前の記事を読む 次の記事を読む  

トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー
 
 
9月28日 気ままに、京都通信。(五山の送り火編)

9月も下旬となった今日の最高気温は24度。曇り時々雨。
一ヶ月前までは、夏日ではなくなるなんて信じられなかったのに。
あぁ、灼熱の太陽!
あぁ、強烈な湿気!
疎んじていたものが少しの懐かしささえ感じられてしまう今日この頃。
ひんやりとした空気に慣れないのは、体だけではなく頭の方も。
いやはや、この文章も。
秋風に後ろめたい気持ちになりながら、京都通信・続きです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

8月16日、夕暮れ時。
私たち「都のかほり」ロケ一行は、嵐山にやってきました。
何と言っても、今回のメインイベント「五山の送り火」をカメラに収めるため。

五山の送り火は、
大文字、妙・法、船形、左大文字、鳥居形 の5つ。
(五山の送り火・初心者としては、6つ?とも思うのですが)
夏の夜空に燃え盛り、そして消えていく…
お盆に帰ってこられた精霊さんが冥府に戻られるのを送る宗教行事です。

「大文字」を見るなら、鴨川の土手からでも、それは美しく見えるのですが、
嵐山にわざわざ来たわけとは・・・
「屋形船に乗りながら、大文字を鑑賞する」という、何とも雅やかな撮影のため。

日が暮れる前、船に乗り込んだ私。


ゆらゆらと揺れながら、川を走る風の涼やかなこと。
盆地特有の暑さも、川の上ではどこへやら。
避暑とはこのことかぁ・・・なんて都人の優雅さに思いを馳せる。
その傍ら、カメラマンさんは真剣そのもの。
船頭さんの様子や、暮れゆく町並みを限られた時間で撮影しなければならない。
その額には汗が光っていました。


自分の出演部分を早々に撮り終えてしまった私は、
かなり観光気分アップ↑↑なのでありました。

時間の流れとともに、青から赤へと染まる空。
そして明かりはおちていく。


暗闇に、屋形船の提灯が赤々と映えている。
渡月橋の凄まじい人混みも、
熱気だけを残して、私たちの目からは見えなくなった。

いよいよ8時、点火の時間。
遠くに、点のようについた明かりが広がり、浮かび上がる「大」の字。
み、見えた!!


「大」の字、分かりますか?

こんなにも神々しいものかと、息を呑む。


突如、船の中から聞こえてくる、パチパチっバチバチっという燃えさかる音。
一瞬、距離を超え、時間がねじれたような錯覚に陥る・・・

船の中に置いたワンセグケータイから、
某局の「五山の送り火」中継が流れていました。

近くで燃えているような、遠くに祈り見るような、不思議な感覚。
30分後、火は静かに消えていきました。

自然と、手を合わせたくなるような厳粛な気持ちになりました。

京都の母は、毎年鴨川の土手で大文字に手を合わせています。
もう何十年も続けている習慣。
「大文字さんを見ないと夏が終わらない」と言うのは、母ばかりではないはず。

そもそもの起源が分からないという五山の送り火。しかし、
京都の人々の、心の中心に明かりを灯し続けてきたのは間違いのないこと。
「大文字さん」と親しみを込めて呼ばれるわけが、
初めての大文字で、少し分かったような気がしました。

ちなみに、今回ロケした分の放送ですが、
おそらく、来年のお盆の頃に流れる予定です。
気長に待っていてください!っていうか、
忘れた頃に、私出演します(笑)

(撮影、編集、ナレーションなどを終えるとすでに秋。
タイムリーな時期に放送するためには、
どうしても次の年、ということになるのですが、
撮ったらすぐ放送っのTVの世界にあって、
この長いスパンでの仕事は本当に珍しいと思います。
長寿番組ならではですね。)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

季節が変わり行くこの時期。
強い日差しの中を駆け抜ける爽やかな風に、
鈴虫の音が聞こえる夜に、
一葉、また一葉と色づき始めた木々に、
秋を感じ、夏の終わりを感じます。

体調を崩しやすい季節の変わり目、皆さんもご自愛くださいね。

栗おこわが食べたい、野村真季でした。
   
 
    
前の記事を読む

次の記事を読む

 

トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー