児童養護施設で暮らす子どもたちの発表会「子どもキラット!楽演祭」を、11月11日(日)、東京・虎ノ門のニッショーホールで開催しました。今年は、東京都、神奈川・埼玉・千葉3県の計11の施設から300人が出演し、15の演目を競演。見学者を含め500人が、3時間半にわたって各施設の子どもたちの発表を楽しみました。
このイベントは、施設の子どもたちの日ごろの文化活動の目標となるような発表の場をつくってほしいという声を受けてスタート。今年で7回目となりました。演目は合唱、創作ダンス、ハンドベルなどの楽器演奏、日本舞踊、お笑いなど多岐にわたります。幼稚園児から高校生まで、子どもたちはこの日のステージに向けて、施設によっては先生や卒園生も一緒になって、夏休みも欠かさずに練習を重ねるなど熱心に取り組んでおり、年々レベルも上がってきています。
子どもたちを盛り上げてくれる今年のスペシャルゲストは、「最強の地下アイドル」といわれる「仮面女子」の8人のユニット「スチームガールズ」。リーダーの猪狩ともかさんは、今年4月に遭った事故で下肢に障害を抱えましたが、リハビリを続けて8月には車いすで活動を再開。今はメンバーとともにステージに出演する一方、パラスポーツの大会や野球の始球式、イベントなどへ激励にも訪れています。そんな猪狩さんを含め、「仮面女子」みんなが、さまざまな困難に負けず、支え合って笑顔で元気に立ち向かっていくアイドルとして知られています。
秋らしい晴天に恵まれたこの日、子どもたちは施設のバスや電車で午前9時すぎから次々と会場に到着。まずは順番にリハーサルに臨みました。司会はテレビ朝日の池谷麻依アナウンサーと、「高校生の海外生活体験の旅2018」に参加した児童養護施設の高校3年生男子、同2年生女子の高校生コンビ。舞台でスポットライトを浴びるのは初めてと緊張していた2人ですが、池谷アナウンサーに優しく話しかけられながら徐々にリラックス。念入りにインタビューの質問や立ち位置などを確認していました。
午後1時半、杉村事務局長の「開会宣言」で開演。来賓としてお越し頂いた方々、お祝いのメッセージの紹介のあと、さっそく演目がスタートしました。トップバッターは賛美歌をもとにした「キッズ・ゴスペル」。女子高校生のよく通るアカペラで幕を開け、会場を驚かせてくれました。続いて、歌とダンスによる「夢をかなえてドラえもん」、トランプの妖精が舞踏会で演じるという設定のユニークな創作舞踊。そして「キラット!楽演祭」史上初めての演目、「お笑い」が登場。2人の中高生と先生の微妙な間合いや物真似に、子どもたちの無邪気な笑い声が何度もホールに響きました。このあと、日本舞踊や合唱、ヒップホップダンス、きらきらする音色のトーンチャイムの演奏で第1部の子どもたちの演目は終了。いよいよ、スペシャルゲスト、「仮面少女」の登場となりました。
幕が上がり暗転から徐々に明るくなって、原色のきらびやかな衣装と仮面をつけた8人が登場。アップテンポの曲で歌とダンスが始まると、会場の子どもたちから歓声と手拍子が。車いすの猪狩さんも含めて、ピタリと揃ったキレ味のいい激しい動きが次々と繰り出されました。途中、メンバーが客席に降りて通路をまわりながら、ペーパーガンで紙テープのようにトイレットペーパーを噴き出させると、子どもたちも大興奮。最後は全員仮面を外して並び、MCチームから「マイブームは?」、「将来の夢は?」などと質問を受け、にぎやかなおしゃべりタイムに。メンバー最年少はこの日が誕生日の16歳とあって世代も近く、子どもたちにも一気に親しみやすい存在になったようでした。
さて、休憩をはさんで第2部は美しいミュージックベルの演奏からスタート。一糸乱れぬストリートダンス、施設で50年以上の活動の歴史をもつ合唱、3つのグループによるヒップホップダンスメドレー、難曲にも取り組んだハンドベル演奏、「これがわたし」という、一人ひとりの存在をいきいきと表現した創作ダンスと、レベルの高いパフォーマンスが続きました。最後は総勢40人近い子どもたちと先生による、新聞をこする音や手拍子も加えた独創的で楽しい合唱でした。
