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「どうすれば国民投票が実現するのか」



蜷川 簡単な話じゃない
「憲法の話が出てきましたが、どうも、国民投票はそれほど簡単な話ではなさそうだ。じゃあ、法的拘束力を持たせなかったらどうなるか。竹花さん、そのあたりのことを少し教えてください」
 


竹花 法的拘束力がないとしても疑問
「法的拘束力を持たない場合は、諮問型の国民投票と言われるわけですが、法的拘束力がないということになっていても、実際問題として、国民投票の結果に反するようなことを議会や政府ができるでしょうか。それは、やはりできないだろうと思います。ですから法的拘束力がないとしても、日本国憲法の基本原理に抵触するんじゃないかという気がしますねえ」


八幡 法制局長官は憲法に触れないと
「昭和53年に衆議院の予算委員会で、真田法制局長官がこういう見解を明らかにしています。国会が唯一の立法機関であるという憲法41条の原則に触れない形の制度なら、国民投票は憲法に違反しない、また、どういう事項を国民投票にかけるかということも国会自身が決めるのならば、国会が国権の最高機関であるという原則にも触れないであろう、したがって、個別的な議案について国民全体の意思を審議の参考にするために、国民投票に付するということなら、直ちに憲法違反だとは私も思っていません。こういう見解です。つまり、法的拘束力がないのならば、国民投票を行うことは憲法違反ではないということです」


  堀 必要なら憲法の改正も
「でも、国会が国民投票の結果とはまったく逆の決議をすることができるだろうか。それに、国民投票が本当に必要だというなら、憲法を改正すればいいじゃないですか。憲法でできないからということで議論が終わってしまうのはおかしいと思う」


竹花 制度に内在する欠陥もある
「堀さんの言う通りで、本当に必要なことなら、憲法を改正して実現すればいいと思います。ただし、国民投票制度の導入については、制度に内在する欠陥もありますから、私自身は安易に導入するのは危険だと思っています」
 


今井 とにかく、やってみたら
「将来的にはきちんと憲法を改正したほうがいいと思いますが、とりあえずは諮問型の、法的拘束力のない国民投票をやってみてはどうですか。スウェーデンの原発に関する国民投票も諮問型で行われています。
この国民投票は79年のスリーマイル島の原発事故の後、スウェーデンの政府も議会も国の原発政策をどうしたらいいかわからなくなってしまって、国民の意見を聞いてみようということで行われたものです。その結果、2010年までに原発を全廃しようということになったわけですが、最近では、これはどうも無理だということになって、新たな国民投票の準備をしているそうです。
沖縄の太田知事は、沖縄の県民投票は民主政治の実験であり、いろいろなことをやりながら、民主政治を強固なものにしたいと言っています。僕が国民投票をやろうといっているのも、何もそれが完璧な制度だからじゃない。今の日本の政治は閉塞しているから、もう一度、国民を政治の場に引き戻すためにやろうと言っているんですよ」


高市 コストとリスクも考えないと
「でも、国民投票を制度化してしまったら、どうなりますか。国民投票を乱発されたら、ものすごいコストがかかりますよ。それに国民が決めたことだからと責任を国民に押し付ける結果にもなりかねない。リスクは高いと思いますよ」


  堀 日本の政治家にリーダーの気概はあるのか
「リーダーというのは一時的にみんなの反感をかうことになっても、みんなのためになることはやらなくてはいけない。それがリーダーなんです。しかし、今の日本の政治家にそういう気概があるんだろうか」


左近 もっと政治が活性化してくれば…
「私は国民投票については今井さんの考えに賛成です。それにしても、なんで、こういうことが今日のテーマになるのか。選挙の投票率も低いし、政治家も小さな顔してしゃべらんとあかんという状況になっている。政治と国民の溝が大きくなりすぎている。それをどう埋めていくかということで、今日、こういうテーマが与えられているんだと思います。政治がもっと活性化して、国会の中が生き生きとしてくれば、こういう問題は出てこないと思いますよ」

高市
「国会議員のほうから国民投票してくれというのも情けない話ですけどね。代議制民主義の中でね」

高野
「竹花さんに伺いたいんですが、日本国憲法の原理主義的とも言えるような間接民主主義は、やはり戦前の軍部の政治への介入のような、そういうことは二度と起こさせないという発想があったからではないんですか」

竹花
「戦前に対する反動だけでなく、もう少し積極的な意味もあった思いますけど」
 


蜷川
「民主義自体に問題があるのではないか。志村さんはそうおっしゃっていた。そのあたりをもう少し」

志村 民主主義と心中
「民主主義が衆愚政治に陥るということは、ギリシア時代にすでに結論が出ています。当時の民主主義の民は、民衆の民ではなかったんです。エリートの民だった。しかし、現代では、生物学的に20歳になれば自動的に選挙権が与えられる。飢餓時代や戦乱の時代ならば、20歳まで生き残ったことは、それだけで実力の証しだったんですが、現代ではそういう意味はないわけです。だから、衆愚政治の衆にならざるを得ないんです。日本の平和憲法と民主主義がそれほど大事なものなら、民主主義と心中すればいい」


