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身長
165cm
出身地
神奈川県川崎市
出身校
神奈川県立多摩高校→
中央大学文学部
入社年月日
2005年4月1日
星座
獅子座

4/30   ついに軍艦島、上陸!

ついに軍艦島、上陸!

本来、大勢の人でにぎわっているはずの光景に
まったく人がいない
そんな、がらんどうな光景を見るのが好き、というか
怖いもの見たさで気になってしまいます。

物寂しさや、哀しさだけではない
そこから往時の勢いを感じ取るとき
自分の中に、何かこう…強い感情が生まれます。

それらを、自分の持っている言葉の中で
どれを使えば表現できるか
未だにわからないことが多いのですが…。
何とも言えない、強い感情なのです。

先月の終わり、そんなわたしが
ずっとこの目で見てみたかった光景を
目の当たりにする機会がありました。

軍艦島に上陸、です。

長崎県の端島。通称・軍艦島。
遠くから見ると軍艦に見えることから、
こう呼ばれています。

かつては炭鉱として栄えたこの小さな島は、
1974年の閉山とともに
すべての島民がこの島を離れました。

最盛期は東京の9倍の人口密度だったといいますから
小さな島のにぎわいはすごいものだったのでしょう。

閉山からずっと無人島だった軍艦島。
人が住まなくなった建物は荒れ果てて
廃墟と化していくわけですが
2009年に観光客も一部であれば
上陸、見学ができるようになりました。

このニュースを見て以来
ずっと気になっていた軍艦島。

季節や天候によって、上陸が難しい日も多く
いつも行けるわけではないと言われていたこともあり
なかなかタイミングがなかったのですが
ようやくその日がやってきたのです。

この日は驚くほどの凪で、穏やかな海。
前の日は、風が強くて無理だったそうなんです。
年間で100日程度しか上陸出来る天候ではないといいますから、
これはラッキーなこと、夢が叶いました。

長崎市内から船で30~40分ほど。
突如、海上に軍艦そっくりの島が見えてきました。

少し不気味に思えるくらい
静かで重厚な存在感のたたずまい。
その姿はまさに軍艦です。

今にも戦いに出ていきそうな出で立ちで
私たちを待ち構えています。

グルっと一周。
荒れ果てた建物をひとつずつ眺めていきます。

  

そのあといよいよ上陸。

割れたガラス窓の向こうにはまぶしいくらいの青空。
その間には、かつては人の暮らしがあったのです。
今は何にもありません。
誰の笑い声も聞こえません。

  

はげたペンキ
傷んだドア
煉瓦はボロボロとはがれるように朽ちていました。
いろんなところに、
かつての人の暮らしが見え隠れします。

肉眼ではそこまで確認できませんでしたが
アパートの中には
まだ当時の小学生が使っていた時間割が残っていたり
テレビがゴロンと畳の部屋に転がっていたりするそうです。

コンクリートの建物は崩れ落ちていて
そこには雑草が生い茂っていました。

歩いて入れる場所は、軍艦島の中でも
ほんの一部なのですが
近くで見るその島は、圧巻でした。
ぞくぞくしました。

ひたすら、何かに追われるようにシャッターを切ります。
今回の長崎の旅はこの上陸のために
一眼レフを持参していったのです。

シャッターの音。
壁の向こうから聞こえてくる波の音。

それとはまったく違う、
かつての暮らしの音が聞こえてきそうなほど
そのままが残っていました。

軍艦島に残されている暮らしの跡は
哀しいものではありません。
戦争によって荒れ野原になったというわけではないのです。

ただ、毎日の暮らしや多くの人の人生が
確かにそこにあった光景が
これほどまでに風化し、廃墟になっているさまを見て
わたしなりに、いろんなことを感じるのですが
適切な言葉がわたしの中には、
まだ育っていないようにも思えました。

一生懸命ひねり出そうと思っても
なんだか足りないような
安っぽいような
そんな自分のふがいなさを目の当たりにした
瞬間でもありました。

よく推敲して書きたいなぁ、なんて
思っているうちに、月日はどんどん経ってしまい
感動が薄らいでいくのも怖くて…
今書いているわけなのですが(笑)
やはりどの言葉でも表現しきれていないように思います。

仕事をしている中でも、
こういうことって多々あります。
圧倒的な光景に出くわすときなどに
まだまだ修行が足りないことを思い知らされます。

言葉との闘い、言葉との出会い、言葉との信頼。
アナウンサー9年目。
今年度も、多くの収穫がありますように…。

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