いよいよ迎えたフィナーレは、この日の参加者全員で「幸せなら手をたたこう」を合唱することに。池谷アナの誘導で、「仮面女子」のメンバー、そして客席にいた子どもたちが一斉に舞台にあがり、ステージはたちまち立錐の余地もない満杯状態に。猪狩ともかさんが呼びかけてリードをとりながら、全員大きな声で歌い終えると大きな拍手が沸きました。このあと、そのままステージで記念写真を撮影。「仮面女子」のメンバーたちは大人気で、しばらく身動きがとれないほど子どもたちに取り囲まれ、話しかけられていました。
当事業団としては、施設の子どもたちが一つの目標に向かって何カ月もかけて一緒に練習や創作に取り組み、そのゴールとして大きな晴れ舞台に立って達成感や一体感を感じてもらうことで、前向きに頑張ることやみんなで力を合わせることの楽しさ、大切さを学ぶ機会となることを願っています。また、他の施設の子どもたちの様子や発表をみて、お互いに学んだり刺激を受けたりして、より成長するきっかけにもしてもらいたいと思っています。
共催の東京都社会福祉協議会児童部会、後援・助成いただいた原田積善会、後援のテレビ朝日、施設関係者の方々をはじめ、ご協力・ご尽力いただいたすべての皆さまに感謝いたします。
≪参加施設へのアンケートから抜粋≫
日時:平成30年11月11日(日)
場所:ニッショーホール(東京都港区)
主催:テレビ朝日福祉文化事業団
共催:(福)東京都社会福祉協議会児童部会
後援:(公財)原田積善会・テレビ朝日
東京都内の児童養護施設がさまざまなスポーツで競い合う「江戸っ子杯」。その野球の部が、10月14日(日)、府中市の「トヨタ府中スポーツセンター」で開催され、7施設4チームの子どもたちや職員およそ160人が参加し、球音と元気な歓声を響かせました。
例年7月の開催でしたが、今年は猛暑でやむなく順延。新たに設定したこの日も前夜から天気が崩れ一時は開会が危ぶまれましたが、朝になって徐々に好転。やや遅れたものの無事開会でき、昼からは青空が広がって、文字通り秋晴れの下での大会となりました。
始球式に来て頂いたのは千葉ロッテマリーンズで「魂のエース」と称された投手、黒木知宏さん。ゆっくりと投げた球をキャッチャーの子がきちんとミットに収めたのを見て、「よし。レベル2!」、「次はレベル3いくぞ!」と速度を上げて投球。「ナイスキャッチ!」という掛け声が何度も響く異例の始球式となり、さっそく子どもたちを沸かせました。
今年は、順延で他の行事と重なって出場できなくなった施設も出たため、参加は「聖ヨゼフホーム・二葉むさしが丘学園」、「石神井学園」、「調布学園・調布第二学園」、「至誠学園・至誠大地の家」の4チーム。選手の顔ぶれは、小学校低学年から中学生まで年齢も背丈も体力もさまざま、また不慣れな子から経験豊富な子まで技量もさまざま。男子に交じって女子の姿も目立ちました。各チームとも応援のにぎやかな歓声をバックに、こうした違いを超え一体となって、ボールを狙い、夢中で追い、懸命に走り、仲間同士で気合いの声を上げ、真剣勝負を繰り広げました。
決勝戦は「調布学園・調布第二学園」(以下調布)対「至誠学園・至誠大地の家」(以下至誠)。小学三年生を主軸とした「至誠」は、ピッチャーが、体格のよい中学生が揃う強豪「調布」の打線を相手によく踏ん張り健闘。しかし「調布」は、ピッチャーが球威のあるストライクで攻め続けて「至誠」打線を完全に封じ込める一方、後半からはスキを狙って長打で得点を重ね、最後は9対0で圧勝。見事三連覇を達成し、実力を見せつけた形となりました。3位決定戦では「石神井学園」が勝利しました。
試合の合間には、黒木さんが子ども相手にキャッチボールをしたり、次の試合へアドバイスをしたり。また、快くサインや写真撮影を受けて頂き、並んだ子どもたちはカバンやバッド、頬にまでサインをもらい、大喜びでした。
閉会式では、テレビ朝日福祉文化事業団が全チームにトロフィー、副賞としてバッド、グローブを、最優秀選手賞となった「調布」のピッチャーには楯と副賞のウインドブレーカーを贈呈しました。子どもたちには、今後もスポーツを続けて、健康や体力増進とともに、一つのことに打ち込む楽しさやチームワークの大切さも学んでいくことを期待しています。
