■井出耕也の朝生ライブ中継ルポ! | ![]() |
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![]() 「国民投票で何が起きるのか」 |
蜷川 「国民投票をするにしても、設問の作り方ひとつで結果は違ってくるということがありうるわけですね。そこで半導体がご専門の志村さんに伺いたいんですが、現在の技術でも、国民の一人一人にボタンを持たせて、あらゆることについて国民の意見を聞くこともできるわけですね。でも、そういうことでいいのかどうか」 |
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志村 「高市さんのお話にあったように、お葬式に出る出ないで当落が決まるという現実もあるわけです。そういう国民を相手にして国民投票をしてどうなのか。残念ながら、国の一大事というようなことを国民投票で聞けるような、そんなレベルではないと思います」 今井 「志村さん、僕も巻町の人々について、二年前までは同じように思ってました。巻町は新潟県西蒲原郡の中心なんです。そして、西蒲選挙という悪名があったぐらいで、一票一万円とか五万円とかいう地域だった。だから、僕も、そんなところで住民投票なんて言ったって、まともなことができるわけがないと思いながら、巻町に取材に行きはじめた。でも、志村さん、人間というのは変わるものなんです。 以前はお金をもらわないと投票に行かないし、自分の意思を売り飛ばしていたような人たちが、いまや逆に3000円、4000円とカンパして、自分たちの意思を遠そうとしているわけです。だから制度さえ導入されて、時間をかけて話し合いをすれば、ものすごく美しく変わることもあるいうことなんです」 志村 「でもね、その人たちが、たとえば、日本の教育の問題などについてもカンパしますか。やはり原発とかゴミ処理場とか身近な問題だからじゃないですか」 今井 「巻町のタクシーの運転手さんも、こんなことを言うんです。 原発が来れば少しは景気がよくなるかもしれない、でも、核廃棄物はよその町に持っていかれるそうで、自分がお金を儲けるために、よその町に迷惑をかけるというのは耐えられない。こういうふうにすごくモラルが高いんです。 もうひとつあります。これは賛成派と反対派を招いて町民シンポジウムが開かれた日のことです。たまたま僕が反対派の事務所で資料をコピーさせてもらっているところに、50過ぎくらいの女性が野良着姿ではいってきた。そして、自分はうまく言えないから、今日の寄り合いでゴミのことを聞いてほしいというんです。ゴミというのは核廃棄物のことですよ。そういう風に受け売りじゃないんです」 |
堀 「国民投票がいいか悪いかという前に、もっと議論しなければならない問題がある。どのようにしたら、日本の行く末を決めるような意思決定の品質がよくなるかということですよ。目的は国民投票じゃないわけです。どうしたら日本がもっとよくなるかということなんですよね。そのための手段のひとつとして国民投票がある。 で、その時にわけて考えなくちゃならないのは、消費税とか原発とかいうような問題は国民投票には馴染まないということです。非常に複雑で、専門家が吟味しないとわからないようなことまで、国民投票で決めるということになったら、日本の行く末を悪くするだけだと思いますね。だから、何を国民投票で決めるのかということを、もっと議論したほうがIいい。国民投票がいいか悪いかではなくて、ね」 八幡 「その問題はイニシアチブを国会が持っていればいいわけですよね。また、実際にやるとなったら、おそらく選挙と一緒にやることになって、投票率があがるでしょうから、そういう意味でも国民投票をやることで議会の権威があがるんじゃないかという気がしますね」 |
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蜷川 「そんなに沢山、テーマはないだろうとは思いますが、どんなものが考えられますか」 坂東 「イエス、ノーではなく、どちらなのかと対案を選んでもらうという形ならば、ライフスタイルに関わるような質問もできると思いますよ」 八幡 「国の仕組みに関わるテーマでも、憲法改正までいかなくても、かなり根本的なものがありますから、そういうこともできるんじゃないですか。たとえば選挙制度の改正なんかもそうでしょうし、今の都道府県と市町村という仕組みをどうするかという問題もある。沖縄に特別なステイタスを与えてはどうかという話もありますね。首都移転の問題もある。こういうことになると、国会で決めましたというだけでは済まなくて、国民投票で国民も賛成ですという形のほうがいいような気がしますね」 |
