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11月6日 「オリオヲン座からの招待状」を観てきました

「オリヲン座からの招待状」
(テレビ朝日映画メールマガジンからの転載です)

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先日、「食彩の王国」のPRナレーションをとったときのこと。
秋の味覚の一つ「なめこ」の話題だったが、書かれていた文字にびっくり。
「白神山地でなめこ採り」
なめこを採るのに、白神山地まで行ったんですか!?と感心していたところ、
スタッフの方がこういいました。
「山形に行ったら、今年の夏は暑かったから2週間は遅れていると農家の方に言われ、そのまま北上して秋田に入り、秋田でもまだと言われ、とうとう青森まで・・・」
で、白神山地。

それにしても、2週間遅れのなめこ。
他にも、瀬戸内海で獲れる魚が北の日本海で獲れたり。
“旬”が変り、産地が変わることも、これから多々起こるのでしょう。
温暖化と言われて久しく、「日本、亜熱帯化?」と言われることもある。
古来より変わるはずのないものまでが、変わっていくこの世界。

変わらないものって、なんだろう?

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一通の手紙から、映画は始まる。
それは、オリヲン座からやってきた招待状。
57年の歴史に幕を閉じるという映画館。
招待状を受け取った人々に、かつての昭和の時代が蘇ってくる。

昭和30年代・・・映画が人々の憧れだった頃。
出来たばかりのオリヲン座には、毎回満員になるほどの人の熱気に溢れていた。
ぶっきらぼうで映画一筋の館主(宇崎竜童)と、
甲斐甲斐しく夫を支え、映画館を切り盛りする美しい妻トヨ(宮沢りえ)。
ある日のこと、一文無しの青年(加瀬亮)が現れ、
オリヲン座で働かせてほしいと頼み込む。
いぶかしむトヨとは対照的に、あいつは大丈夫だと言った館主の言葉通り、
青年は寝る間を惜しんで働き映画にのめり込んでいった。
活況を呈すオリヲン座の目の回るような忙しさの中、
3人の穏やかな生活が始まった。
ところが、館主が突然帰らぬ人となってしまう。
「オリヲン座はほかしちゃならない(閉めてはいけない)」という
館主の遺した言葉に従いオリヲン座を再開するも、
あらぬ噂で人の足が遠ざかり、さらにはテレビの興隆で衰退していく映画界。
苦境の中、二人は映画への愛、オリヲン座への愛のため、映画をかけ続けた。

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50数年映画をかけ続けた、二人の話。
どんな酷いことを言われようと、どんなにお金がなくなろうとも、映画をかけ続けた。
そして、父と慕った館主への忠義を忘れることなく、その遺志を守り続けた。
変わらぬことを選んだその選択は、決して楽なものではなかったはず。
それなのに美しく見えるのは、二人の居住まいの正しさがあるからなのか。

時代が大きく変化して行く中で、変わらずに続けることの大変さは言うまでもなく、
映画でも殊更にそれを声にはしない。
しかし、くたびれたソファや手すり、古びた外観・・・
斜陽というより、暗がりの中明かりを持たずに歩いてきたのか。
ラストシーン、秘めていた想いを初めて打ち明ける二人の姿が、
胸にこみ上げてくる。

古き良き日本人の姿、なんて言ってしまえばありきたり。
しかし、黙して語らず意思を貫く姿勢は、今や奇跡とさえ言えるかもしれない。

言葉にせず、
時代の空気を感じ、二人の想いを推し量ってほしい。
私たちが手にしていない何かを感じずにはいられないから。
2時間なんて、50数年の二人の歩みの前に、ちっとも長いなんて思わなかった。

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さて、近況です。(唐突ですが・・・)
何を食べても美味しい季節。りんごも出回ってますね。毎朝食べてます。
私が小さい頃から、
いつもこの時期になると、母は紅玉でジャムを作ってくれていました。
紅玉は、りんご本来の味と言われるほど、りんごらしい酸っぱさが特徴。
「紅玉で作るから美味しいのよ」と言う母の顔が浮かびます。
実家を離れて早や4年。
時々無性に、あのりんごジャムが食べたくなるのです。
先日、母からレシピを聞いて作ってみましたが、どうもあの味にはなりません。
砂糖が違うのか、鍋が違うのか・・・うーーん。
これがきっと、「母の味」ってものかもしれませんね。


紅玉で作ったりんごジャム


りんご、満喫!
   
 
    
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