日時:平成30年10月14日(日)
場所:トヨタ府中スポーツセンター(府中市)
主催:(福)東京都社会福祉協議会児童部会
共催:テレビ朝日福祉文化事業団
後援:東京都、(公財)毎日新聞東京社会事業団、(公財)報知社会福祉事業団、トヨタ自動車株式会社
今回3回目となる「~テレビ朝日に集合~児童養護施設で生活する児童のためのテレビ朝日見学と特別講座」をテレビ朝日本社で行いました。
当日は、青空の広がる秋晴れの好日となり、テレビ朝日本社2階のプレゼンルームに東京都と埼玉県から2つの児童養護施設12人の参加者が集まりました。参加者は少し緊張した面持ちで施設ごとに着席。全体説明の後の簡単な自己紹介では、大型スクリーンに映し出された自分の映像を見て、恥ずかしがりながらも笑顔でしっかり自己紹介ができていました。
館内見学の前に、テレビ朝日の仕事を15分にまとめたDVDを鑑賞し、約1時間の見学に出発しました。テレビ朝日お客様フロント部担当者の先導で、本社5階廊下のガラス越しに、4階のニューススタジオを見学。スタジオセットのクロマキー技術やアナウンサーが使っているプロンプターカメラの仕組みなどの詳しい説明に目を輝かせていました。当日生放送予定の「サンデーステーション」で使用される第3スタジオでは、カメラ調整中のスタジオに入って、スタジオセットの配置が使い勝手よく工夫されていることや、美術セットの具体的な説明などを聞くことができました。その後、番組で使用する小道具から大道具、スタジオセットまであらゆる物を扱っているコーポレートデザインセンター前に移動すると、実際にドラマやバラエティー番組で使用された小道具をスマホで自撮りしたり、手に取って重さを確かめてみたりして、興味津々といった様子でした。
10分間の休憩の後、後半の特別講座は、最初にニュース番組についての全体的な説明からスタートしました。続いて、ニュースカメラマンの講義では、新人カメラマンの研修についての苦労話やスクープ映像の裏話など、テレビを見ているだけではわからない話に参加者たちは皆真剣に耳を傾けていました。元アナウンサーの「話し方を学ぼう」では、全員で大きな声で発声練習などをしながら、話し方、伝え方、コミュニケーションの取り方などを学びました。実際に放送で使用されたニュース原稿をニュース映像に合わせて読み上げ、アナウンサーの仕事を体験しました。
また、インタビューのコツを具体的な例を参考にして学んだあと、事前に用意してきた各自の好きな物についてインタビューをする「これが私の好きな物」の番組制作を体験しました。2つの施設ごとにチームとなってインタビュアー、ゲスト、カメラ、音声の役割を決め、チームごとに交代で本番を体験しました。できるだけインタビュアーとゲストを児童が担当するようにして、どのチームも練習の成果を本番で発揮。本番の様子は、会場の大型モニターに映し出され、各々自分の役割を楽しみながら番組制作を体験することができました。実際のテレビカメラを初めて使って、「本物のカメラは、すごく難しい」と感想を漏らす児童がいたり、「アナウンサーの仕事は、たいへんなんだ」と思った児童もいたようです。
予定時間を少しオーバーし3時間半にも及んだ館内見学と特別講座ですが、有意義な時間を過ごすことができ、皆疲れを見せずに帰路につきました。後日児童養護施設職員の方から「子どもたちが、とても楽しかったので、また参加したいと言っています」との感謝の言葉もいただきました。
今後、テレビを見る時に今日の体験を思い出し将来に向けての視野を広げてくれればと思います。事前準備をしてきてくれた参加施設の職員の方々、広報局お客様フロント部、報道局ニュースセンター、OBの皆さんの協力を得て無事終了することができました。協力していただいた皆様に心から感謝申し上げます。
参加者の感想(抜粋)
Yさん 小6
Oさん 小6
Yさん 小6
Yくん 小6
Mくん 小6
Yさん 高1
Mさん 高2
Tさん 職員
日時:平成30年9月23日(日)
場所:テレビ朝日(東京都港区)
主催:テレビ朝日福祉文化事業団
