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Vol.9「シンクロデュエット立花武田組トップで予選通過」
7/18PM
15:47
ReportedBy宮嶋泰子 |
世界水泳は3日目にはいりました。
12時からはデュエットのフリールーティーンの予選が行われました。
日本のデュエットが果たしてシンクロ界始まって以来の金メダルを獲得できるのかを占う重要な日です。
今日の予選の得点と、おととい行われたテクニカルルーティーンの得点を合わせて上位12組が決勝に進むことができます。
テクニカルルーティーンを終了した段階で日本はロシアとともにトップタイ。
今日の得点が最終的な順位を左右する得点となることはないのですが、20日のフリールーティーン決勝での勝敗の行方を占う意味ではとても大切です。
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得点を見るロシアデュエット
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今回の世界水泳ではどうもくじ運が悪いのか、演技順が前半のことが多かったのですが、今日はラッキーです。
日本は27組中16番目。ロシアは5番目です。
まずはロシアの18歳コンビ、エルマコワとダビドワにどのくらいの点が出るか、ここに注目が集まります。
テクニカルルーティーンの時には日本には9.8までしか出なかった得点ですが、ロシアに対してはテクニカルメリットと芸術点でそれぞれ二人の審判が9.9を出していました。
9.9をめぐる攻防が展開されることになりそうです。
今日の審判構成をご紹介しておきましょう。
TM 1スイス 2エジプト 3ソーストリア 4米国 5イタリア
AI 1ブラジル 2カナダ 3日本 4ロシア 5フランス
5番目にロシアのエルマコワとダビドワが登場してきます。
1試合ごとに貫禄をつけていく恐るべき18歳。
映画グラディエーターの曲にのって、「生存への闘争」をテーマに演じます。
小刻みな脚と手の動きがぴったりとあっている二人。
じっとそれを見つめるダンチェンココーチ。
さあ、ここからはソウル五輪銅メダリストの田中ウルヴェ京さんに解説していただきましょう。
「最初に微妙な角度をあわせました。これは難しいんですよ。
この二人はこんな角度まであわせることができるんだということを演技の始めのパートで審判に印象付けてしまうんですね」
「二人の距離が本当に近い。横に並ぶと水をかく手がぶつかってしまうので、うまくずらして、斜めに並んで二人の距離を詰めていますね。
こうすれば手もぶつかりませんし、とても近くにいる印象を与えますし、大変うまい動きです。」
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ロシアデュエットの脚
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「ロシアのうまさのひとつに難易度の高さがあります。
脚技などで、審判がもうすぐ終わりかなと思うポイントがあるのですが、この二人はそれプラス3振りぐらいをやるんですね。
これは凄い。こうしたプラス3振りが何度もあるんですよ。」
「あと、技の多様性ですね。
普通、脚技をするときは手で水をかいて体を支えるわけですけれど、彼らの場合は、手技をしながら脚技をしたり、手技の直後に脚が出てきたりして、
どうやって体を支えているのかわからないような技がたくさん入っているんですね。」
「特筆すべきは、脚の締めです。
脚の締め方が尋常ではない。これはロシアにしかできないことでしょう。
たとえ倒立しているつま先をたたいたとしても、彼女たちは腿からひざ、足首までしっかり力が入っているので、びくともしないでしょう。
力が隅々にまで入っている素晴らしい締めがロシアの二人の持ち味ですね。」
「ただ、今日の演技で惜しかったのは、一箇所、2ラップめで手のひらの動きをまちがえたことですね。
おそらく客席側の審判たちからはその様子が良く見えたはずです。
9・9を出すか出さないかというポイントは、結局そうした細かな動きまできちんとあったかどうかという点に絞られてくるんです。」
さすがプロの眼は違います。田中さんに分析していただくとロシアの凄さがますますわかる気がしてきます。
さあ、今日の演技の気なる得点です。
TM |
9.8 |
9.9 |
9.9 |
9.8 |
9.8 |
AI |
10 |
9.9 |
9.9 |
10 |
9.9 |
芸術点で10点を出したのはブラジルとロシアの審判です。
観客席側にいたアメリカとイタリアの審判は技術点で9.8しか出していません。やはり手の振りの間違いを見抜いたのでしょう。
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小劇場の始まり始まり