堀 「国民投票意外にもやるべきことは沢山あると思いますよ。今日、実は自民党のある大物代議士に国民投票について考え方を聞こうとしたら、その人は政策秘書を置いてなくて、結局、党のほうから話を聞いたわけですよ。あんな立派な人でさえ政策秘書を持っていないのかと、あらためて驚いた。ですから、国民投票よりも、たとえば、政治家のみなさんがどうしたら政策秘書を抱えることができるかという議論をするべきですよ。そういうことをしないで、国民投票をやれば日本がよくなるというのは、どうも嘘っぽい」 柿沢 「同感ですね。官僚と政治家との関係を改善していく必要がありますよ。官僚はひとつしか案を出してこない。ひとつではなくてA案、B案、C案というような形で案を出してきて、それを国会でディベートすることが必要だと思う。また、国会のほうでも、どうやって法案を通すかというほうに目が行ってしまって、なぜ、その法案が必要なのかという国民に対する説明が弱くなりがちです」 |
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松 「議員の数が多すぎると思いますね。議員の数を減らして、その分、政策スタッフを増やして官僚に対抗できるようにしたほうがいいと思いますよ」 左近 「いや、今でも国会の仕組としてはスタッフはすごくいいんですよ。国会図書館があり、法制局があり、調査室があるわけです。ここらの優秀なスタッフを充分に使い切っていない」 八幡 「日本では大臣のスタッフがいない。総理のスタッフについては前から議論があるんですが、大臣のスタッフの充実については、ほとんど議論されていない。このあたりも、ものすごく問題だと思いますね」 高市 「アメリカでは政府と議会は対立した存在ですから、議会でも調査スタッフを充実させることになっていて、公費で18人まで雇えるんです。ところが日本では政策秘書は1人しか置けなくて、そのたった一人の政策秘書に政策の問題は何もやらせないで、選挙区まわりをさせているところも多いですね」 坂東 「でも、衆参あわせて700人の議員がいて、3人ずつ公設秘書が持てるわけですから、それだけでも2000人以上のスタッフがいるわけですし、その他にもサポート体制がある。もっともっとご活用になるべきなんじゃないでしょうか」 |
蜷川 「今日のパネリストのみなさんの中で県議会議員は玉城さんだけですが、県議会ではどうなんですか。やはり、県庁に仕切られているんですか」 玉城 「地方自治体は大統領制ですからね。知事の権限は絶対的です。そういう中で、議員が役所に対抗するのは至難の技という感じはありますね。しかし、一方で有権者の期待は大きいわけで、この期待と現実のギャップみたいなものはあります」 蜷川 「今回成立した沖縄県の県民投票条例のことを少し紹介してください」 玉城 「去年の九月に少女乱暴事件があり、自民党から共産党まで県議会の7会派も一緒になって県民大会を開いたわけです。この大会が内外に対して非常に大きなインパクトを持った。そして、少なくとも日米地位協定の見直しと基地縮小が沖縄県民のコンセンサスになった。今回の県民投票は、この二つの要求が県民合意であるということで、あらためて意思表示をしようというものです。この県民投票の成果によっては、地方でも相当なことができるということを示すことになると思います」 蜷川 「そうすると、県民の判断を求めると同時に、意思表示をしてもらうという性格もあるわけですね」 玉城 「沖縄県知事に対しては、県民投票の結果を尊重しなさいということになっているわけですが、同時に、知事は県民投票の結果を日本政府とワシントンに通知することになっています。そこに大きな意味があると思います」 |
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今井 「私も先週、沖縄に行って、県庁の県民投票の責任者の方と会ってきましたが、やはり意思表示だとはっきり言っていました。われわれ本土の人間も、安保の問題について一人ひとりが考えなくてはいけない。それで安保に賛成ということならば、沖縄に押し付けたままにしないで、僕らも応分の負担をしないといけないと思う。僕らも犠牲を払わなくてはいけないと思う」 柿沢 「今井さんのおっしゃることは正論だし、玉城さんの言うこともよくわかります。しかし、そこに非常に難しい落とし穴があるような気がするんですね。沖縄の基地を見直してもらいたい、減らしてもらいたいということが県民投票で可決されたとしても、それが沖縄県だけならいいんです。 しかし、47都道府県全部がみんな、基地はいらないということになったら、それじゃあ、日本という国の安全はどこが引き受けることになるのか。アメリカもからんでいる話ですから、さらにアメリカが引き上げるということになったらどうなりますか。力の空白ができてから、これはたいへんことになったと言っても、もう取り返しがつかない」 高野 「いや、ここまで、政治は何をしてきたのかということですよ。こういう選択がありますよということを示さないできたんですから」 |