後援:(福)東京都社会福祉協議会 児童部会
協力:テレビ朝日(広報局お客様フロント部 報道局ニュースセンター)
「親子で一緒に、楽しい時間を!」
子育て中のファミリー向けに、女優・中井貴惠さんと「大人と子供のための読みきかせの会」によるイベント「絵本の世界へようこそ」を9月30日(日)、品川区の学研ビル3階ホールにて開催しました。当日は、台風接近中の不安定な天候にもかかわらず、近隣の小さなお子様連れの家族など175名の方がお越しくださいました。
今回朗読するのは、中井貴惠さんが再話を手掛けたアンデルセン童話の絵本「はだかの王さま」です。100万枚の服を持っている王さまが、「新しい服が欲しい」「めずらしい服が欲しい」と家来に言います。家来が頭を悩ませていると、「愚か者には見えない服」を作るという仕立て屋さんが現れます。
中井さんが話し始めると、ステージの上の大きな絵本も開きます。
音楽に合わせて登場人物がイキイキと目の前で動き出しました。
大人も子供も絵本を見つめお話の世界に入っていきます。
クローゼットにはカラフルな服がいっぱい。
絵本の中で、王さまは何度も何度も着替えます。
「トンカラ トンカラ トントントン♪」
仕立て屋さんは機織りで調子よく服作りです。
大人も子供もみんなで「トンカラ トンカラ トントントン♪」
大きな声で歌って仕立て屋さんを応援しました。
はたしてその珍しい服は王さまや家来には見えるのでしょうか?結末はどうなってしまうのでしょうか?
中井貴惠with大人と子供のための読み聞かせの会による「絵本の世界へようこそ」は中井さんが朗読して、荒井素子さんが作曲し高橋真理子さんとともにピアノ演奏されるオリジナル音楽と、平野知代子さんと宗佳代子さんが手作りして操作する大きな仕掛け絵本(パネルシアター)が合わさって、とても魅力的な絵本の世界を作り出す公演です。結成以来この20年、小学校や幼稚園、小児病棟などで今までに1300回以上の公演を積み重ねてきただけあり、息もぴったりです。会場のみんなが絵本の世界に入りこみ、軽快な音楽とともにお話は進んでいきました。あっという間の約1時間の公演が終了すると大きな拍手の音が響きました。
参加した方たちがこのひと時を楽しみ、笑顔を浮かべ子供たちと帰って行くのを嬉しく見送りました。ロビーでは「はだかの王さま」の絵本を手に取った女の子が、「この絵本欲しい」とお母さんにおねだり。中井さんから絵本にサインをしてもらうと、「絵本を大切にするね」と約束の指切りをしていました。
テレビ朝日福祉文化事業団では、「地域における公益的な活動」として、中井貴惠の「絵本の世界へようこそ」を開催しています。今回の会を開催するにあたり、主催として会場をご提供、運営していただいた学研プラス、ご協力を頂戴した皆さんに深くお礼申しあげます。
日時:平成30年9月30日(日)
場所:学研ビル 3階ホール(東京都品川区)
主催:学研プラス
共催:テレビ朝日福祉文化事業団
協力:絵本文化推進協会
制作協力:オンザフィールド
慈彩会は自然を愛し美を愛する各界の有志で、日ごろから絵画・書・工芸などに親しむ方々が集い、“社会福祉施設に絵を贈る運動”として1958年(昭和33年)に発足しました。毎年1回日本橋三越本店で展覧会を行っており、今年は第60回記念展として開催されました。出品作品はすべて作者から無償で提供され、社会福祉施設に寄贈されています。また希望者への販売も行われ、収益金は助成金として社会福祉活動に役立てられます。
今年は第60回記念ということで、記念式典も開催されました。54回も出展された女性書家の方などに感謝状が贈呈されました。また、この展覧会には毎回、常陸宮妃殿下からも御出品いただいており、今回も妃殿下の「新年歌会始の詠進お歌」(書)の特別御出品をはじめ、総計164点もの作品が出展されました。洋画・水彩画・日本画・書・工芸・写真と多岐にわたる素晴らしい作品が会場に所狭しと飾られ、中には思わず笑いを誘うユニークな作品や、109歳の作者の「ちぎり絵」などもあり、見ごたえのあるものとなっていました。