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演技後ダンチェンココーチは
「テクニカルメリットの点が低かったわ。もっと出てもいいと思うけれど」
と表情を硬くしていました。
また、ダビドワにテクニカルルーティーンを終えた時点で日本に並んでいることについての感想を求めると,、
「日本のことは気にしないわ。自分たちの演技をするだけ。」
と、こちらも昨日とは打って変わって無愛想な表情。
二人は夕方の18時からチーム演技も行わなければならないので
「バスの時間があるのでこれで失礼!」
とそそくさと帰ってしまいました。
そして16番目に日本の立花美哉選手と武田美保選手が登場。
客席からは手拍子が起きました。
この世界選手権でロシアを抜いて世界一の座につくために、去年の11月から作り始めた作品「小劇場」。あのパントマイムの演技が初めてこのマリンメッセで披露されたのです。
脚の技や手の動作だけでなく、表情までも研究をしてきた今回の作品。
あっという間の4分間。こんなに短く感じたデュエットは初めてでした。
「今回演技を改めてみて、これは完全に井村コーチの構成勝ちですね。
私もコーチをしているのですが、自分には絶対できないなと思いました。
あそこまで挑戦することの凄さ。」
「本番ではさまざまな緊張でどうしても合わなくなってくるんです。
同調性が欠けることがあるんですが、そういうリスクを承知で、難しい技を最後まで抜かなかったことが高得点につながったのでしょう。」
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パントマイムの演技
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「本当に難しい、あれを合わせるのは不可能といえる角度、止まることのない動きにチャレンジした勇気。
ロシアは合わせるカウントでとまるところがあるんですが、日本のパントマイムにはそれがない。
カウントが詰まりがちな武田選手、流れがちな立花選手、特徴の違う二人が万が一、最初の一秒で間違えば8秒あとまで遅れてしまう難しい動きです。
それにあえてチャレンジした。素晴らしいの一言です。」
「シンクロのデュエットでは同調性に20%、難易度に40% 完遂度に40%の割で得点が割り振られるのですが、井村コーチの作品では難易度が異常に高い。これにたいする評価でしょう。」
なるほど・・・・・そんな凄いことをやっていたんだ!
立花選手、武田選手良くここまでやった!そう叫ばずにはいられませんでした。
そして、場内が注目する得点は・・・・
TM |
9.9 |
9.8 |
9.9 |
9.7 |
9.9 |
AI |
10 |
10 |
10 |
9.8 |
10 |
あっ10点が・・・・なんだか私の眼から・・・・・汗?が・・・
ロシアを上回りました!
井村コーチの顔ももうニコニコ!
芸術点で10点が4人から出るのはこの大会で初めてです。
武田選手は
「テクニカルルーティーンを終わったところでタイだったので、ここでがんばらなければと思って今日は臨みました。前半がんばりすぎて、途中で乳酸がたまりすぎて、しんどかったです。でもそんな状態でも演技ができるようにトレーニングしてきたので、大丈夫でした。10点が4人から出たのは本当にうれしいけれど、技術点で9.7が出ているので、その点を決勝の時には盛り返せるようにがんばりたいです。」
そして、立花選手は
「まだ予選ですからわかりません。でもこの調子で決勝も行きたいです。」
といつものようにクールな答え。
井村コーチは「今日は本当に二人ともよく泳いでくれた。」と笑みが絶えません。
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試合後、記者会見に応じる井村コーチ
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ここまでくるまでにはさまざまな雑音もあったようです。井村コーチはこう話してくれました。
「何でこんな曲で、こんな幼稚なルーティーンをするんだと言われたこともあります。でも新しいことにチャレンジしなければ、いつまでも2位のままで、それ以上はいけないでしょう。
実際つらかったが、その信念で突っ走ってきました。私ははじめから今回は負ける気がしていなかった。芸術点の4つの10点はこういう新しいシンクロもあることが評価されたんだと思います。」
さらにライバルロシアに対してこんなコメントも・・
「ロシアのコーチは演出が上手だなと思います。近づき、合わせまくるそのうまさは私も勉強させてもらいました。」
さあ、日本の初めての金メダルが決まるのか、決勝は20日です。
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