<事件を伝える者として、いつもこだわっていたいのは、やっぱり “なぜ” “どうして”ですね>


 
呼び鈴鳴らしても出てこないで!

岡田洋子

事件を伝える者として、いつもこだわっていたいのは、やっぱり “なぜ” “どうして”ですね。
特にその人間の「生い立ち」にものすごく興味を持ちますね。
事件にいたるその人の行動というのは、生い立ち、環境抜きにしては語れない。
以前、『風俗嬢』の取材の時、それまではどちらかというといい印象を持っていなかったし、理解できなかった。でも実際会ってみると本当に普通のかわいい女の子で、「何でこんな子が」って思った。
「何故、風俗に?」っという問いには、みんな「お金の為」と答えるけど、その裏にはものすごく孤独感を抱えている子が多かった。やっぱり中学校時代からイジメにあっていて、お友達が学校にはいなくて・・・。外で知り合った唯一仲間と呼べる女の子に誘われて入っていく。
安易にも見えるけど、その裏側にはもう2度と仲間はずれになりたくないっていう必死な気持ちが隠されていて・・。なんだか切なくて哀しい気持ちになりました。

寺崎貴司

ン〜、なるほどね〜。
僕の場合、こだわりといえば、教科書的かもしれないけれどやはり、『人権に対する最大限の配慮』ですね。
先ほど話したようなかっこいい話は微々たるもので、ほとんどは人が死んだり傷ついたりした事を取材するわけですから、誰もが大歓迎なわけではないんですよね。
被害者の遺族、加害者の家族への取材は通常「お引き取りください」と言われてしまいます。でも行くことによって真実に近づけるのではないか、ということで取材するんですが、呼び鈴を鳴らす瞬間は「出てこないで欲しい」というのが正直な心境なんです。プロじゃないかもしれませんけど・・・。
けれども訪ねることによって、「今だから聞いて欲しい」と語ってくれる場合もあるわけですからね。

岡田洋子

私の場合は政治がらみの取材が多かったので、そう行った経験はあまりないんです。
でも相手は公人ですから、こっちが何を聞こうが、どんなに跳ね返されようがという気持ちはありました。彼らには答える義務があるわけですからね。私達の税金を使っているわけですし・・。

寺崎貴司

でもバッジをつけた人に向かって行くのは怖くない?

岡田洋子

ただ、その1回目にものすごく勇気が要ります。
相手は皆年配の方ですし、生半可な世界を生きている人ではないので、人を寄せ付けない所謂“オーラ”を持っていて、大物になればなるほどスゴイですからね。
SP(security police)も付いていますし、「あんた、なに、どこの社だ?」みたいな感じで。
でも、ここでひるんでは駄目で、相手が足を止めてくれれば「しめた!」というか、聞く耳持っているわけですから。これはほんの一瞬のチャンスで、この機会を逃すともうないですから。「邪魔だ、どけっ!」とばかりに跳ね飛ばされる事も多々ありましたけど・・・・。(笑)


 
仕事上の苦労や難しさなど厳しいトークが続く中
インタビューの雰囲気は終始なごやか。

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