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12月18日 カレンダーから寄り道 〜3行ずつのつれづれ日記・奈良(下)編〜

奈良の2日目は朝から雨
雨に濡れた古都を歩くのに
ズボンの裾を折り曲げた さあ出発だ

猿沢の池の周辺で目的地を見失う
迷い込んだ路地は風情があって、迷ってよかったな
知らない街、道、人、花


奈良町


猿沢の池

キンモクセイの季節は必ず冷たい雨が降る
花が落ちやしないかいつも心配している気がする
空気を思い切り吸い込んで階段を駆け上がれば興福寺


興福寺

阿修羅像とにらめっこ
意外にも小柄な像に戸惑いながら
雨の路地にまた迷い込んで深呼吸



路地


しか

前に来たのは15歳だったはずだから
これは10年ぶりの再会になるのだ
少しはオトナになったかしらん



東大寺

せっかくここまで来たのだから、と
大仏さんにもご挨拶
変わらずドッシリ構えておられる

しかし…毎日どれだけのシャッターを切られているんだろう
少し気の毒になった
お辞儀をしてから正倉院へ向かった



歩く

二月堂と三月堂で奈良を一望して
その跡は手向山八幡宮で百人一首を思い出して
もみじのにしきかみのまにまに


二月堂

奈良は百人一首で詠まれている地名が多い
ワクワクする三笠山
茶屋に立ち寄って時空を彷徨う旅人気分


茶屋

春日大社の神苑へ入ると
万葉の時代からの植物に紛れて時計の音がピッタリと止まってしまった
ムラサキ、カタクリ、ナンバンギセル

声を出しても緑に吸い込まれてしまう
ひっそり湿った苑内
恐怖すら感じるほどの静寂に耐えて進む

シャッターを押す音さえ憚られてひたすら自然の中に佇んだ
苑を抜けて砂利道へ出る
石の音にビクッとしてしまう

「女性のひとり歩きはおすすめしません」
ガイドブックがそういった“ささやきの小径”
強気に「いってみようじゃありませんか」


こみち

入った途端、後悔するほど眩しい静寂
包まれたというより襲われたという方が近い感情
天から降り注ぐ太陽の光線が幾重にも重なっている


やじま

極楽浄土へ行く道があるならこんな感じだろう
それくらい神々しい道だ
この道はどこまで続くんだろう

落ち葉の重なる音が大きく感じる
足音がビックリするほど響く
ここにあるのは空気の流れる音だけ

静寂や木々のもたらす不思議な力に
さっきから怯えている
わたしってすごくちっぽけ

大自然の雄大な広がりとも違う
庭園の優美さとも違う
この静寂は何だろう


おしまい

こんなにも心が震えるのは何故なのだろう
なんて心細いんだろう ここじゃ一人ぽっちだ
誰もいなければ 何にもない

でもどうしてこんなにキリリとなっていくんだろう
足取りもまなざしも
一生懸命になって、自立しようとしている気がする

柔らかさと硬さ
のんびりとしっかり
違うものをふたつ一度につかむような散歩道

小経を抜けたわたしは
確実に何かを変えていたと思う
羽衣を羽織ったくらい微かな変化だけれど

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

たくさんの気持ちと景色を詰め込んで
帰りの新幹線に乗った
明日からまたいい顔で仕事が出来そう。

ひとり旅日記、おしまい・おしまい
 
 
    
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