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2月22日 最強のヒロイン“たま子”を紹介します!

映画「転がれ!たま子」をご紹介いたします。


“好きなもの断ち”なんてするものじゃない。
人生はやっぱり“好きこそものの上手なれ“だ。
そんなことを考えさせる映画である。

それにしても“好き”という気持ちは、なんて巨大な原動力なんだろう?

人呼んで“鉄かぶとのたま子”(山田麻衣子)は用心深い性格。
たま子の父・平吉(竹中直人)のお手製鉄かぶと無しに外を出歩くことは出来ない。
たま子にとって世界は複雑で油断ならないところだった。

ところで、そんな彼女は甘食が大好き!
それも日進月歩堂の甘食と決まっている。日進月歩堂で買う甘食さえあればたま子はシアワセだった。

※甘食とは菓子パンの一種で薄く甘みをつけた円錐形のパン。大正〜昭和のはじめにヒットしたが、現在でも根強い人気があり老舗のパン屋などではよく見かける。パン屋によって味も歯ざわりも様々。

平和な毎日を過ごしていたある日、風変わりなたま子を、風変わりな出来事が襲う。

●甘食を作っていた日進月歩堂が休業になる。
●働き者の母親(岸本加世子)が突然自分の幼馴馴染み・トラキチ(与座嘉秋)と再婚。
●父や弟(松澤傑)は夢を叶えるために必死の奔走中。
●猫のたまは家出をする。

今までたま子を守っていてくれたものが一度にすべて消えた。
さぁ、大変!彼女は一歩を踏み出さなければならなくなった。甘食が食べられないたま子は次第に追い込まれていく。

大好きな甘食を手に入れるため。

彼女は自分の殻を破り(鉄かぶとを脱ぎ捨てるというべきだろう)、となりの街へと飛び出す。
この行動力がすごい。欲とは恐ろしい代物だ。食欲、いや甘食欲はたま子を変え、飛躍させるのだった!
これほどまでにして何かを欲したことがわたしにはない。
他のお店の甘食ではたま子のおなかは治まらない。こころの隙間は埋まらない。
全身全霊をかけて日進月歩堂の味を探し始める。自分が泥だらけになっても、どれだけ人に迷惑をかけて嫌がられても、たま子は甘食が食べたい。そのためならどんな手段も選ばない。ただひたすらに甘食を求める。この激しい渇望っぷりが、羨ましいとさえ思ってしまう。それほど真っ直ぐで切実なたま子なのである。

彼女の願いの強さと必死さは今まで見てきたどんなヒロインよりもすごい。
甘食乙女は史上最強のヒロインである。

この物語を見に行って、もしあなたの側にいる人が「っていうか実際問題、甘食だけで生きていけるわけな…」などと言い出したら、迷わず口をふさいでおきたい。
現実などという言葉を持ち出したらこの物語は崩壊してしまう。

どんな人の中にでもある小さな欲望、口に出して言うほどでもなく、もしかしたら自分自身でも気がついていないかもしれないほど些細な欲望がこれほどまでに見事に抽出されているところがこの物語のすごさである。

“スイカやメロンを一つまるごとひとりで食べてみたい”
“ボウルいっぱいにプリンを作って独り占めしてみたい”
誰だって一度は思ったことがあるだろう。

たま子の願いはこうした願いよりも些細だが、切実なのである。
それゆえ、見てしまう。彼女が「たかが」甘食のためにこれほどまでに熱くなってしまう姿を。そのうち段々と、見ているうちに甘食が食べてみたくなってくる。館内に懐かしい甘い香りさえ漂ってくる気がしてくる。もう「たかが」なんて言えなくなってくる。私も甘食が食べたいと言い出したくなる。隣で見ている人から生唾を飲む音が聞こえてくる。そのうち館内の人みんなが甘食が食べたくなってしまう。


この物語の面白さは、たま子を囲む人々のキャラクターの濃さや衣装のポップなかわいらしさも挙げられるのだが、印象的なことを挙げろといわれると甘食への強い思いしか挙げたくない。
甘食のために、たま子がいかにして立ち上がり、走り出すのか。たま子は甘食がもう一度食べられるのか。
見ているわたしたちも全身全霊でその行方を見届けたい。

「転がれ!たま子」の後味は手のひらの上で割る甘食のようにほんわり、甘くわたしたちを包む。
映画からの帰り道、あなたがパン屋を覗いて甘食を探していたら、たま子の思うツボだが、それも悪くないかもしれない。
たま子の真っ直ぐでひたむきな甘食への思いは、わたしたちが忘れてしまった懐かしの味というものを超えて、わたしたちが忘れてしまっている一生懸命になることへの憧れでもあるのだろう。
作品データ
「転がれ!たま子」
監督 新藤風
脚本 しんどうぎんこ
出演 山田麻衣子、岸本加世子、竹中直人、広田レオナ、ミッキーカーチス、
        津川雅彦、永澤俊矢、草村玲子ほか
配給 シネカノン
支援 文化庁
「転がれ!たま子」公式ページ
http://www.tamako-movie.com/top.html


甘食
「これが昔なつかしの甘食。おひとついかが?」
近況
こちらも食べ物の話ですが…最近おさかなをきれいに食べる練習中です。
どうしても食べたいものがない限り、社食のお昼はさかなを食べることにしています。
食べ方に自信がないので、人前で食べることを避けていたのですが…もうわたしも(ひよこですけど)社会人ですから、チャレンジです!!でも…きれいに食べることって、ホントに難しいんですよね。おさかなをきれいに食べられる人って素敵ですものね。一歩ずつ、レディに近づくために、わたし頑張りますわ!

 

 
 
    
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