「そこまでは僕も志村さんの話には説得力があると思うけど、そこから、いきなり政治家の資格の話になってしまうのは、よくわからないな」


坂東 政治家に資格はナンセンス
「私も官僚の一人ですが、資格によって政治家のスクリーニングをするのはナンセンスだと思います。それよりは一人一人の国民を信じて、選挙で選ばれるほうがいいと思います。また、政治家のみなさんも、選挙で選ばれるということはたいへんなことだということで、もっと自信を持ってほしいと思いますね」


「医者や弁護士には資格があるのに、政治家には資格がいらないのはおかしいというけど、政治家は何年かに一度、必ず選挙の洗礼を受けるわけです。そう言うと、それにしても、おかしな政治家も結構いるじゃないかということになるけど、それは政治家の資格がどうこうということではなくて、そういう政治家を選んでしまった僕らのほうの問題なんですよ」
 


  高野 論争のある選挙に
「小選挙区の選挙にしたのも、論争のある選挙にしようということだったんです。全国300の選挙区で徹夜討論が行われるような、そういう選挙にしようということだった。そうなれば、土下座ばかりしているような議員はあがってこれないだろうと」


左近 選挙権は18歳から
「私は志村さんとは反対に、20歳よりももっと下げて18歳から選挙権を与えてもいいと思いますね。20歳からというのは他の国と比べるとむしろ少数派なんです。有権者の層を拡大することで、有権者の声をもっと政治に反映できるようになると思う」


  八幡 もっといろいろな層から政治家を
「被選挙権も18歳からにするというぐらいに考えてもいいと思う。もっと国民の中のいろいろな層から政治家が出てもいい。そうして普通の国民の意見をより反映できるようにしたほうが、国民からも重んじられるんじゃないでしょうか。われわれが政治家を重んじるのも、政治家は国民を代表しているからなんです」


  志村さんへの反論が続く。その中で、いつもながらの議論がやはり始まったのだった。政治がよくないのは、政治家が悪いのか、そういう政治家を選んだ国民が悪いのか、それとも選挙制度が悪いのか。その正解は、残念ながら、まだみつかっていないのである。  


高市 小選挙区になってからお葬式が増えた
「国会議員というのは、選挙という形で、ある意味での試験を通過していると思いますが、選挙の直前に全部の候補者が政策について考えを明らかにするとか、どれだけ公約を守ったかチェックするとか、あるいは政策討論をするとか、何か、そういうものをマスコミのほうでも頑張って設けてもらえれば、だいぶ変わると思いますよ。 ただ、小選挙区になって変わったのは、お葬式が増えたということ。一騎打ちですから相手が行っているのに私が行っていないと、高市は不義理だということになる。それから進学、就職の世話。そういうものがものすごい影響力を持つようになりますね。だから、公約をどれだけ達成したか、それをチェックするような仕組みを何か考えたほうがいいと思いますね」


高野 アメリカでは議会専門テレビが役割
「アメリカでは議会専門テレビのCーSPANがある。これはCATVを通して3000万世帯ぐらいが加入してます。データベースも発達しているから、議会自身がやっているデータベースもあって、そこには何でも出てくる」


「国会テレビは絶対に入れるべきです。そういうものがないのは、やはり視聴率がとれないということもあるんでしょうか」


「いや、国会の議論のレベルが低いから面白くないからなんですよ」

高野
「面白いのは総務会の中継。これができたら絶対に面白い」
 


  柿沢 憲法改正のための国民投票法もない
「憲法改正のためには国民投票が必要なんですが、その国民投票法がない。これは矛盾だと思います。まず、憲法改正のための国民投票法をつくるべきじゃないか。そして、そこで諮問型の国民投票を入れるべきかどうかについても、徹底的に議論するべきです」


今井 せめて「自衛隊」で国民投票を
「これだけは絶対に国民投票でやるべきだと思うのは、自衛隊についてです。憲法9条がありながら自衛隊があるわけで、こんな矛盾を長年ほったらかしにしているのは、どう考えてもおかしい。軍隊を持つか持たないかという問題は、どうしても主権者が決めなくちゃいけない問題じゃないですか。この問題について国民投票をすることによって、日本は軍隊を持つべきかどうか、国民一人一人が考える場をつくることにもなる」

高市
「でも、問いかけの仕方がむずかしいですね。軍隊を持つかどうかという形で聞くのと自衛隊を持つかどうかと聞くのと、その聞き方によっても結果は違ってきますからね。その問いかけの中身は誰が決めるのですか。また、ときの政権に利用される危険もありますよね」


  ここで再びコマーシャルが入る。パネリストの表情にも少し疲れが見えてきた。いまのところは、まだ、激突と言えるような場面はないが、これはこれで悪くない。じっくり相手の話を聞こうという雰囲気がある。副調整室には元気付けのドリンク剤が配られた。正面に並んだモニターテレビのひとつに夜景が映っている。金曜深夜、いや、もう土曜未明というべきだ。道路の車の数がめっきり少なくなっている。  


3時台へ..


表紙6月のテーマ

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