これまでに全国の福祉施設に贈呈された作品は累計で5497点、延べ3776施設、助成金は8170万7千円となりました。テレビ朝日福祉文化事業団は、今後も慈彩会展への後援・助成を通して社会福祉に役立てるよう取組んでまいります。
日時:平成30年8月29日(水)~9月3日(月)
場所:日本橋三越本店 本館7階ギャラリー(東京都中央区)
主催:慈彩会
後援:厚生労働省・東京都・日本民生文化協会・テレビ朝日福祉文化事業団・原田積善会
・第一生命保険株式会社・福祉新聞社
児童養護施設の小・中学生に、岩手県・遠野市の農家に滞在して生活や農作業を体験してもらうプロジェクト、第6回目の「農村ホームステイ体験の旅」を8月17日から5日間の日程で開催しました。都会の施設での集団生活とは全く異なる環境で、様々な人々や慣習、文化に触れて視野を広げ、積極性・社会性・協調性を養い、自立性を高める一助とするのが目的です。
応募者の中から書類・作文審査、面接で選ばれたのは小学生6人と中学生4人の計10人。「人の力になりたい」、「植物を育てるのが好き」、「自家栽培野菜で料理をしたい」、「将来農業学校に進学したい」などと、動機がはっきりしている子どもたちばかり。初日の17日、朝、東京駅・銀の鈴に集合。引率の各施設職員にホームで見送られ、東北新幹線で新花巻駅に向け出発しました。新幹線に乗るのが初めてという子もいて一様に緊張した様子でしたが、お弁当を広げるころには隣の子とおしゃべりが進み、新花巻駅に着いて遠野へ向かう観光バスの中ではすっかり打ち解け、笑い声でとても賑やかになりました。
元は城下町で交易の中心だった遠野は、民話や伝説が多く伝わり、山々や田畑の農村風景も美しく、「民話のふるさと」「永遠の里山」とも呼ばれる地。一行はまずカッパ伝説のある「カッパ淵」で、キュウリを餌にカッパ釣りに挑戦。昔の豪農の家がある「伝承園」を見学し、カッパやオシラサマ、座敷わらしなどの伝説も教わりました。
夕方は、いよいよホストファミリーとの対面式。「どうしよう!」「何て挨拶したらいい?」とバスの中では不安の声が聞こえていましたが、名前を呼ばれて向かい合うと一人ひとりきちんと挨拶し、重い荷物を抱え、これから5日間お世話になるファミリーと一緒に車で家に向かっていきました。
2日目、3日目は、それぞれのホストファミリーごとに、農作業を中心に計画を立ててもらい、各自さまざまな体験をさせてもらいました。遠野では暑さが一段落し、雨もなく、カラリとした快晴に恵まれました。
合鴨による自然農法を行っている農家で過ごした子は、早朝から合鴨に餌をやり、モロヘイヤを収穫。肥料にするための草刈りを何時間もやりました。シイタケのハウス栽培をしている農家でお世話になった子は、家の子どもたちと力を合わせて、ハウス中に積まれた菌床をきれいにする仕事を続けていて、様子を聞くとすかさず「楽しい!」という答えが。朝、自分で収穫したジャガイモを使って、昼食にファミリーと一緒にカレーを作った子もいました。パドロンというピーマンに似た名産品をつくる農家にいる子は、収穫後、研修生にコツを教えてもらいながら、一つ一つ形や傷みをチェックし、出荷準備を根気よくお手伝い。トマトを嫌いなはずの子が、茎から採ったトマトを「美味しい」と食べていたり、別の子は夕方その日の作業を終えて、帰省中の小さなお孫さんと縁側や庭で遊んであげていたりする光景もみられました。
3日目になると、すっかりファミリーの一員のようになっていて驚かされました。スタッフが訪問すると、家の子どもたちと一緒にスイカを収穫して、お母さんに割ってもらって畑で食べて笑顔がこぼれている子。農家のお父さんと収穫したキクイモを両手いっぱいに抱えながら、前日から教わった米の品種や草木の見分け方を一生懸命話してくれる子。前の晩に、ファミリーの夫妻に将来の希望や夢を聞いてもらったのが嬉しそうで、早くも「ずっと居たい」と言っている子。「どんな天災があっても自分で生きていけるように」と、昼のバーベキューを前に、お父さんから薪割りと火起こしを学んでいる子。それぞれ濃厚な時間を過ごしていることが伝わってきました。ホストファミリーからは「飲み込みが早い」、「小学生だということを忘れてしまう」、「とても積極的」などとお褒めの声が聞かれました。
