、およそ200坪のわさび田で毎年4,000本のわさびを育てているという。
2人は佐藤さんたちが作ったモノレールに乗せてもらい、山を上がることに。標高400メートルの地点まで来ると、急斜面に沿ってわさび田が広がっていた…!

わさび田は、水がきれいなことが最も大事だという佐藤さん。佐藤さんのわさび田は湧水がある場所を探して造成したもので、湧水は1年を通じて水温の変化が少なく夏でも冷たいため、わさびにぴったり。急斜面に段々畑のように作り、湧水がわさび田全体に流れるようにしているという。
この日は、2年前に植えたわさびを収穫する日。収穫したばかりのわさびを味わった細川さんは、辛味と甘味の調和に感心! 「これはそばに合う!」と絶賛する。
その後、見晴らしのよい休憩場所で、妻・順子さん特製の“わさびのおにぎり”と“わさび漬け”をご馳走になった2人。奥多摩の絶景を楽しみながら、わさびの香りをふんだんに味わって大満足する。

実は、佐藤さんは奥多摩出身ではなく、奥多摩には家族旅行で訪れたのが縁だという。その際、奥多摩の美しい自然に一目ぼれ。「いつかはここに住みたい」と考えていたところ、紹介されたのが20年以上放置されたわさび田だったという。普通なら手を出さない場所だが、農業に関心があった勉さんは、一念発起! 会社勤めのかたわら、週末は奥多摩に通い、荒れたわさび田を10年かけて修復したのだ。やがて、佐藤さんのわさびは奥多摩で認められ、会社を定年退職したのをきっかけに移住。名実ともに“奥多摩わさびの勉さん”になったと話す。
そんな佐藤さんの情熱に感心した、そば職人・細川さん。奥多摩産のわさびを主役に据えたそばを披露することに…! 「薬味を見れば、職人のやる気がわかる」という持論を掲げる細川さんが考えた、わさびの辛味と香りをふんだんに生かしたそばとは…!?
このほか、生物学者の福岡伸一氏が科学的な視点から、わさびの辛みの意外な秘密を解説する。

今回のシェフ・レポーター

前川泰之(俳優)
細川貴志(『江戸蕎麦 ほそ川』主人)


地元の匠

佐藤 勉さん



今回登場した料理

佐藤順子さん
「わさびのおにぎりとわさび漬け」

細川貴志シェフ
「奥多摩やまめの天せいろ」

『わさび』

鼻をつまむとわさびとからしは区別ができない?

福岡伸一
(生物学者、青山学院大学教授)

わさびとからし、全く違う味だと思っていましたが、目をつむり、鼻をつまんで味わってみると…意外とわからないんです!

福岡「辛味成分というところについてだけ言えば、どちらも同じアリルイソチオシアネートという物質なんです。
だから、色も匂いの情報も遮断し、味だけで判断しようとすると区別がつかないんです。
口に入ってそこから鼻に抜けていくグリーンノートというわさび特有の揮発成分がわさびの香りを演出してくれているので、我々はそれがわさびだと感じるんです。」

わさびとからしの辛味成分は同じ。違いは主に香りなので、鼻をつまむと区別できないんですって!

刻んだわさびのおいしさの秘密 『口内調理』

福岡「擦ったわさびをそばつゆに混ぜてしまうと、香気成分が水に溶けて香ってこない。そばにのせるとそばの香りがわさびに負けてしまう。でも刻んだ状態だと、わさびの香気成分(香り)はわさびの細胞の中にまだ閉じ込めらたままなんです。」

わさびを擦ると、細胞が壊れて辛味や香りが生まれます。
刻んだだけだと辛味も香りも弱いのですが…

福岡「歯で噛んで、初めて細胞が壊れて香味成分が口の中で引き立ってくる。これはなかなか画期的なおそばとわさびの食べ方だと思います。」

博士も絶賛の科学に基づいたこの食べ方。
口の中で噛んで味を完成させることを口内調理といいます。
昔から日本人はごはんとおかずを分け、それらを口の中で合わせることで複雑なおいしさを生み出してきました。
口内調理は日本の食文化に欠かせないものなんです。