玉城 「いい機会だから、外務大臣をされた方(柿沢さん)に聞きたい。沖縄の話になると、いつも、沖縄の気持ちはよくわかるが、じゃあ安保はどうする、日本の防衛はどうするという話になるわけです。そんなに日本の防衛が大事で、米軍のプレゼンスが必要だということなら、基地を持ってけとは言いませんが、この問題の解決法は均等に引き受けることしかないんです」 柿沢 「それはわかります。わかったうえで言っているんです。しかし、代案はそう沢山はないんです。たとえば北海道では地理的な問題もあって、沖縄の代替にはならないわけです。沖縄は日本を守るだけでなく、アジア太平洋の安全保障に関わってきているんですからね。その点を考えると代案はそう沢山はない。だから、ある程度は沖縄の人に負担していただかないといけない部分があるんです。 だが、もし、それでもノーということなら、日本全体として日米安保体制を見直すとか、そういう方向に進んでいかざるを得なくなる。今回の県民投票の結果は、場合によっては、いま思われている以上の深刻な影響があると思いますね」 |
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沖縄の玉城さん、元外務大臣の柿沢さんの意見の交換は緊張感がある。このお二人に沖縄と本土を重ねあわせて見ることができる。スタジオの雰囲気がどんどんアクチュアルになってくるのがわかる。こういう討論の面白さは、この変化だ。そして、この変化を通して、六本木の地下のスタジオが沖縄につながり、ワシントンにもつながっていることを強く感じることができるようになる。
二人のやり取りの後、またCMタイムに入る。時間は午前3時半。今夜の討論がスタートしたときは、あと4時間あると思っていたが、今は、もう1時間半しか残っていないと思うようになってきた。 CMの後、渡辺アナと宮崎さんが今日の討論に対する視聴者からの声を紹介し、スタジオの学生さんたちも発言する。(学生の発言は匿名にします) 「東京大学の…です。国民投票にはノーと言わざるをえない。現状ではイメージ選挙、パフォーマンス選挙になってしまう恐れがあると思うからです」 「○○大学の弁論部の…です。国民投票は最初は実験的にやるべきだと思う。それを通して国民が一票の重要性を学んでいくことができる」 「早稲田の…です。大学生になったら暇なもんで、よくテレビの国会中継を見るんですが、あんまり面白くない。官僚の人が作った文章を読むだけで終わってしまう感じなんです。それとマスコミの報道も旧竹下派がどうしたとか、そういうことばかりですが、もっと閣議の内容とか伝えることを考えてほしい」 「慶応の…です。志村先生が先ほど、国会議員には資格が必要だとおっしゃってましたが、僕も知能テストぐらいは受けてもらったほうがいいと思います。ここではちょっと名前は言えないんですが、ある有名な国会議員の先生なんですが、その先生はフランスの核実験を知らなかったらしいんです。そういう人がいるのでは、知能テストぐらいはやったほうがいいんじゃないかと思います」 「早稲田の…です。3点あります。まず、間接民主制の利点も考えるべきだと思う。消費税導入のとき、もし、国民投票をやっていたら、国家財政はどうなっていたでしょうか。安保条約も国民投票でやっていたら、もっと片務的な条約のままになっていたかもしれない。もうひとつは民意とは何かということです。もし、国民投票を実現しても、いまのままでは、マスコミの影響力が強くなるだけになりはしないか。最後は、国民投票の話がなぜ出てきたのか、その根底には政治の暴走と国民の無力感があると思う。それを防ぐためには、たとえば、国民の多くが選挙を望んだ場合は、選挙が実現できるような方法を考えたらどうか。選挙をするための選挙です」 「慶応の…です。僕は国民投票には反対です。間接民主制、議会制民主主義では、国会議員に対しては自由委任が原則だと思う。なぜ、民意が政治に反映されないか。その点をもっと深い議論を加えた上で、選挙制度をさらに検討するべきだと思う」 「早稲田の…です。都知事も大坂知事もタレント政治家。そういう日本の状況を考えると、国民投票をやっちゃうのはまずいんじゃないかと思うんですが」 |
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