さて、4日目は特別学習の日。2011年の東日本大震災の被災地、陸前高田市を訪ねました。一同は午前中に遠野をバスで出発。約1時間で同市内の港に到着しました。
震度6弱だった陸前高田市は、最大20メートル近い大津波に襲われ、平野部の市中心部が壊滅。現在は全域を土で10メートル近く嵩上げして再開発を進め、2キロに及ぶ12.5メートルの高さの防潮堤もほぼ完成。至るところで進む造成工事や、真新しいコンクリートの壁が逆に生々しく感じられました。子どもたちが今回学習したのは、「海から学ぶ震災」。まず港から船に乗り、湾内でアワビの稚貝を荒らすウニを除去しているボランティアのダイバーの活動や、復活した牡蠣の養殖を見学。ダイバーが採ったウニを網ごと船に揚げてもらったときは、動いているウニにみんな興味津々、大騒ぎでした。
昼食をはさみ、津波で流されたものを海から撤去する活動を何年も続けているボランティアのダイバーから、映像を見ながら講義を受けました。映像に映る濁った海中に何かが見え、「これは何でしょう?」と聞かれて見入ると、ピアノ、家具、ガードレール、船・・・。みんな驚きの表情でした。しかし次に見た去年の映像では、今度は澄んだ海中にアジやイワシの群れや、たくさんの海藻が。ダイバーたちが続けたお掃除で、海が元気になってきた様子がはっきり分かりました。子どもたちは「汚かった海がこんなに綺麗になるなんですごい」、「震災の大変さを知ることができました」ときちんと感想を伝えていました。
この後、津波で7万本もの松がなぎ倒された浜辺で1本だけ残り、復興のシンボルとなった「奇跡の一本松」を見学。完全に水没した海側のホテルの廃墟とともに、震災・津波の恐ろしさは子どもたちの心に印象づけられたようでした。
夕方、遠野に戻り、ホストファミリーの皆さんも参加してサヨナラパ-ティーを行いました。ファミリー対抗で、子どもが足じゃんけんをして、勝った方の大人が「ピコピコハンマー」で相手を叩くゲームでは、大人の方がムキになって叩くので全員大笑い。飛び入りで、ファミリーの子どもと一緒に特訓したダンスを披露する子、遠野の郷土芸能「鹿踊り」(ししおどり)の一部を、ファミリーと一緒に見事に舞った子もいて、大いに盛り上がりました。途中、一人ずつ、遠野での体験の感想とファミリーへのお礼などを綴った「感謝の手紙」を壇上で発表してもらったときは、子どももファミリーも明日のお別れを思ってしんみり。温かく、楽しい時間を共有した最後の夜となりました。
21日はいよいよ最終日。東京へ戻る子どもたちは、ホストファミリーから頂いた野菜やお土産の入った大きな荷物を持って、車で送られて遠野駅に集まってきました。列車が到着すると、お別れの挨拶をして名残惜しそうに列車に乗り込み、駅のホームから懸命に手を振るファミリーの皆さんに見送られ、遠野を後にしました。列車が出発してから、それまでじっとこらえていたのか、下を向いて泣きじゃくっている子、黙って目を真っ赤にしている子もいて、印象的でした。
遠野でお世話になったホストファミリーの皆さんには、たくさんのお気遣いをおかけしましたが、子どもたちに温かく接し、家族のように見守っていただき、感謝申し上げます。現地でのアレンジをお願いした認定NPO法人 遠野山・里・暮らしネットワークの皆さんにも深くお礼申し上げます。帰京後、各施設長や担当職員からは「遠野で何をした、これをしたとずっと話している」、「お金を貯めて自分で会いに行くと言っている」などと伺いました。今回、ホームファミリーと過ごした日々を通して心に刻まれ、学びとったことが一人ひとりの血肉になり、成長につながることを願っています。
参加した子どもの感想文 抜粋
◆中2女子
◆中2男子
◆中3女子
◆中3女子
◆小6女子
◆小6女子
◆小6男子
◆小6女子
◆小6男子
◆小6女子
ホストファミリーの感想 一部抜粋
日時:平成30年8月17日(金)~21日(火)
場所:遠野市(岩手県)
主催:テレビ朝日福祉文化事業団
共催:(福)東京都社会福祉協議会 児童部会
後援:(公財)原田積善会
協力:認定NPO法人 遠野山・里・暮らしネットワーク
「高校生の海外生活体験の旅」は、1998年に始まった児童福祉事業のイベントで、今回が18回目(シアトルでは9回目の実施)になります。約1週間の海外生活を通して異文化を体験し、ホームステイという形でホストファミリーとのコミュニケーションを通じて、英会話力を高めることが目的です。
今回は定員を超える多数の申込みがあり、書類選考・面接を実施した結果、審査を通過した男子5名、女子5名の計10名が米国に出発しました。滞在したのはワシントン州シアトル。海と湖に囲まれた美しい都市で「エメラルドシティ」とも呼ばれ、テレビや映画のロケ地としても有名です。急成長しているアマゾン、マイクロソフトなどIT産業の拠点でもあり、現在多くの高層ビルが建設され、全米で最も地価が上がっている都市だそうです。
少し緊張した面持ちの10人は成田空港を飛び立ち、16時間の時差があるシアトルに到着。参加者のほとんどが初めての海外ということで、その期待感が約9時間のフライトの疲れを上回り、これから起こるだろうことに目を輝かせていました。
夕方、お世話になるシアトル日本人長老教会で、それぞれのホームステイ先のご家族と対面しました。ホストファミリーは、毎年のようにお世話になっている方や今回が初めてという家族もいらっしゃいました。
翌朝、ホストファミリー宅での初めての一夜を過ごし教会に集合した高校生たちは、食事、風呂、習慣など日本との様々な違いに少し驚いたようでした。その日の午前中は、パイクプレイスマーケット(観光名所の市場)のフードバンクで低所得者の人たちのための食料運搬と配布のボランティア活動を体験しました。夕方からは最初の英語の授業がありました。翌日は、早朝からレーニア山への遠足。「タコマ富士」の愛称で親しまれているワシントン州のシンボルのレーニア山に向かいました。バスで3時間半ほどかかりましたが、昼前には、登山口に到着し、そこで昼食をとり、高山植物が美しく花を咲かせている自然の中を散策しました。雲一つない青空の下、清々しい空気を感じながらのトレッキングは本当に素晴らしい思い出となりました。
土日は、それぞれのホストファミリー宅で終日お世話になりました。翌日はエイミー先生の2回目の英語の授業。そのあとボーイング社の広大な飛行機工場の見学、ウエストシアトルの公園散策、シアトル・マリナーズvsヒューストン・アストロズの大リーグ野球観戦と、盛りだくさんの一日でした。
最終日、3回目の英語の授業を終え、歴史あるワシントン大学も訪れました。夕方、参加者10名は浴衣と甚平に着替え、ホストファミリーを招いて「さよならパーティー」を開催。日本から持ってきたホストファミリーへのプレゼントを披露するなどして、お世話になった感謝の気持ちを直接伝えました。また、全員で、東京音頭にのせて「椅子取りゲーム」を行うと、思った以上に大変盛り上がり、会場に笑顔が溢れました。
いよいよ帰国する当日、いろいろな思いがこみ上げ高校生たちの口数が少なく感じました。ホストファミリーとの別れ際に、思わず涙してしまう高校生もいました。「もっとシアトルにいたい!」「もう一度シアトルに来たい!」という声が多く聞かれました。最初はみんな遠慮がちで大人しく見えましたが、シアトルでの1週間を共に過ごし、最後はすっかり仲良くなって元気いっぱいの10人の高校生でした。
ホームステイという形ではじめての米国生活を経験した高校生たち。
後押ししてくれた関係者に感謝しながら、この旅で知り合った人々の思いやりや優しさを一生忘れないでほしいと思います。そして、この貴重な体験が今後の人生に大いに役立つことを祈っています。
参加高校生の感想文(抜粋)
☆Mくん 16歳
☆Sさん 16歳
☆Oさん 16歳
☆Tさん 17歳
☆Nさん 17歳
☆Sくん 17歳
☆Iさん 17歳
☆Sくん 17歳
☆Sくん 18歳
☆Yくん 17歳
日程:平成30年7月25日(水)~8月2日(木)
場所:アメリカ ワシントン州シアトル市
主催:テレビ朝日福祉文化事業団
共催:(福)東京都社会福祉協議会 児童部会
後援:(公財)原田積善会